クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

むしマガ

共同研究者に「ギブ・ミー・マネー」と言う時代

先週はフランス人の知人一家がこちらに遊びにきました。この知人は、フランスで博士号を取得し、今はアメリカのワシントン大学でテニュアトラック助教をしている知人のアンソニー。そしてアンソニーの妻(台湾人)、子ども、妻のお母さん、そしてアンソニー…

【書評】『捏造の科学者 STAP細胞事件』科学界に横たわる問題を提起し続ける装置

捏造の科学者 STAP細胞事件:須田桃子 本書は毎日新聞記者の須田桃子氏によるSTAP細胞騒動の記録である。2015年の大宅壮一ノンフィクション賞にも選ばれている。 物語は、須田氏が笹井芳樹氏からのメールを受け取るところから始まる。須田桃子氏によるSTAP細…

『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ

私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいい: むしブロ+もう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+ 納豆菌は学…

【書評】『「ニセ医学」に騙されないために』騙されない人も一読の価値あり

今週はNATROM著『ニセ医学に騙されないために』を読みました。本書の著者はネット上で言わずと知れた内科医ブロガー集団のNATROM。 「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る! 科学的根拠が乏しいにもかかわらず、治療法…

地球外生命体のアジトに潜入

納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいいもう…

学校と学び

むしマガVol.281でオンライン・サイバー高校のことについて書きました。自分が中学生や高校生の頃にこんなところがあったらよかった。なぜそう思ったかというと、自分の通っていた中学や高校が好きでなかったからなんですね。 私が通っていたのは、T学園とい…

テクノロジー・リテラシーを意識しよう

私たちは、テクノロジーの発展により大きな恩恵を受けてきた。電気、自動車、医療、インターネット。これらのテクノロジーが存在しない世界など、とても想像できないだろう。私たちは自分の生活が少しでも便利なものを自然と選択し、その継続的な使用を無意…

天才少年少女物語(第二話)

第一話の続き (1ヶ月後) 湯川先生「はーい、みんな着席してー。今日で1学期も最後。明日から夏休みだけど、 ちゃんと計画を立てて夏休みの宿題は早めに終わらせるようにね」 生徒 「はぁーい」 湯川先生「それから、もうひとつお知らせがあります。この段…

天才少年少女物語(第一話)

(帝国市立第一小学校の3年1組。ある日の帰りの会) チャイム「キーン コーン カーン コーン・・・」 湯川先生「はーい、みんな席について!今日は1学期前半の「あの賞」の受賞者が 決定したから、今から発表しますよー!」 生徒 「えー?!もしかしてー?」…

クラウド査読により透明になるアカデミア

STAP細胞研究は残念な方向に進んでしまいました。この間もメルマガで色々と書いてきましたが、もうこの研究結果を擁護する研究者はほぼ皆無でしょう。私もだいぶ前に理研への寄附手続きの取り下げを申請し、受理されました。 小保方さんの博士論文の剽窃問題…

人気ブロガー藤沢数希さんとの対談内容が公開されました

昨年むしマガでお届けした人気ブロガー藤沢数希さんとの異色対談の内容が、藤沢さんのブログ「金融日記」に公開されました。 生物学者の堀川大樹さんと恋愛工学対談: 金融日記 動物の生殖行動から海外文化まで話題にしています。硬い内容ではないので、まっ…

乾いても死なない線虫のサポーターたち

・線虫シーエレガンス クマムシに比べると、肢もなくニョロニョロしていてあまり可愛くない線虫シーエレガンス(主観)。 シーエレガンス from Wikimedia だが、このシーエレガンスは生物学研究において非常に大きな役割をもっている。大腸菌を餌として爆発…

ある研究室でのラブストーリー(その4・最終話)

初雪の日に、アパートに一通の封筒が届いた。差出人はT大学。あのパーマネント助教公募の、書類一次審査の結果通知が来たのだ。 京太がその薄い封筒を開くと、中にはA4サイズの紙が一枚だけ入っていた。紙面には文字が数行だけ印刷されており、余白部分がや…

世界に蔓延する偽装魚と食の未来

昨今、日本における食品の偽装問題が取り沙汰されているが、アメリカやヨーロッパでも事情は同様である。記憶に新しいのは牛肉のミンチに馬の肉が使用されていた問題だ。いずれも、より安い品物を求める消費者により、業者間のコスト削減競争が激化している…

ある研究室でのラブストーリー(その3)

大鷲京太と竹園紗季が交際を始めてから、三年が経過しようとしていた。竹園紗季は京太の指導もあり、無事に三年間で博士課程を卒業した。卒業後は、やはりT市にある昆虫の研究で有名なN生物資源研究所のポスドクの職に就いた。二人は、T市内にあるアパートで…

人気ブログ「金融日記」の藤沢数希さんと対談しました

今号のむしマガでは、人気ブログ金融日記および人気有料メルマガ週刊金融日記を運営する藤沢数希さんとの特別対談をお送りします。この対談は、僕が9月に帰国した際、まぐまぐ前社長の大川弘一さんにアレンジしていただき、実現しました。美味しいとんかつを…

ある研究室でのラブストーリー(その2)

T市民が待望していた、T市と東京を結ぶ鉄道路線が、ついに開通した。この春、大鷲京太は博士課程三年生になっていた。新入生の竹園紗季をポスドクの観音台則夫に奪われてから、すでに3年が経過しようとしていた。 この間、京太に恋人が出来たことは一度とし…

ある研究室でのラブストーリー(その1)

4月上旬、北関東のとある学園都市でもようやく桜が咲き始めた。それと同時に、この街に植えられている多数のスギに由来する花粉が、少なくない市民を攻撃していた。 T大学は、そんな街の一角を占める総合大学である。日本でも有数の広大なキャンパスを擁し、…

貢がないオスの精子をブロックするクモ

メスにとってオスの選別はきわめて重要である。ガガンボモドキでは、オスがメスに貢ぐプレゼント餌のクオリティーと量により、交尾の受入れを判断する。 クモの一種、Pisaura mirabilisでも、オスは糸でぐるぐる巻きにした昆虫をプレゼントしてメスに渡す。…

今後、帰国するべきかどうか。

東北大の教授の炎上騒動について、個人を攻撃するクレーマーや、クレーマーを煽動するまとめサイトが社会悪であるという見解を、先日のブログに掲載した。 クレーマーとまとめサイトにより社会が毀損される この問題に関心のある人も多かったようで、昨日だ…

ナウシカのメーヴェを作った男

メーヴェ(写真クレジット: 八谷和彦) 宮崎駿原作の漫画およびアニメ—ション映画「風の谷のナウシカ」。作中で、メーヴェとよばれるグライダーのような軽量飛行装置に乗る。主人公のナウシカはメーヴェを操り、自由自在に飛び回る。 このメーヴェを現実に作…

遺伝子改変で鼻センされた蚊

吸血するネッタイシマカ image from Wikimedia commons 日本はこれから夏にかけて虫が元気いっぱいにあふれる季節である。虫好きにはたまらない季節が来るわけだが、虫好き人間でも嫌な虫はいる。蚊はそんな虫の代表だろう。 蚊の中には黄熱、デング熱などの…

アルファブロガーのメレ子さんにメレンゲが腐るほど語ってもらいました

私が発行しているオンラインジャーナル「むしマガ」の特集として、人気ブログ「メレンゲが腐るほど恋したい」を運営するアルファブロガー・メレ山メレ子さんのインタビューを本日から掲載する。4時間弱に及ぶインタビューからは、こちらも勉強になるような気…

放射能をもつ細菌を投与した「体内被曝療法」で膵臓がんを治す

がんの撲滅は人類が直面しているあまりに大きすぎる課題だ。現代の日本では、がんは死因のトップとなっている。 数あるがんの種類の中でも、とりわけ膵臓がんはやっかいである。膵臓がんは全種類のがんの中で死亡原因が第4位となっている。膵臓がんは転移し…

パワーアップした遺伝子コレクター

私が発行する有料メルマガ「むしマガ」が、発行してちょうど1年が経過しました。有り難いことに、同業の研究者をはじめ、学生、出版関係者、主婦、作家、アルファブロガー、弁護士、アーティスト、経営者など、様々なバックグラウンドをもつ方に愛読いただい…

納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった

「納豆菌は、地球侵略のために宇宙から飛来したエイリアンである」 私はこれまで、自らの身を危険にさらしながらも、この重大事実について告発し続けてきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいいもう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。 納豆菌の陰…

不老不死の生き物と幹細胞

人類の夢、不老不死は、まだ現実のものとなっていない。しかし、自然界には、不老不死を実現した動物が存在する。 ヒドラはクラゲやイソギンチャクなどと同じ刺胞動物に属する、不老不死の動物だ。淡水環境に生息し、体長はおよそ1センチメートルほどで、頭…

むしマガハイライト【Vol. 97, 98, 99】

☆━━━━NASAが新たな火星探査計画を発表 NASAは米国時間の12月3日、現在火星を探査中のキュリオシティがこれまでに有機化合物のクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタンを検出したものの、地球型生物の構成要素になるような有機物は検出されなかった、…

ゆるふわ極限環境アニマル・ヒルガタワムシ

クマムシを採集しようと路上の干涸びたコケを持ち帰って水に浸して観察すると、その中からおびただしい数のヒルガタワムシに出くわすことが、よくある。クマムシが見つからず、ヒルガタワムシだけわんさか出てくるようなこともあり、そんなときは「ちぇっ、…

むしマガが有料メルマガ増加部数ランキング1位になりました

私が発行する有料メルマガ「むしマガ」が、まぐまぐで発行されている全有料メルマガの中で、増加部数ランキングが先週初めて1位になりました。 有料メルマガ版増加部数ランキング: まぐまぐ これまでは5位が最高記録でしたが、荒川和晴氏のインタビュー掲載…