クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

学校と学び

むしマガVol.281オンライン・サイバー高校のことについて書きました。自分が中学生や高校生の頃にこんなところがあったらよかった。なぜそう思ったかというと、自分の通っていた中学や高校が好きでなかったからなんですね。


私が通っていたのは、T学園という私立の中高一貫校です。神奈川県川崎市にある学校なのですが、周囲は山に囲まれており、養豚場から放たれる香りがなかなかきつかった。


さて、6年間この学校に通って何を学べたのか。思い返してみても、あまり胸を張って答えられるものがないことに気づきます。勉強もほとんどしていませんでした。私はもともと勉強嫌いだったのですが、両親にいやいや中学受験勉強をさせられたため、さらに勉強をする気がなくなっていたのです。


同校に通い、それまでの環境はがらりと変わりました。男子校のため、クラスに女子はいません。この状況は6年間続きました。校則は厳しく、体罰も当たり前。ひょろひょろの同級生が体重90キログラムの教師に思いっきり殴られたときは、ダブルアクセルくらい回転しながら宙を舞いました。バットでお尻を思いっきり叩かれた他の同級生は、しばらくの期間、椅子に座ることができず、エア座りをしていました。どれもみな、懐かしい想い出です。


毎週水曜日には、朝に君が代が、夕方に校歌が校内に流れます。君が代が流れる際には国旗と校旗を校庭の鉄柱に上げ、校歌が流れる際には両方の旗を下ろします。君が代や校歌が流れ始めたら、生徒はどこで何をしていても、国旗と校旗のある方向に体を向けて直立不動の体勢をとらなくてはいけません。もちろん、旗が実際に見えていなくてもです。音楽が流れているときに体を動かしているのを教師に見つかれば、注意されたり殴られたりします。私はそのスリルを味わいながら、「だるまさんが転んだ」の要領で、ゲーム感覚でちょっとずつ気づかれないように歩いたりしていました。


同校では、夏と冬に修学旅行らしきものがあります。「らしきもの」というのには理由があり、厳密にはこれは修学旅行ではないのです。これらはそれぞれ、「夏季団体訓練」と「冬季団体訓練」という呼称がついています。通称「団訓」。訓練である以上、旅行ではない。軍隊のそれと同じコンセプトの上に立脚したイベントなわけです。団体の中において、規律正しい行動をいかにきちんと遂行するか。これが団体訓練の大きな目的です。


しかしやはり、縛られれば縛られるほど、そこから逸脱したくなるのが男子の性(さが)というもの。夜中に見張りの教師の目をかいくぐって宿舎を抜け出し、外の自動販売機でコカコーラを買ってくるというミッションを遂行するゲームを実施したりしました。薄いジャージと裸足で吹雪の中を移動したこともあります。ミッションに成功したあのときほど、コーラが美味しいと思ったことはありません。ただ、何度か教師に見つかって耳がキンキンするほど殴られたこともありましたが。


それにしても面白いもので、これだけ嫌な学校であったにもかかわらず、出席日数がギリギリでしたが、まがりなりにも6年間通い続けて卒業したのですよね。他の同級生も、途中で辞めたり不登校になった例はほとんどありませんでした。他校の生徒を暴行して退学になった生徒はいましたが・・・。異常な環境を皆で共有していると正常に思えてくるのでしょうか。あと先天的か後天的かはわかりませんが、同級生もおかしなやつばかりでしたから、通常の感覚を持ち合わせていなかったことが幸いしたのかもしれません。


中学校と高校の6年間で自分が学んだと思えることは、今考えても取るに足らないものであるように感じます。もちろん、他人との付き合い方や、この世の不条理さなど、肌で学んだものはあるでしょう。ただ、過去のことを否定したくはありませんが、どう考えても費用対効果が悪すぎる。だったら、別に学校に通わずに自分で学習していってもいいんじゃないか。


今後、学校組と非学校組の二極化が起きるのではないでしょうか。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」282号「学校と学び」】の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 282【学校と学び】

2015年3月8日発行
目次

【0. はじめに】FB夫婦
FBをめぐってもめていた知人夫婦。結局、夫が妻のアカウントをブロック。その後、さらなる争いが生じた。

【1. むしコラム「学校と学び」全文】
多くの子どもたちにとって、学校は今の時代に沿わなくなってきている。その拝啓にあるものとは。

【2. おわりに】
思想雑誌「kotoba」の南方熊楠特集号に寄稿しました。序文を公開。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

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