クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

2013-01-01から1年間の記事一覧

ある研究室でのラブストーリー(その4・最終話)

初雪の日に、アパートに一通の封筒が届いた。差出人はT大学。あのパーマネント助教公募の、書類一次審査の結果通知が来たのだ。 京太がその薄い封筒を開くと、中にはA4サイズの紙が一枚だけ入っていた。紙面には文字が数行だけ印刷されており、余白部分がや…

世界に蔓延する偽装魚と食の未来

昨今、日本における食品の偽装問題が取り沙汰されているが、アメリカやヨーロッパでも事情は同様である。記憶に新しいのは牛肉のミンチに馬の肉が使用されていた問題だ。いずれも、より安い品物を求める消費者により、業者間のコスト削減競争が激化している…

年末イベントのご案内

今月末から少し日本に帰国し、色々とイベントに顔を出します。お暇な方は遊びにきてください。まずは、宇宙生物学系イベントから。 日本アストロバイオロジーネットワーク公開講演会「宇宙にいのちを探す」 私もオーガナイザーを務めている国際アストロバイ…

ある研究室でのラブストーリー(その3)

大鷲京太と竹園紗季が交際を始めてから、三年が経過しようとしていた。竹園紗季は京太の指導もあり、無事に三年間で博士課程を卒業した。卒業後は、やはりT市にある昆虫の研究で有名なN生物資源研究所のポスドクの職に就いた。二人は、T市内にあるアパートで…

人気ブログ「金融日記」の藤沢数希さんと対談しました

今号のむしマガでは、人気ブログ金融日記および人気有料メルマガ週刊金融日記を運営する藤沢数希さんとの特別対談をお送りします。この対談は、僕が9月に帰国した際、まぐまぐ前社長の大川弘一さんにアレンジしていただき、実現しました。美味しいとんかつを…

ある研究室でのラブストーリー(その2)

T市民が待望していた、T市と東京を結ぶ鉄道路線が、ついに開通した。この春、大鷲京太は博士課程三年生になっていた。新入生の竹園紗季をポスドクの観音台則夫に奪われてから、すでに3年が経過しようとしていた。 この間、京太に恋人が出来たことは一度とし…

ある研究室でのラブストーリー(その1)

4月上旬、北関東のとある学園都市でもようやく桜が咲き始めた。それと同時に、この街に植えられている多数のスギに由来する花粉が、少なくない市民を攻撃していた。 T大学は、そんな街の一角を占める総合大学である。日本でも有数の広大なキャンパスを擁し、…

クマムシさん・アット・デザインフェスタ

本日11/2と明日11/3に開催されるデザインフェスタにクマムシさんが出展します。ここでしか入手できない、クマムシさんのレアアイテムが満載ですので、ぜひご来店ください。 ・・・・・・ 『デザインフェスタVol.38』 11月2日(土)〜11月3日(日)11時〜19時…

貢がないオスの精子をブロックするクモ

メスにとってオスの選別はきわめて重要である。ガガンボモドキでは、オスがメスに貢ぐプレゼント餌のクオリティーと量により、交尾の受入れを判断する。 クモの一種、Pisaura mirabilisでも、オスは糸でぐるぐる巻きにした昆虫をプレゼントしてメスに渡す。…

パリでもやしもん

朝、ラボに来たらホワイトボードにこれが描かれていた。 今いるラボは皆微生物屋だが、フランスでもこの業界ではもやしもんが人気のようだ。 【関連記事】フランス人の生産性の高め方 【お知らせ】このブログが本になりましたクマムシ博士の「最強生物」学講…

ハロウィンとアメリカ

アメリカではハロウィンは一大イベントであり、いい年をした大人でも、仮装のクオリティーを仲間内で競い合うほど熱がこもる。私がいたNASAの職場でも皆、仮装をして出勤していた(写真)。 そんな老若男女が夢中になるイベントだが、オハイオ大学の学生グル…

再現性の無い研究論文を減らすにはどうすべきか

自然科学、とりわけ医学生物学系の多くの論文で再現性の無いことが問題になっている。製薬会社が行った追試では、実験結果が再現できなかった論文は70〜90%にまでのぼっているらしい。 NIH mulls rules for validating key results: NATURE | NEWS この問題…

週刊SPA!でロングインタビューとグラビアが掲載されました

SPA! 2013年 10月29日号 本日10月22日発売の国際科学ジャーナル週刊SPA!誌 (10月29日号) に、私のロングインタビューおよびグラビアが掲載されている。長澤まさみさんの表紙が目印だ。 若き研究者がクマムシを「ゆるキャラ化」した理由: 週刊SPA!] 今回、SPA…

今後、帰国するべきかどうか。

東北大の教授の炎上騒動について、個人を攻撃するクレーマーや、クレーマーを煽動するまとめサイトが社会悪であるという見解を、先日のブログに掲載した。 クレーマーとまとめサイトにより社会が毀損される この問題に関心のある人も多かったようで、昨日だ…

クレーマーとまとめサイトにより社会が毀損される

東北大の教授のtwitterでの発言が炎上騒ぎになっている。 東北大、教員のTwitterでの「不適切発言」を謝罪 この教授が野球観戦をしながら、自分が応援するチームの敵とその地元を咎める発言をしたことが問題になっているようだ。発言直後から、この教授のtwi…

博士のゆくえ:学振に振られても生きる

今年も、日本学術振興会特別研究員、通称学振の採用結果発表の季節がやってきた。twitterのタイムラインも、採択の合否で賑わっていた。 念のため、学振について少し説明しておく。学振は、博士課程の大学院生や、博士号を取得してから5年以内の博士が、生活…

昆虫研究界に新エースあらわる

昆虫は食材としてのポテンシャルが高く、昨今の昆虫食ムーブメントには目を見張るものがあることを以前書いた。 21世紀は昆虫食の世紀になるかもしれない 昆虫食が大衆化するためには、ディープではなくライトに攻めることが肝要だ。昆虫食というジャンル自…

やっぱり日本のアカデミアの将来は明るいかも

メルマガにもTwitterにも書いたのだけれど、ここでも少し書いておきます。 このブログでさんざんネタにさせてもらったバッタ博士が、京都大学の助教に就任されました。 少年の頃からの夢、叶いました。: 砂漠のリアルムシキング おめでとうございます。ネッ…

クマムシ、極限環境微生物学者に完全勝利。

去る9月25日に新宿ロフトプラスワンで行われたクマムシ vs 極限環境微生物ー地上最強生物トークバトルが満員の観客を迎えて行われた(このイベントに至るまでのあらすじはこちら→クマムシ博士から深海を行く微生物ハンターへの反論: ナショナルジオグラフィ…

知的労働者が書籍を出版する方法

おかげさまで拙著「クマムシ博士の「最強生物」学講座」が好評につき、早くも増刷が決定。ご購入いただいた皆さまに感謝。 クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたちー 日本滞在中に都内の書店を散策していたが、ほとんどの大型書店で本著…

ニコニコ生放送【クマムシ vs 極限環境微生物ー地上最強生物トークバトル!】

明日9月25日19:30からのイベント「クマムシ vs 極限環境微生物ー地上最強生物トークバトル!」をニコニコ生放送で放送します。 ニコニコ生放送「クマムシ vs 極限環境微生物ー地上最強生物トークバトル!」 会場に来れない方はニコニコ生放送で野次をコメン…

クマムシ博士から深海を行く微生物ハンターへの反論

ナショナルジオグラフィックに、クマムシがいかに最強かを書いて寄稿しました。 クマムシ博士から深海を行く微生物ハンターへの反論: ナショナルジオグラフィック 結論として、単細胞生物の微生物は、科学的にも芸術的にもクマムシの敵ではないということな…

MARUZEN&ジュンク堂渋谷店で出版記念イベントを開催します。

クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたちー 近日発売になる拙著「クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたち」の出版記念イベントのトークショーをMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店で行います。トークのお相手はぬいぐるみ作…

クマムシ vs. 極限環境微生物ー地上最強生物トークバトル

先日、極限環境微生物学者の高井研氏の著書を出版社のイーストプレスから送ってもらった。 微生物ハンター、深海を行く:高井研 本書は高井氏の研究人生のこれまでをドラマティックに、そしてバブリーな表現で綴ったものだ*1。これから研究者を目指そうとす…

クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたち

このたび、『クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたちー』という書籍が新潮社から出版された。本書は本ブログとメルマガに執筆したコンテンツの一部を加筆修正し、まとめたものだ。一部、書き下ろしも含んでいる。クマムシさんの表紙が目…

コスモポリタン・インベイシブ・スピーシーズ

クマムシ党の政見放送: Togetter 史上最強動物クマムシをモチーフとした「クマムシさん」が三次元化されて世に出てから1年が経過した。この間、オンラインショップ「クマムシさんのお店」や日本科学未来館とジュンク堂などをオリジナル・ハビタットとし、ク…

ナウシカのメーヴェを作った男

メーヴェ(写真クレジット: 八谷和彦) 宮崎駿原作の漫画およびアニメ—ション映画「風の谷のナウシカ」。作中で、メーヴェとよばれるグライダーのような軽量飛行装置に乗る。主人公のナウシカはメーヴェを操り、自由自在に飛び回る。 このメーヴェを現実に作…

基礎研究における自由市場からの研究資金集めは経済の論理により捏造を生じやすくするか

研究者が独自に自由市場から研究資金を集めることについて書いた前回の記事には、予想以上に大きな反響があった。公的な資金に頼らずに研究者自らが動くとうこのアイディアについて、賛同するコメントが多く寄せられた。私の活動に触発されて下の科学ブログ…

堀江貴文氏に学ぶ研究者としての生き方

6月23日の日曜日、堀江貴文さんが私のいるフランス・パリ第5大学の研究室まで、クマムシを見に遊びにきてくれた(クマムシの説明についてはこちら)。 堀江さんとはニュースサイトのハフィントンポスト関係者の懇親会の時にお会いしたのがきっかけで、今回の…

遺伝子改変で鼻センされた蚊

吸血するネッタイシマカ image from Wikimedia commons 日本はこれから夏にかけて虫が元気いっぱいにあふれる季節である。虫好きにはたまらない季節が来るわけだが、虫好き人間でも嫌な虫はいる。蚊はそんな虫の代表だろう。 蚊の中には黄熱、デング熱などの…