クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

ナウシカのメーヴェを作った男


メーヴェ(写真クレジット: 八谷和彦


宮崎駿原作の漫画およびアニメ—ション映画「風の谷のナウシカ」。作中で、メーヴェとよばれるグライダーのような軽量飛行装置に乗る。主人公のナウシカメーヴェを操り、自由自在に飛び回る。


このメーヴェを現実に作っている人がいる。メディアアーティストの八谷和彦さんだ。八谷さんといえば、ピンクのクマがメールを届けてくれるメールソフト「PostPet」を世に送り出した人物としてもよく知られる。



メーヴェに乗る八谷氏(写真クレジット: 米倉裕貴)


その八谷さんが、なぜナウシカメーヴェを作ろうと思ったのか。そのきっかけとなったのは、イラク戦争だった。


アメリカがイラクを侵攻したとき、日本がいとも簡単にこれを是認し追従したことに憤慨した八谷さん。「俺はナウシカにはなれないけれど、ナウシカみたいな人が現れた時に、生まれた時に乗るものを作ろう」と誓った。そして、OpenSkyと名付けたメーヴェの開発プロジェクトをスタートさせた。2003年のことだ。


だが、空想の世界の飛行装置機体を実際に作ることは、困難を極めた。改良をいくら続けても、機体を宙に浮かべることができない。


試行錯誤を続けて、気がつけば開発開始から10年の歳月が過ぎていた。そして今年、ついに八谷さん自身の乗る機体が初飛行に成功した。下の動画では、この時の様子を見ることができる。メーヴェが離陸したのを見た瞬間、自然と鳥肌が立ってしまった。メーヴェは今後もさらに進化し続けそうだ。



現在、東京の「アーツ千代田 3331」で開催中の八谷さんの個展「OpenSky 3.0ー欲しかった飛行機、作ってみたー」では、オープンスカイプロジェクトの開発経緯や機体の展示を行っている。興味のある方は訪れてみてはいかがだろう。


私はひょんなことから八谷さんと一緒にイベントをさせてもらってきたが、その縁で今回、私が発行する有料メルマガ「むしマガ」に登場してもらうことになった。八谷さんに語ってもらった25000字を越えるインタビューでは、メーヴェPostPetだけでなく、ご自身が参加している「なつのロケット団」でのロケットの開発についても熱く語ってもらってた。


八谷さんのインタビューを通して感じたことは、「もし世の中にコレがあったらわくわくするよね」というポジティブなマインドが彼の根底にあるということだ。大半の人が実現不可能だと思うことでも、可能なものに変えてしまう。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。無理そうなアイディアの秀逸さだけではなく、自分の専門の枠に捕らわれず、やりたいものに手を伸ばす姿勢など、私も見倣うところが多い。


八谷さんのインタビューは、むしマガにて今週から8回にわたり掲載する。インタビューのラインナップは以下の通り。 

第1回「メディアアーティストとは何か」
第2回「PostPetジョジョの奇妙な冒険だった」
第3回「ナウシカみたいな人のための乗り物を作りたい」
第4回「誰にも登られていない山を最初に登る」
第5回「ロケットにかける想い」
第6回「小惑星をバスにして火星に行きたい」
第7回「これからは複数の仕事を持とう」
第8回「ホストクラブはライブメディアの究極の形」


それでは、以下に各回のインタビューの一部を掲載する。

                                                                                              • -

第1回「メディアアーティストとは何か」


→八谷
→堀川


堀: では、今回は八谷さんの話がメインなので、これからたくさん語っていただこうと思います。八谷さんのことをちょっと知っている方も、八谷さんの職業が何なのか分からないという人も結構いるんじゃないでしょうか。


八: はいはい。


堀: メディアアーティストというのを聞き慣れない人もいると思うので。最近はハイパーメディアクリエーターとか、ハイパーメディアフリーターと名乗る方もいますけど(笑)。


八: はい(笑)。


堀: で、メディアアーティストというのはどういうものか、と。


八: 美術の中でメディアアートというジャンルがあります。普通の美術だと彫刻だったり絵画だったり、絵画の中でも油絵、日本画、アクリルとか、技法ごとのスタイルがありますけど、メディアアートという割りと新しいジャンルもありまして。だいたい1970年代、1980年代くらいにその源流があるんですけど。


堀: ええ。


八: ビデオやテレビを題材に作品を作り始めたビデオアートからコンピュータにシフトしてきて、ある種のインタラクティビティというか、観客が何かすると作品が変わったりとか、そういう今までのビデオアートに含まれないものがメディアアートとして出てきたんですね。だからぶっちゃけた話、コンピュータとかそういうものを使った作品をメディアアートと呼ぶことが多いんですけど。


堀: なるほど。


八: そういうものを作る作家が大体1980年代後半から90年代にかけて増え始めて。メディアアートを作る人なので、メディアアーティストと名乗っている感じですね。


堀: それは広義にはコンピュータグラフィックスなどを作る人もメディアアーティストに含まれるんですか?


八: そうですね、技法としては同一でも、コンピュータグラフィックスとかCGIとよばれるものを作る人がメディアアーティストと名乗るかどうか。それは例えば作られたものが商業的なものなのか、それとも個人的にアートを目的として作っているものなのかで違いますね。


堀: 作り手それぞれの意識によって変わってくるということですか。


八: はい。美術作品として作られたものの中で、ハードウェアとしてのコンピュータやネットワークを使っていたり、ウェブの技術を使っているものをメディアアートと呼ぶ感じですね。


堀: 例えば、コマーシャルに乗らないものをやっている人たちというのは、基本的にはその作品自体を売っていたり展示するということでお金をもらっているということですか.......


(本編に続く)


第2回「PostPetジョジョの奇妙な冒険だった」


堀: ところでPostPetのアイディアの元になったのは、夢で熊を見たのが元になっていると。


八: そうですね。正夢にするのが面白いかな、というか。


堀: あとはジョジョのスタンド(註)も参考にしていると。


註)荒木飛呂彦の描く長編漫画「ジョジョの奇妙な冒険」には「スタンド」と呼ばれる守護霊のような存在が登場する。スタンドは人により異なる能力をもつ。


八: そうですね。中二病的なんですけど、漫画の中のものが本当に有り得るとしたら、どうやって表現するか、とか好きなんですよ。無理をどうやって実現するかを真剣に考えるのが好きで。荒木先生は、スタンドは超能力が目に見える形になったものと言っているんですけど。そんなものを本当に実現するのは難しいけれど、ネットで自分の分身的なものをキャラクターとして設定して、それが唯一のものであればジョジョのスタンド的なものに思えるんじゃないか、と。コピーが不可能なものと言ったら変ですけど、PostPetの場合、ペットは一匹しか飼えないという基本的な設定にして。当時はたまごっちはあったんですけど、たまごっちとは違うものにしようというのはすごくありましたね。あと、ポケモンとも変えようと。


堀: ええ。


八: 例えば、たまごっちはいつもこちらに対して「世話をしろ」とアラームを鳴らしてくるんですけど、それは嫌だと(笑)。それとポケモンみたいにたくさんキャラクターを飼えるというのも嫌で。スタンドは一人に一体、ペットは一人に一匹のみ、と。しかもペットが相手のところに行った時、例えば僕が堀川さんのところにペットを送った時に、堀川さんが僕のペットを可愛がることもできるんですけど、殴ることもできるんですね。


堀: はい(笑)。


八: 殴るとひみつ日記に「堀川大樹に殴られた」とか書いてあって、精神的なダメージをこっちに負わせることもできるんですよね。「何で殴るんだ・・・俺、何か悪いことしたっけ?」みたいな。そういう感情が生まれるわけです。そういうのは全部、ジョジョの奇妙な冒険のスタンドのルールからとって。姿とかは全く違いますけど、考え方とか設定は近づけて作ったんですね。


堀: なるほど、なるほど。例えば、今流行っているアメーバピグとかは、やっぱりPostPetの辺りから発生しているんでしょうかね......


(本編に続く)


第3回「ナウシカみたいな人のための乗り物を作りたい」


堀: メーヴェを作ろうと思ったきっかけはあったんですか?元々ずっと作りたいという想いがあったんですか。


八: いつか作りたいものの一つではありましたね。


堀: 技術的な部分については、専門家の方がいないとかなり難しいと思うんですけど。


八: そうですね。あの尾翼のない飛行機を無尾翼機というんですけど。メーヴェ無尾翼機で、たぶん宮崎駿さんは「メーヴェは実際には飛ばないだろう」と思ってデザインしていると思うんですけど、実際に制作された無尾翼機はいくつか例があって。戦中ドイツで作られたホルテンHo229という機体もありますし。


堀: そうなんですね。


八: メーヴェハンググライダーとかをもとにデザインした思うんですよね。ナウシカの中でエンジンがついてない機体を「凧」とか呼んでいるし。その辺をちゃんと組み合わせれば、メーヴェにかなり近いものができるんじゃないかとうっすらと思っていたんですけど。で、イラク戦争が起きた頃に、日本があまりに簡単にアメリカに追従してイラク侵攻を認めたことに衝撃を受けて、「俺はナウシカにはなれないけど、ナウシカみたいな人が現れた時に、生まれた時に乗るものを作ろう」みたいに思って。


堀: すごい動機ですね。


八: 半分ねじ曲がってますけど(笑)。メーヴェの実機を作るのはいつかやりたかったんだけど、やるなら今しかないと思って作り始めたんですね。


堀: それが2003年頃ですか?


八: そうですね。もう10年になるんですよ。最初はそんなに長くやる予定はなくて、完成まで5年くらいかな、と思っていたんですけど、2倍かかりましたね。見積もりが甘かったです。とはいえ、すごく長くなったのは色々状況の変化、震災があったりとか、トラブルが出てきて時間がかかったりとか、会社の利益が下がったりとかがあって。でもあまり無理はしないというか、別にクライアントがいて依頼されてやっている仕事じゃないから慌ててやって失敗するのも嫌だし。ぼちぼちやっていますね。


堀: ほうほう。メーヴェは成功したら量産して製品化するところまでもっていきたいというのはあるんですか?


八: それはないですね。


堀: 趣味みたいなところに近い、というところはあるんですか?あるいはアート作品として作ってらっしゃるんでしょうか......



(本編に続く)


第4回「誰にも登られていない山を最初に登る」


八: でも、一機だけでもメーヴェ的な機体があるかどうかで、そういう飛行機が実現可能かどうかを知ることができる。その一機を作るのが自分の仕事。誰にも登られていない山があったとして、その山をみんな遠くから見ているだけなんだけど、その山に登った人が一人でもいたら、人類にはそれを登ることが可能という証明になるじゃないですか。


堀: そうですね。科学もそうですね。


八: そうですね、まさに。追試可能な実験やってる、というか。そういうものとして機体を一機作るという考え方ですね。ジェットエンジンが大きすぎたりとかあるいは小さなエンジンにパワーがなかった頃は、ああいったメーヴェみたいな小型の機体でジェットエンジン付き機は考えにくかった。今はそれができつつあるのと、あと、今の機体はほとんど木とFRPででできているんですが、それをカーボンなどにするともっと軽量化できるかもしれないし。そうするとメーヴェにより近い機体ができるんですけど、まず最初の原型機が一機はないと、検証もできないので。


堀: 八谷さんはテクノロジーの深い部分を見ている感じがするんですけど、昔からロケットとかメカが好きだったんですか?


八: そうですね、嫌いではもちろんなかったですが、すごくハイテクなものが大好きというわけでもなかった気がしますね。現実主義というか、自分の手に入る範囲でのテクノロジーを、一見アホな事に使うのが好き、というのはありますね。例えば、視聴覚交換マシンを造った頃は東大の研究室とかで数千万円とか数億円の予算をかけてバーチャルリアリティの研究がなされていたんだけど、それに勝つようなものをサラリーマンがお小遣いで作る、とかがやりたかったことで。


堀: はい。


八: 今も、航空機の開発というのは数億円〜数十億円かかるのが普通なんですけど。もちろん、すでにデザインされたもの、アメリカで飛んでいるもののキットを買ったりして作ればそんなにコストはかからないですけど、通常は新型機を作るのはすごくお金がかかったりするので。それをなるべくローコストでやるのがカッコイイ、みたいな......


(本編に続く)


第5回「ロケットにかける想い」


堀: 今はロケットの小型化とコストダウンを頑張ってやっているということですね。


八: はい。今まで国が国威発揚でつくってきたから、「より大型の衛星を」「より遠くへ」でロケットがどんどん大型化していったわけで。恐竜みたいなものに対して、新しく現れた小さいネズミのようなほ乳類が勝つ、みたいなこともありかもしれないですからね。まあ、ロケットは単純に輸送手段なので、20トントラックのニーズはこれからもあるとは思いますが、バイク便とかリヤカー便とか色々多様性がないと輸送手段としてはダメだよね、というのは少なくともみんな思っていますね。


堀: それは例えば、将来は低軌道を回る各企業などが保有する宇宙ホテル(註)みたいなのができたとして、そういうところにバイク便のような小さなロケットで物資や人間を輸送したり、そういうイメージですか。


註)国政宇宙ステーションのように低軌道を回るホテル施設。各国の企業が宇宙ホテルの開発に乗り出している。


八: そうですね。たぶん宇宙ホテルみたいなものを運ぶとなると、でかいロケットが必要になると思うんですけど、そこまで行く手段として人間だけ運べばいいのであれば、そこまで大きくする必要はないので。そういう小さな輸送ロケットを民間が運用して担うというのは、十分アリだと思います。


堀: うんうん。で、それが上手くいったら、もっと話が大きくなっちゃいますけど、火星とか惑星に行くようなものも作りたいですか?


八: 作るかもしれないですね。そのへんはSF的な話になるんですけど。まあ、とりあえず僕らが一番やりたいのは、別に月には行かなくてもいいから、小惑星(註)を捕まえてきたい、と。


註)火星軌道の外側には固体成分が多めの小規模の惑星群が回っている。この小さな惑星が小惑星である。


堀: おお。きた。


八: 火星のちょっと先には小惑星がたくさんあって、そこに小さなロボットを送り込んで小惑星の材料を使ってバス便に改造する、と。小惑星の軌道をちょっと変えてやって、地球のすぐそばまで来るようにする。そうすれば、地球からちょっと行けばその小惑星のバス便に乗れて、火星まで行くことができると。


堀: うん、うん。


八: もし火星まで人間が行くとすると、宇宙放射線被曝の問題が避けて通れなくなると思うんですよね。今は国際宇宙ステーションだって、せいぜい400kmくらいの高度だから、宇宙放射線による被曝はそこまでまだシリアスな問題ではない。


堀: そうですね。


八: でも、火星まで行くとすると、ちょっと死にかねないですよね。6ヶ月くらい宇宙放射線被曝していると。じゃあ、遮蔽しなくちゃいけない、と。遮蔽するためには結局、ロケットの厚み、質量が必要になる。水でも鉛でも何でもいいんですけど、でもそうすると、大きいものを打ち上げるのはどんどん難しくなってくるんですよね。


堀: この部分は有人惑星間飛行で一番問題になってくる部分ですね。


八: ええ。放射線を遮蔽できるようにすれば材質は何でもいいので、だったら小惑星をちょっとくり抜いて中に人間が住めるようにして、それで火星まで行けば放射線問題は少なくともクリアできると。小惑星をくり抜いて、アリの巣のようなところに人が住んで。氷がある小惑星を上手く選べば水問題も解決するし、水を電気分解して水素も得られるし。


堀: ふむふむ。で、その小惑星バスの推進力は原子力を考えているんですか?ウランのある小惑星を捕まえられれば、原子力を使うことができると思うんですが。


八: 堀江貴文さんは原子力を考えていますね......


(本編に続く)


第6回「小惑星をバスにして火星に行きたい」


八: 僕らはこういうSFみたいな話ばかりしているんですけど、でも具体的にはそれが一番火星とかにいくためにはいいやり方で。それを拡張していけば多分、太陽系外に行ったりとか、次のステップに繋がるんじゃないかと。


堀: いやー、スケールが大きいですね。


八: でかいものを地球から打ち上げるのは効率が良くないんですよね。重力があるから。小惑星の重力は大したことないので、そこからだったらあまり大きな力なしに遠くまで行けるし。


堀: そういう意味では、アメリカではそういう話をしている人もいますよね。つい最近、NASA小惑星を捕まえて地球の近くまで運んでくるという計画を発表しましたね。


八: そうそう、この前記事になったのを見て悲しくなりました。僕ら、そういう話をホントに10年前くらいから飲み会でしていたのになー、と(笑)。


堀: アメリカは動くのが早いですからね。資金もあるし。


八: 小惑星を捕まえてくれば火星に行けるというアイディアは、野田さんから最初に聞いたんですよね。実際、炭素型、ケイ素型、金属型、そして水がある小惑星。地上からでも、どのタイプの小惑星か観測すればある程度まで分かるから、狙って採りに行くことは可能だと。だから、その後はまずはやぶさみたいな探査機による調査をして、それが狙い通りの小惑星だったら、そこにロボットなどを送り込んで働かせて、基地を作る。


堀: アメリカの今度の計画は、小惑星を捕獲して地球の低軌道にのせるというものですよね。その小惑星を、民間の宇宙ベンチャーが利用して調査したり、将来の惑星上の活動のための練習台にすると。もしかしたら、今言われたように、ロボットをこの小惑星に送って作業させるようなこともすると思うんですけど。それは多分、NASAが公募で呼びかけると思うんですが、あれはアメリカが国家的事業としてやるだろうから、アメリカに法人がないとできないかもしれないですね。


八: あるいは、皆でやろう、となるのがいいと思いますけどね。小惑星一個だけだと、全部用件を満たすのは無理だと思うんですよ。金属があるとか、水があるとか、人間が生活できるだけの厚みがあるとか、そういう都合のよい全部揃った小惑星を見つけるのは難しい。だったら、ロシアはとりあえずウランがある小惑星見つけて、日本は水がある小惑星を見つけて、という感じで。で、そういういくつかの異なるタイプの小惑星を列車みたいに連結して......


(本編に続く)


第7回「これからは複数の仕事を持とう」


堀: なるほど。ところで、八谷さんはこれから何を目指していかれるのでしょうか。


八: 現状は手を広げすぎている部分がありまして(笑)。ニコニコ学会もそうですし、なつのロケット団もそうなんですけど。この二つはまったくお金にならなくて支出ばかりで。打ち上げ実験のために北海道に行く旅費も車代も滞在費も全部自費と、なつのロケット団の活動はお金が出ていくばかりですし、ニコニコ学会も別に金銭的なプラスはないんですけど、でもこの二つは割と大事だと思っています。あと、アートの活動も実際にはあまりお金にはならないですね。


堀: ええ。


八: でも、仕事は4つから6つくらいやるのが僕には適性と思っていて。ちゃんとお金になる仕事3つと、お金にならない仕事3つくらいまでは許容範囲なので、その中で楽しんでやろう、と。それは学生さんにには言いたいですね。将来的には、仕事を複数持った方がいいですよ、と。


堀: ふむふむ。


八: 収入面で複数の仕事を持ちつつ、あとは普通のボランティアでもいいと思うんですけど、自分がちゃんと熱意を持って取り組める仕事的なワークをするといいと思います。ジョブじゃなくてワーク。そういう自分が創意工夫していける仕事を複数持つというのは、自分の将来のために大事な気がします。で、僕のロケット開発やニコニコ学会の活動も、別にお金が出ていくばかりだけじゃなくて、お金じゃない対価を僕はもらっていると思うのです。今回だと、むしむし生放送に登壇した皆さんに知り合えたこととか。あと、それを大学の授業の中で話すこともあるし。


堀: インプットもあるし、あとネットワークも作れますよね。


八: そうですね。結局、そういうネットワークから後の仕事につながることが多いですね。僕の収入の方での仕事は4つあって、自分の会社と、学校で教えているのと、あとはアーティストとしての仕事と。アーティストとしての仕事はプラスマイナスでいうとマイナスになりがちなんですけど(笑)。あとはもう一つ、独身の時に住んでいた部屋を人に貸して大家さんをやっているんですけど。


堀: それは意外......


(本編に続く)


第8回「ホストクラブはライブメディアの究極の形」


八: テキストデータは手軽に入手できて便利なんだけど、そこにたくさんのお金を払いにくい。でもライブだと、トークショーであれ演奏であれ、お金を払う。だから、そのライブメディアの究極の形がホストクラブかな、と。


堀: なるほど。


八: だって、キャバクラにしろホストクラブにしろ、普通のお姉ちゃんとかお兄ちゃんとお喋りするためにお金を払うわけですよね。だったら、アーティストや研究者とお喋りするのはもっと価値があるだろうと。


堀: ええ。


八: ニコニコ超会議「むしむし生放送」の時、あの場で皆さんの書籍がばーんと売れたじゃないですか。でも、仮にあの場に出演者がいなくて、プレゼンを大画面で流していて、そこで本を売っていてもあまり売れなかったと思うんですよ。目の前に人がいて、直接話を聞いて感動した人って、財布のひもがかなり緩む。


堀: なるほど。


八: ホストクラブはそのうちまたやりたいので、ぜひ帰国の際には出てもらえればと。


堀: 僕でよければ(笑)。


八: 前に漫画家さんとかミュージシャンをよんでホストクラブをやった時には、すごく人が集まって。漫画家さんとか、作品は知られているけど、意外と本人と会う機会が少ない、という人は狙い目なんです......


(本編に続く)

                                                                                              • -


インタビュー記事の全文は、有料メルマガ「むしマガ」(月額840円・初月無料、購読申込はこちらから)を登録してご覧下さい。メーヴェを作った男の頭の中を覗けるこの機会、どうかお見逃し無く。


【関連書籍】



ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸- メーヴェが飛ぶまでの10年間: 八谷 和彦, 猪谷 千香, あさり よしとお


【関連記事:むしマガでの過去のインタビューシリーズ】


超高校級とよばれたイケメンサイエンティストの野望 【荒川和晴氏インタビュー】


アルファブロガーのメレ子さんにメレンゲが腐るほど語ってもらいました【メレ山メレ子氏インタビュー】


孤独なバッタが群れるとき 【前野ウルド浩太郎氏インタビュー】


「やりたいことしかやりたくない」がいいね【森山和道インタビュー】