『クマムシ研究日誌』読者のみなさまにお願い
先日出版されたフィールドの生物学シリーズ『クマムシ研究日誌』がおかげさまで売れ行き好調のようで、そろそろ重版がかかる気配になってきました。ご購入していただいた読者のみなさまには厚く御礼申し上げます。
そしてたいへん恥ずかしながら、いくつか誤植なども見つかり、ご指摘いただきました。
P.41 5行目 (誤)「コケやなど」→(正)「コケや地衣など」
P.132 11行目 (誤)「ノミーネと」→(正)「ノミネート」
@tmhwqさん、ご指摘いただき有り難うございます。
また、2003年の国際クマムシシンポジウムで鈴木忠さんの発表内容を「オニクマムシの生活史についての研究」と記していましたが、正しくは「オニクマムシの卵形成の電子顕微鏡観察」でした。鈴木さん、申し訳ありませんでした。さらに、クロレラ工業株式会社より、生クロレラV12の系統はChlorella vulgaris ChikugoではなくChlorella vulgaris CK-22であることもご指摘いただきました。お詫びして訂正いたします。
読者のみなさまにおかれましては、本書内に他にも誤植や間違った表記などがありましたら、SNSなどでお知らせいただけますと幸いです。第二刷ではより高い質の本にしますので、どうか皆様のご協力をお願いさせていただきたく思います。
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クマムシ博士の「最強生物」学講座、重版出来御礼。
拙著『クマムシ博士の「最強生物」学講座』にまた重版がかかり、第3刷になりました。
購入していただいた皆様一人ひとりの家庭をまわり、ぎゅっと抱擁してさしあげたい思いでいっぱいですが、日本でこれを実行すると通報されるので控えておきます。もしうっかりやってしまった場合は通報せずに、欧米生活で身についたクセが抜けきらないヤツということで大目に見てください。
最近は『重版出来!』という漫画を読んでいるのですが、これが出版の裏側を描いておりとても面白いです。
この作品を読むと、本の出版にいかに多くの人々がかかわっているかを認識させられます。読者の皆様はもとより、拙著の制作、流通、販売にご協力いただいているすべての皆様に感謝申し上げます。
フィールドの生物学シリーズ『クマムシ研究日誌』もそろそろ重版がかかりそうです。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
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ナショジオ『クマムシ観察絵日記』二十一話〜三十話
ナショジオで隔週にて連載中の『クマムシ観察絵日記』、三十話まで掲載されました。
クマムシ観察絵日記: ナショナルジオグラフィック日本版公式サイト
連載回数を重ねるごとに人気も上昇しているようで、著者冥利につきます。ここでは三十話までをダイジェストで紹介。
第21回 クマムシ界の猛獣をてなずける
オニクマムシ飼育の基本。
第22回 クマムシのすべらない話
クマムシの滑り止めをつくる。
第23回 モヤモヤ・ベアーズ
モヤモヤには困ったもの。
第24回 クマムシのエサをひきはがす
ヒルガタワムシを回収するのも一苦労。
第25回 モグモグ・ベアーズ
モグモグ。
第26回 おちょぼ口のミニハンター
子どもも獰猛。
第27回 母さんが残したシェルター
母の愛。
第28回 シェルター・ベイビー
目指せ、ワンダー・ホール。
第29回 悪夢
近づく限界。
第30回 クマムシ VS. 線虫
初めて見た光景。
以上、第三十話まで。連載はまだしばらく続くので、どうぞよろしくお願いします。
あ、クマムシ研究日誌のほうもよろしくどうぞ。
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TOKYO FMラジオ「クロノス」に収録出演しました
告知を忘れていましたが、6月24日(水)、TOKYO FMラジオ「クロノス」に収録出演しました。
収録スタジオにて、DJの中西哲生さんに抱っこされるクマムシさん(現在はプレゼント募集は終了しています)。
今朝は「クマムシ」のキャラクター“クマムシさん”のぬいぐるみの一番大きい物を1名の方にプレゼント! 「クマムシさん希望」と明記の上、住所・氏名・ご連絡先を忘れずに書いてクロノスのメールフォームよりご応募ください! #chronos pic.twitter.com/teMqdh8t7p
— 中西哲生のクロノス (@chronos2010) 2015, 6月 23
中西さん、Jリーグ創設期に名古屋グランパスで活躍していた時代の印象が強いのですが、今はラジオの仕事もしていたのですね。クマムシさんと中西さんが一緒に写真におさまっているのを見るのは、なんだか不思議な気分です。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」297号「国際クマムシシンポジウムが始まります」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 297【国際クマムシシンポジウムが始まります】
2015年6月21日発行
目次
【1. はじめに】国際クマムシシンポジウム
三年に一度開催される国際クマムシシンポジウムに出発してきます。
【2. むしQ&A「子どもを産まない理由」】
子どもを産まない理由、メルマガ読者さんの生の声を紹介。
【3. おわりに「イメチェン・クマムシさん」】
クマムシさんの新しい姿が完成に近づきつつあります。今後、このイメチェンした新しい姿でクマムシさんの活動範囲が広がりそうです。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
おばあちゃんのクマムシポエム
先日、千葉県立中央博物館でのクマムシ観察会のあと、ひとりの女性が僕のところにやってきました。今年の4月に掲載された毎日新聞のクマムシ記事に触発されてクマムシに興味をもち、クマムシを題材にした詩を書いたというのです。参照されたクマムシ記事はこちらですね。
クマムシ:地球最強の多細胞生物 その生態と耐性の秘密:毎日新聞
この女性、御歳85歳とのことでしたが、実際の年齢よりも十歳くらい若くみえるたいへん快活な方でした。今回の観察会には他に82歳の男性も参加しており、クマムシが文字通り老若男女のハートに響いていることを実感しました。
それでは、こちらの女性が書いた詩を許可を得た上でここに転載します。
「クマムシ」
新聞の頁をめくって
なぞなぞ科学で知ったクマムシ君
一ミリにも見たない小さな体で君達は
ヒマラヤ山中から百五十メートル余りの海底にも臆せず
百度で六時間の熱から放射線にも平気
液体ヘリウムによる、マイナス二六九度にも耐え
真空のカプセルから取り出して、水を与えたら
見事に蘇生した。
その上、百二十年前のコケを水に浸したら
這い出したという生命力
君達は何者・・・・?
どうしてそこまで生にこだわるのですか
クマムシに問うたところで
返事が返ってくるはずもないけれど--
飛びつきたくなる不老長寿の生き神様
ひれ伏してもいい
その不思議な力を私達にも--
まって下さい、自然をこわしたり、争ったり
この星を根こそぎ自分達のものに
しようとするあなた方に
その資格があるでしょうか
今に、
言葉を持たない者達の
声なき声が、湧きあがるでしょう
この星が、宇宙から
吐き出されるかもしれないのに・・・・・・そうきっと
その声は、まさか、クマムシ君--
SFの原作になりそうな壮大な世界観ですね。クマムシのフォースを手に入れようとした人間にクマムシやその他の生物が怒り狂い大地を揺らす。地軸が歪んで地球の環境が激変、そこで人類がとった手段は・・・。「風の谷のナウシカ」、「スターウォーズ」、「インターステラー」が混ざりあった世界を想起させます。自分が85歳まで生きられたとして、その歳になってここまでのイマジネーションを発揮できるかどうか。まったく自信がない。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」296号「水の中の小さなクマをさがす」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 296【水の中の小さなクマをさがす】
2015年6月14日発行
目次
【1. はじめに】HONZ
おすすめ本レビューサイトHONZでレビュワーをすることになりました。
【2. むしコラム「水の中の小さなクマをさがす」】
池の中にクマムシがいるのは事実。しかし、池や川のように恒常的に水があるような水域からクマムシを見つけるのは、ひじょうに難しい。水辺のクマムシを探しにフィールドワークを行なったようすを紹介。
【3. おわりに「おばあちゃんのクマムシポエム」】
クマムシ観察会が終わったあと、ひとりの女性が僕のところにやってきました。今年の4月に掲載された毎日新聞のクマムシ記事に触発されてクマムシに興味をもち、クマムシを題材にした詩を書いたというのです。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
クマムシバーを一日限定オープンします
月に吠える通信より
ゴールデン街のバー「月に吠える」で一日店長をすることになりました。場所は「月に吠える」というプチ文壇バーです。
日時:7月4日(土)19〜24時頃(予約不要)
料金:チャージ500円、ドリンク700円〜
会場:プチ文壇バー「月に吠える」
東京都新宿区歌舞伎町1-1-10 新宿ゴールデン街G2通り
http://bar.moonbark.net/
大人の方々のご来店をお待ちしています。クマムシにちなんだドリンクなどが出るかもしれません。どれくらいお客さんが来てくれるかは未知数ですが、もし混雑してくるようであればゆずりあっていただければと思います。
この「月に吠える」の店主コエヌマカズユキさんは、文学を盛り上げるためにこのバーを開いたのだとか。運営しているサイトも、バーのサイトとは思えないほど充実しています。こちらでも、ライターのマナ・コノさんを交えてインタビューしてもらいました。
【前編】宇宙空間でも生きる? 地上最強の生物を愛した男:月に吠える通信
こちらのお店は文壇バーと銘打っていますが敷居は低いので、びくびくせずにいらっしゃっていただければ幸いです。もちろん、女ポケモンや男ポケモンをお持ちの方は、連れてきていただいてかまいません。(何のことか分からない方は「ポケモン 文壇バー」でググってみましょう)
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」298号「第13回国際クマムシ学会を終えて」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 298【第13回国際クマムシ学会を終えて】
2015年6月29日発行
目次
【1. はじめに】第13回国際クマムシ学会を終えて
先週はイタリア・モデナで開催された国際クマムシ学会に参加していました。三年に一度開催される本学会は、過去三回の参加者がいずれも70人台で頭打ちとなっていましたが、今回は一気に100人の大台に乗りました。今回の国際クマムシ学会のときにも日本人研究者のあいだで日本版クマムシ学会を開こうか、という話合いをしていました。もしかしたら、あと半年後くらいに国内のクマムシ学会を一般公開で開催するかもしれません。やるからには500人くらいの聴衆を集めたい。実現しそうなころにまた連絡しますので、どうぞお楽しみに。
【2. むしQ&A「ヤマトシジミと放射線、議論ふたたび」】
ここ最近、チョウの一種ヤマトシジミを検索して僕のブログを訪れる人がまた増えてきました。僕はこのような疑問をブログやこのメルマガに書いてきましたが、2013年になってこのような疑問に対する反論を含んだ論文が、出版されていました。
【3. おわりに「クマムシバー・イン・ゴールデン街開催決定」】
嘘から出た誠のような話ですが、ゴールデン街のバーで一日店長をすることになりました。場所は「月に吠える」というプチ文壇バーです。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
【書評】『持たない幸福論』現代の教祖の有り難い説法
個人的に大好きなニート界のカリスマことphaさんの新著が出た。
持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない
私はだいぶ前からphaさんが好きで、彼のブログもたびたびチェックしているのですが、今回の本はphaさんの哲学の集大成というか、つい周りの目を気にして働きすぎたりプレッシャーを感じてしまう人が読むと肩の力がうまく抜けるような内容になっています。
ただ、よく言われる「心身が健康なのにあえて働かず税金を納めないニートは社会のインフラにただ乗りしているフリーライダーだ」という指摘に対しては、phaさんは本書で回答していませんでした。このあたり、phaさんがどう考えているのかがとても気になっているのですよね。私自身はニートがいても寛容であればよいと思いますが、やっぱりみんながニートになってしまったら社会インフラもできないわけで、便利じゃなくなるよね、と。たまたま同じ国や地域に生まれた者たちが法の下に協調しつつ労働や納税を義務づけられるのもどうなんだ、という話にもなるのだが。まあ、日本がいきなり分断されることはないだろうけど、経済格差によって住む地域がだいぶ分断されていくのではないでしょうか。あとは一定以上の規模の事業をするひとたちがシンガポールにどんどん出て行ったり。
念のために言っておくと、phaさんについては、たとえ税金を一円も納めてなくても、ぼくは何の問題もないと思っています。彼のようなアイディアは多くの人が耳を傾けるだけの価値があると思うし、意見を発信するだけで文化的な資産を世の中に残していると思うからです。まあ、教祖様のような存在ですかね。職もないし働いてないけれど、有り難いことを言ってくれるから、お布施をあげてもいいや、と思わせるタイプ。実際にこの本も面白い。こういう人は貴重なので、むしろみんなで支えていくべきだ。
ということで、本書は広大な宇宙となり、自分が抱えている問題意識を相対的にミクロ化する効能がある。「自分が周りにどう思われるか」をついつい気にしちゃうタイプの人にとくにお薦めである。
【関連記事】
クマムシ日記はじめました
ちょっと前から慶應大クマムシ研究グループでクマムシ日記をつけはじめています。
私だけではなく、荒川さん、クマムシ王子、飼育係Aさんたちが、クマムシの生態やその他の豆知識をわかりやすく紹介しています。基本的に毎週更新されるので、よかったらこちらもフォローのほうをお願いします。他のサイトではなかなか見られないクマムシ動画も公開しています。たとえば下の記事では、脱皮殻の中に産卵したドゥジャルダンヤマクマムシが、殻を脱いで出て行く動画を見ることができます。
画像や動画はスーパーハイクオリティな実体顕微鏡につないで撮影されているのですが、なかなかきれいにクマムシを映すことができます。クマムシの画像がたまったら、クマムシ写真集を出してもよいかも。
ということで、こちらのクマムシ日記でクマムシの日常をぜひお楽しみください。
千葉県立中央博物館でクマムシ講演&観察会
6月14日(日)に千葉県立中央博物館でクマムシ講演&観察会を開催します。
13:00 から14:15までがクマムシ講義、14:30から16:00までがクマムシ観察会となっています。場所は千葉県立中央博物館の講堂/1階ホール。 当日申込先着150名(小学生以上)で参加費無料。近くの方は来てみてくださいね。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」295号「思考力を必要としなくなる時代に向けて」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 295【思考力を必要としなくなる時代に向けて】
2015年6月7日発行
目次
【1. はじめに】韓国旅行に行くなら
韓国で64人がMERSコロナウィルスに感染し、そのうち5人の死亡が確認された。韓国旅行を取りやめた観光客も多い。このウィルスに感染するリスクを考察。
【2. むしコラム「思考力を必要としなくなる時代に向けて」】
今は我々の思考力を使う機会がことごとく奪われている。確かにひとつひとつの情報を吟味していたらきりがない。しかしそれでも、考えることを放棄してはいけないと思う。
【3. おわりに「ゴールデン街から」】
ゴールデン街でクマムシ博士が何かするかもしれません。それは・・・
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
ベジタリアン・チーズに見る、バイオテクノロジーが道徳心を刺激する時代の幕開け。
Photos courtesy of Biocurious
バイオテクノロジーが医療や食料生産に応用されるようになって久しい。遺伝子操作により、ヒトのホルモンを効率よく分泌する大腸菌が作られ、害虫に負けない農作物などが作られてきた。ただ、「人工」や「遺伝子組換」という単語に拒絶反応を示すナチュラル志向派も多い。科学技術の発展にともないたびたび起きてきた公害や薬害に対する印象から、あえて先端医療や遺伝子組換食品を避け、自然療法やオーガニック食材を好む層も一定数存在する。
最近のバイオテクノロジーは、そんなナチュラル志向だったり、道徳心の高い人々をターゲットに利用されるようになってきた。その顕著な例が、遺伝子改変酵母を用いて人工チーズを作ろうとする「ベジタリアン・チーズ」プロジェクトだろう。
このプロジェクトはカリフォルニアのベイエリアにあるバイオハッカースペースのCounter Culture LabsとBiocuriousによって進められている。かれらは2014年6月にクラウドファンディングサイト「Indeegogo」で資金を募り、700人近くの支援者から3万7千USドルを集めた。
実は私もこのプロジェクトに支援していたりする。
このプロジェクトでは、酵母にウシのミルクの成分となるカゼインなどのタンパク質をコードする遺伝子を組み込んで、これらのタンパク質を生産しようと計画している。ベジタリアンの人のなかには、劣悪な飼育環におかれている家畜が生産したミルクから作られるチーズを食べたくない人もいるし、家畜を育てるために起こる環境破壊に対してネガティブな感情をもつ人もいる。もしもウシを使わずに人工的にチーズをつくることができれば、この懸念はなくなる。
酵母に入れる遺伝子はウシに由来するので、酵母からできるチーズもウシのミルクからできるそれと同一である。さらに酵母自体は遺伝子組換え生物だが、このチーズは酵母が作ったタンパク質だけが含まれるのでDNAフリーである。つまり、このベジタリアン・チーズ自体は遺伝子組換え食品にあたらない。遺伝子組換え食品嫌いの人も気にしなくてよいというわけだ。
もしもこのベジタリアン・チーズが生産可能になったとすれば、たとえこれが従来のチーズより高い値段であったとしても、ベジタリアンや、上述のような意識をもつ人たちがすすんで購入するはずだ。なにせ、大気汚染を懸念して、かなり割高な電気自動車を使用する人だっているくらいなのだから。もちろん、電気自動車もベジタリアン・チーズも、従来の自動車やチーズよりもコストダウンしていく可能性もじゅうぶんにあるが。
人工物や遺伝子組換えに拒否反応を示す人々を、遺伝子組換え技術でなだめる、という構図もなんだかおかしいように見えるが、バイオテクノロジーも単なる効率向上のみでなく、人々の道徳心を刺激して市場を拡大する方向にどんどんと使われ始めていくのではないだろうか。
【関連書籍】
【関連記事】
よいインターネット
『クマムシ研究日誌』がようやく発売開始になりました。全国の大型書店の理工書コーナーに並んでいます。上の写真はジュンク堂書店藤沢店のもよう。『クマムシ博士の「最強生物」学講座』と一緒に並べてもらって嬉しい。
さっそく『クマムシ研究日誌』が書評サイト「HONZ」で紹介してもらいました。
『クマムシ研究日誌』研究で培われた、生きるための力 - HONZ
本書から伺える堀川氏の一連の考え方や行動力は、まさに起業家精神(アントレプレナーシップ)に基づいている。虫好きの人はもちろん、生き物にあまり興味がない人であったとしても、試行錯誤する堀川氏の研究哲学に接することで、何かしら示唆を得るところがあるはずだ。
レビュワーは研究系クラウドファンディングサイト「academist」代表の柴藤亮介さん。academistの取り組みについては、このブログでも以前紹介しました。
柴藤さんとはそこまでの面識はないのですが、両方とも何かしらの活動をしていると、こういう形でお互いにお互いを評価するようになったりして、よいインターネットをしていると実感しますね。いずれacademistにお世話になることもあるかもしれないし、そのときはどうぞよろしくお願いします。
みなさまにおかれましても『クマムシ研究日誌』を読了の際にはブログやSNS、はたまたアマゾンなどに感想を残していただけますと幸いです。クマムシ博士はとても喜びます。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」294号「自分で考えて判断することの難しさ」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 294【自分で考えて判断することの難しさ】
2015年5月31日発行
目次
【1. はじめに】クマムシ研究日誌発売開始
『クマムシ研究日誌』が発売開始。週末はクマムシや地球外生命体についてのイベントにも行ってきました。
【2. むしコラム「自分で考えて判断することの難しさ」】
人間は常に無数の情報を取り入れて適切な判断をしていかなくてはならない。自分で考えて判断するのは面倒なので、多くの人が判断基準を安易に他人に委ねてしまう。
【3. おわりに「親子出版」】
母親も本を出版しました。そのタイトルは・・・。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
ネイキッドロフトでトークイベント
6月3日(水)に久しぶりにトークイベントに登壇します。場所は、新大久保近くのネイキッドロフト。お笑い芸人のザ・ギースの尾関高文さんと、同じくお笑い芸人のキングオブコメディの高橋健一さんが主宰するイベントにゲストとして参加します。チケットは前売で1600円、当日で2000円。
ギース尾関・キングオブコメディ高橋のいろいろ教えてもらえませんか13
OPEN 18:30 / START 19:30
予約¥1600/当日¥2000(共に飲食別)
※ネイキッドロフトweb予約にて4/16、16時半~受付致します。
※ご入場は予約番号順になります。【出演】尾関高文(THE GEESE)/高橋健一(キングオブコメディ)
当日はひたすらクマムシについて話すと思います。たぶん。参加予約はこちらのフォームからどうぞ。
もしかしたら当日は私のほかにもゲストが来るかもしれません。このイベントの前の回には高井研氏が来ていたようなので、今回は高井氏は来ないはず。ほっとします。ということで、お時間があればどうぞ遊びに来てくださいね。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」293号「ゲノム編集技術で細菌を感じやすくさせる」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 293【ゲノム編集技術で細菌を感じやすくさせる】
2015年5月24日発行
目次
【1. はじめに】ロボットクラウドバイオロジー研究所が実現か
2013年の分子生物学会イベント「2050年シンポジウム」で優勝した谷内江望さんのロボットクラウドバイオロジー研究所のコンセプトによく似たサービスがアメリカでローンチされました。その中身は一体。
【2. むしコラム「ゲノム編集技術で細菌を感じやすくさせる」】
ここのところぐいぐいとキているゲノム編集技術。今回はゲノム編集技術を薬剤耐性菌を攻撃する目的に使った例を紹介。
【3. おわりに「ゾマホンさん」】
ベナン共和国出身のゾマホンさんの活動について。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
『クマムシ研究日誌』発売開始
フィールドの生物学シリーズ『クマムシ研究日誌』が製本されて送られてきました。四苦八苦しながら書いたものがこうして本というフォーマットとなって届くと、やはり嬉しいものですね。
本書が書店に並ぶのは早くて今週末、遅くても来週の頭になる見込みです。ちょっと小さい書店だと置かれないかもしれません。近くに大型書店がない場合は、アマゾンなどでお求めすれば確実でしょう。アマゾンからの注文はこちらからどうぞ。
このフィールドの生物学シリーズは表紙のデザインがすべて同じだったのですが、今回の『クマムシ研究日誌』では特別に少しデザインが変わっています。微妙な違いなので、同シリーズの他の書籍と見比べてみてください。
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【書評】『テングザル―河と生きるサル』ボルネオの思い出
テングザル―河と生きるサル:松田 一希著 (フィールドの生物学7)
著者の松田一希氏は僕とは北海道大学大学院時代の同じ研究室の出身で、しかも同級生。松田氏は現在、京都大学で特定助教をしている。拙著『クマムシ研究日誌』は、彼が僕のことを東海大学出版会の編集者田志口さんにプッシュしてくれたことで、企画が持ち上がった。
余談だが、彼はイケメンでおしゃれさんでもあるので、女性向けファッション誌『VERY』が開催したイケダン(イケてるダンナ)コンテストでも400人の中からベスト6まで勝ち進んだ経歴ももつ。2016年には情熱大陸にも出演。
松田氏は博士課程に進学後、テングザルの生態学研究をスタートさせた。霊長類のような大型哺乳類の生態調査は根気もいるし、データを集めるのもなかなか難しい。データをとりにくい研究なので、博士号をとるのも必然的に困難となる。非常にリスキーな研究テーマを選んでいるわけだが、裏を返せば、そこまでしてでも、彼はテングザルを追いかけたかった、ということだ。
テングザルはボルネオ島の河畔林に棲む。オスは天狗のような鼻をもつために、このような名前が付けられている。夜から朝方にかけては川辺ですごし、昼は森の中に入っていく。つまり、テングザルを追跡するには川上をボートで移動しながら観察するだけでなく、森の中に入っていくことも必要になる。きわめてタフな調査が要求されるが、そこは研究室のボスである東正剛教授の「パワー・エコロジー」の教えに従い、松田氏は突き進んでいた。
このようなパワー・エコロジーの実践により、彼はテングザルの詳細な行動パターンや食性を明らかにするだけでなく、霊長類で初めての記録となるテングザルの反芻行動を発見した。今や押しも押されもせぬテングザル研究の第一人者となっている。
海外を拠点とした生態学研究でたいせつなことは、実は野生生物と向き合う忍耐力だけではない。地元の住民たちといかに仲良くやっていけるかも、非常に大きな鍵となる。松田氏は流暢なマレーシア語を喋るが、これはすべて現地のマレーシア人とコミュニケーションをとりながら徐々に覚えていったのだそうだ。あくまでも対等な立場として、しかし時には舐められないように、うまく接してゆく。円滑な研究活動の遂行は、このようなコミュニケーション能力にも依存するのである。
さて、実は僕も5年ほど前に松田氏がテングザル調査をしているマレーシアのスカウ村を訪ねたことがある。スカウ村は本当に素朴な村で、そこにいた子ども達の目がとても澄んでいたことが印象に残っている。不注意に川の中に入って釣りをしていて、ワニに食べられてしまう人もいる。野外でランチを食べていると羽アリが多数ごはんに落ちてきて、注意していても食物がアリごと口の中に入ってしまう。そんな、ワイルドな場所だ。
乗り合いの車でサンダカンからスカウ村へ
スカウ村のようす
スカウ村を流れる川
スカウ川の上をボートですいすいと進むと、熱帯林特有の甘い匂いがした。
ボート上の松田氏(右)とマレーシア人の助手さん(左)
カワセミ
テングザルじゃないサルたち
ほどなくして運良く、僕らは川沿いの木々にたたずむテングザルを見つけることができた。
木の上で休むテングザル
テングザルは思ったよりも落ち着いていて、あまりアクションがない。まあ、大型哺乳類はどれもだいたいそんなものなのだろう。
さらに幸運なことに、テングザルだけではなく、野生のボルネオゾウまで発見。
ボルネオゾウ
ボルネオゾウにかなり近づくことができた。ただし、あまり近づきすぎると攻撃してくるので、一定の間合いをとらなければ危険だという。
そして、生きものとの遭遇はこれだけでは終わらなかった。野生のオランウータンまで見ることができたのだ。
オランウータン
「ウォッォッォッォッ!」
吠えたのはオランウータンではなかった。松田氏だ。なんと、彼はオランウータンとコミュニケーションをとり始めたのだ。マレー語だけでなく、オランウータン語も堪能に操れるというわけだ。
いつの間にかこのコラムが僕のボルネオ探訪紀となってしまったが、とにかく本書はテングザルの生態だけでなく、ボルネオ情緒を知るにもうってつけの良書である。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」292号「南極クマムシツアー」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 292【南極クマムシツアー】
2015年5月17日発行
目次
【0. はじめに】もうすぐイタリア
来月下旬は三年に一度の国際クマムシシンポジウムがイタリアのモデナで開催されます。イタリアは伝統的にクマムシ研究が盛んで、今もモデナ大学のグループが幅広いトピックでクマムシ研究を精力的に進めています。イタリア料理も楽しみ。
【1. むしコラム「南極クマムシツアー」】
南極のクマムシについては1世紀以上にわたって調査されている。南極クマムシ研究の実態をレポート。
【2. 今週の一冊『テングザルー河と生きるサル』】
ボルネオでテングザルの研究に没頭した男の研究の記録。
【3. おわりに「新宿ゴールデン街ツアー」】
新宿ゴールデン街をはじめてめぐってきました。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
クマムシさんのLINEスタンプをつくってみた
今月のはじめに、クマムシさんのLINEスタンプがリリースされました。イラストはイラストレーターの阪本かもさんに描いていただきました。
すでに多くの方に使っていただき、毎日1000個のクマムシさんスタンプが送信されています。ダウンロードしていただいたみなさま、有り難うございます。
今回のクマムシさんスタンプはLINEでの審査が3ヵ月以上かかりました。投稿論文のそれと同じくらいの期間ですね。でも、リジェクトもされずリバイズの要求もされず、一発アクセプトだったのでよかったです。中には審査に9ヵ月間かかったものもあったらしいし。
言い換えればそれだけLINEに申請されてくるスタンプが多いわけで。それを物語るデータがあります。LINEスタンプ検索で「クマムシ」と入れると、芸人クマムシのスタンプの他に本物のクマムシをモチーフにしたクマムシを含むスタンプがいくつかヒットします。
「ミジンコ」のスタンプも30個以上ありますね。こういうニッチなスタンプですら、これだけの数がある。クマムシさんのスタンプも、この無数のスタンプの渦の中に埋もれそう。
今回は阪本かもさんにイラストを描いてもらったのですが、ちょっと時間が作れたら自分でも何か作ってみたいですね。「イヤなかんじの博士スタンプ」とか。「進捗どうですか」「Nが足りないね」「その話の新規性はどこ?」などイライラして誰も買わないようなスタンプ。・・・やっぱりやめておこう。
あるスタンプが検索をとおして発見してもらうのは困難です。だけれども、そこそこの規模のコミュニティーであれば、そのコミュニティーの内輪で使い回すようなスタンプを趣味の延長線上で作ってもいいかなと思います。大学のサークルとか学会とか。制作のコストもかからないですしね。
というわけで、こちらのクマムシさんLINEスタンプをどうぞよろしくお願いします。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」291号「ゲノム編集がおこす社会変革(後編)」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 291【ゲノム編集がおこす社会変革(後編)】
2015年5月3日発行
目次
【0. はじめに】近況
先週から屋内に籠る生活を続けているため、この心地よい天気を満喫できずにもやもやしています。
【1. むしコラム「ゲノム編集がおこす社会変革(後編)」】
欲望という名の川がいったんひとつの方向に流れ出せば、止めるのは難しい。ゲノム編集技術は、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれない。
【2. 今週の一冊『クマムシ研究日誌ー地上最強生物に恋してー』】
クマムシにかけた青春。クマムシ博士の研究日誌。
【3. おわりに「クマムシさんLINEスタンプ」】
クマムシさんのLINEスタンプがリリース。巷で好評です。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週