やっぱり日本のアカデミアの将来は明るいかも
メルマガにもTwitterにも書いたのだけれど、ここでも少し書いておきます。
このブログでさんざんネタにさせてもらったバッタ博士が、京都大学の助教に就任されました。
おめでとうございます。ネット上でも多くの人から祝福されていて、バッタ博士が皆から愛されていることがよく伝わってきます。ネット上のリアルなストーリーに皆さん共感している感じがいいですね。この助教のポジションでは引き続き5年間までモーリタニアで研究が可能だそうで、またアフリカでの勇姿を届けてくれることでしょう。
今回の京都大学の公募プログラムは白眉プロジェクトとよばれるもので、様々な専門分野から人材を選んだようです。就職活動を放棄していた私は知らなかったのですが、ポスドクらの間ではかなりステータスの高い憧れのポジションらしい。選考会議も「伯楽会議」と称しているだけのことはあります。
採用名簿をよく見ると、知人で共同研究でもお世話になっている進化発生生物学研究者の越川滋行さんの名前も。越川さんも助教ご就任、おめでとうございます。北大近くの「まるたかラーメン」で「就職できなかったら西表島に移り住んで虫追っかけながら暮らしたいよね・・・」と語り合ったのが思い出されます。
前年度には右利きのヘビ仮説で有名な細将貴さんも同じプログラムの助教で採用されているんですね。このプログラムではないけれど、私と同じ北大の研究室出身の同級生、テングザル研究者の松田一希さんも京大で助教に採用されている。京大に「いいね!」を36回ほど連打したい。
そしてこれらの4氏のうち3氏が東海大学出版会の「フィールドの生物学シリーズ」で単著を出していますね。
孤独なバッタが群れるとき: 前野ウルド浩太郎 著 (東海大学出版会)
テングザル―河と生きるサル: 松田一希著 (東海大学出版会)
右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化: 細将貴 著 (東海大学出版会)
東海大学出版会の先見の明というか、将来活躍するような若手研究者を見定める嗅覚はなかなかのものがあります。いいですね、東海大学出版会。おすすめです、東海大学出版会。
さて、よくポスドクの間で囁かれる噂に「海外に出ると国内でのコネが切れるから就職に不利」というのがあるが、上の白眉プロジェクトのデータではむしろ海外留学組がよく採用されている。バッタ博士も越川さんも細さんも海外組だ。なので、この言説はあまり信憑性が無い気がする*1。海外で修行をするメリットは大きいだろう。
あとは生物学だと「分子生物学を扱っていないと相手にされない」という言説もあるが、これも定規や天秤などローテクで勝負しているバッタ博士が採用されたことで、普遍的なドグマではないことが窺える。もっとも、バッタ博士の場合は人類救済や外交の面でも評価されているのだろうけど。
いずれにしても、振り切れちゃってる感じの人々がこうしてよいポジションに収まっていくのは嬉しいですね。このメンツのもつ引力はすごいです。アカデミアのトキワ荘。来年度以降、この環境に憧れてさらに多くの変人研究者が応募、着任し、変人ポジティブフィードバック(HPF)が起こることでしょう。この調子なら、日本のアカデミアの将来はきっと明るい。
それでは、私の方は引き続きフリーの研究者を目指していきたいと思います。
【お知らせ】このブログが本になりました
*1:ただし、同程度の業績をもつ者どうしであればコネがある方が有利の場合もあるだろう。コネを重視するような選考には国内組が有利と思われる。