おしえて!クマムシさん「クマムシはどれくらいの温度に耐えられるの?」
今回は先週の「むしマガ」のコンテンツ、クマムシトリビアを公開します。
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【クマムシトリビア:クマムシはどれくらいの温度に耐えられるの?】
読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答...の予定だったのですが、今回からクマムシさんとクマムシ助手のゆうさんにバトンタッチします。
☆クマムシさん
ヨコヅナクマムシの女の子。のんびりしている。
クマムシの世話をしているちょっと不器用な助手。好物はゆでたまご。
詳しいプロフィールはクマムシ研究室へ。
◆ 質問:「クマムシはどれくらいの低温や高温の範囲に耐えられるんでしょうか?」
わーい!むしマガ初登場だ〜!読者のみなさん、よろしクマムシ☆
それに『よろしクマムシ』ってあいさつは、ぼくの専売特許だよ。
ホントごめんね!クロレラあげるから許して。はい♪
(単純ねぇ...) えーと質問は、っと。クマムシがどれくらいの温度に耐えられるかね。
このひとは、たぶん乾眠のクマムシのことについて聞いているんだろうね。
うん。クマムシは熱や寒さに強いことで知られているよね。下は絶対零度のマイナス273度から上はプラス150度まで大丈夫とか。これって本当なの?
うん、本当だよ。高温には150度までたえられたっていう報告も「あるにはある」んだ。
うん。というのは、これが報告されたのはずっとむかし、90年くらい前なんだ。そして、そのあとに色んな研究者が実験したところ、乾眠のクマムシはせいぜい100度くらいまでしか耐えられないことがわかってきたんだよ。
ゆうさん、こわいこと聞くね...。たばこの火でも、900度くらいになるんだよ。どんな生き物でも、火の中に入れたら燃えて死んでしまうよ。
そ、そうなんだ...。クマムシさんでも、たばこの火にはかなわないんだね。
そうそう。ぼくらもふくめて、生き物の体をつくっているタンパク質などの部品はこれくらいの温度で簡単に変成してしまうから、どんな生き物でも火の中では生きられないよ。
なんだかせつないね。でも、溶けるような温度じゃない100度ちょっとくらいの温度でも、乾眠クマムシが死んじゃうのはどうしてなの?
これは、よくわかっていないんだ。でも、おおきく2つの説があるんだ。
まず、ひとつめ。それは、体の中の構造がゆがんでしまうという説なんだ。
ゆうさんとか人間みたいなふつうな生き物だと、乾燥すると細胞や組織がこわれるから死んでしまうんだ。でも、乾眠のときのぼくらの体の中は、飴みたいに固まっていて、細胞や組織ががっちりと守られていると考えられているんだ。
つまり、乾燥しても細胞や組織が傷つかない。だから、乾燥しても生きぬくことができるんだね。でも、高温にさらされると、この飴みたいな状態がちょっと溶けるというか、ゆがんでしまうんだ。
そうすると、もとの組織とかの形もくずれてしまうから、もう生き物として働かなくなる。つまり、死んでしまうんだ。生き物をつくる部品の形と働きは、深く関係しているからね。
そうだったんだね。でも、どっちにしても100度くらいまで耐えられるのは、すごいなぁ。
うん。いいかえれば、体の中で部品ががっちりと守られている乾燥状態だからこそ、これだけの高温にも耐えられるんだね。
そっかー。クマムシさん、物知りだね!
それで、乾眠クマムシでも100度以上の高温に耐えられなく理由、もう一つの説ってどんな説なの?
来週の「むしマガ」でおはなしするよ。
<続く>
【その他のむしマガコンテンツ】
Vol. 37【森山和道インタビューその6「科学雑誌が売れない理由」】
森→森山
堀→堀川
堀: ところで、今は科学離れとか言われていますが、ああいう科学雑誌が売れなくなっているというのはどういう理由だと思われますか?
森: 日本で売れない理由ですか?いや、僕、逆に堀川さんに話を聞きたいんですけど、そのへんアメリカやフランスではどんな感じですか? 相当売れてるんですか?
堀: 相当売れているんじゃないですかね。アメリカはやっぱり凄いですね。科学雑誌がスーパーとか空港の売店で必ず売られていますから。日本ではまず見ない光景ですよ。それくらい科学が市民に浸透しています。
フランスでも、駅のキオスクとか、スーパーに科学雑誌が並んでます。これが日本だと、ある程度の大きさの書店でないと科学雑誌は見ないですからね。日本に比べると人々の科学に対する関心は高いんじゃないでしょうか。
森: まあ、前に日経サイエンス、あれはアメリカのサイエンティフィック・アメリカンの翻訳版ですけど、この雑誌の編集者からも聞いた話なんですが......
<本編に続く>
Vol. 38【クマムシ研究日誌: このクマムシ何のクマムシ気になるクマムシ】
豊平川の上にかかるM橋から見つかった、赤褐色のヨチヨチボテボテした可愛いクマムシ。オニクマムシと同様、この種類もコケからたくさん出てくるので、今後の研究対象にすることが可能と思われた。
そこでまず、こいつが一体どの種類のクマムシなのかを知る必要があった。さっそく、クマムシに関する文献やインターネットで調べてみた。
全体のずんぐりした形と模様の特徴から、どうやらこれはツメボソヤマクマムシ属の1種らしいことが分かった。しかし、倍率50倍程度の実体顕微鏡では、種までは判別できない。
ツメボソヤマクマムシ属には20種類ほどの種がいる。「属」とは、「種」のひとつ上のレベルのカテゴリーである。「都道府県」と「市町村」の関係と似ている。例えば「北海道」が「属」、「札幌市」が「種」のような対応関係にある。
そこで、当時北海道大学大学院理学系研究科で博士研究員として在籍していたクマムシ分類の専門家、阿部渉さんのもとを訪ねた......
<続く>
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