クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

『クマムシ研究日誌』発売開始

f:id:horikawad:20150526225855j:plain


フィールドの生物学シリーズ『クマムシ研究日誌』が製本されて送られてきました。四苦八苦しながら書いたものがこうして本というフォーマットとなって届くと、やはり嬉しいものですね。


本書が書店に並ぶのは早くて今週末、遅くても来週の頭になる見込みです。ちょっと小さい書店だと置かれないかもしれません。近くに大型書店がない場合は、アマゾンなどでお求めすれば確実でしょう。アマゾンからの注文はこちらからどうぞ。


f:id:horikawad:20150526232328j:plain:w300


このフィールドの生物学シリーズは表紙のデザインがすべて同じだったのですが、今回の『クマムシ研究日誌』では特別に少しデザインが変わっています。微妙な違いなので、同シリーズの他の書籍と見比べてみてください。


【関連記事】

クマムシ本『クマムシ研究日誌』を出版します。

【書評】『テングザル―河と生きるサル』ボルネオの思い出

テングザル―河と生きるサル:松田 一希著 (フィールドの生物学7)


著者の松田一希氏は僕とは北海道大学大学院時代の同じ研究室の出身で、しかも同級生。松田氏は現在、京都大学で特定助教をしている。拙著『クマムシ研究日誌』は、彼が僕のことを東海大学出版会の編集者田志口さんにプッシュしてくれたことで、企画が持ち上がった。


余談だが、彼はイケメンでおしゃれさんでもあるので、女性向けファッション誌『VERY』が開催したイケダン(イケてるダンナ)コンテストでも400人の中からベスト6まで勝ち進んだ経歴ももつ。2016年には情熱大陸にも出演


松田氏は博士課程に進学後、テングザルの生態学研究をスタートさせた。霊長類のような大型哺乳類の生態調査は根気もいるし、データを集めるのもなかなか難しい。データをとりにくい研究なので、博士号をとるのも必然的に困難となる。非常にリスキーな研究テーマを選んでいるわけだが、裏を返せば、そこまでしてでも、彼はテングザルを追いかけたかった、ということだ。


テングザルはボルネオ島の河畔林に棲む。オスは天狗のような鼻をもつために、このような名前が付けられている。夜から朝方にかけては川辺ですごし、昼は森の中に入っていく。つまり、テングザルを追跡するには川上をボートで移動しながら観察するだけでなく、森の中に入っていくことも必要になる。きわめてタフな調査が要求されるが、そこは研究室のボスである東正剛教授の「パワー・エコロジー」の教えに従い、松田氏は突き進んでいた。


このようなパワー・エコロジーの実践により、彼はテングザルの詳細な行動パターンや食性を明らかにするだけでなく、霊長類で初めての記録となるテングザルの反芻行動を発見した。今や押しも押されもせぬテングザル研究の第一人者となっている。


海外を拠点とした生態学研究でたいせつなことは、実は野生生物と向き合う忍耐力だけではない。地元の住民たちといかに仲良くやっていけるかも、非常に大きな鍵となる。松田氏は流暢なマレーシア語を喋るが、これはすべて現地のマレーシア人とコミュニケーションをとりながら徐々に覚えていったのだそうだ。あくまでも対等な立場として、しかし時には舐められないように、うまく接してゆく。円滑な研究活動の遂行は、このようなコミュニケーション能力にも依存するのである。


さて、実は僕も5年ほど前に松田氏がテングザル調査をしているマレーシアのスカウ村を訪ねたことがある。スカウ村は本当に素朴な村で、そこにいた子ども達の目がとても澄んでいたことが印象に残っている。不注意に川の中に入って釣りをしていて、ワニに食べられてしまう人もいる。野外でランチを食べていると羽アリが多数ごはんに落ちてきて、注意していても食物がアリごと口の中に入ってしまう。そんな、ワイルドな場所だ。


乗り合いの車でサンダカンからスカウ村へ
f:id:horikawad:20161211221243j:plain


スカウ村のようす
f:id:horikawad:20150522152916j:plain


スカウ村を流れる川
f:id:horikawad:20150522152921j:plain


スカウ川の上をボートですいすいと進むと、熱帯林特有の甘い匂いがした。


ボート上の松田氏(右)とマレーシア人の助手さん(左)
f:id:horikawad:20150522152929j:plain


カワセミ
f:id:horikawad:20161211220557j:plain 


テングザルじゃないサルたち
f:id:horikawad:20161211215851j:plain
f:id:horikawad:20161211221058j:plain


ほどなくして運良く、僕らは川沿いの木々にたたずむテングザルを見つけることができた。


木の上で休むテングザル
f:id:horikawad:20161211220908j:plain
f:id:horikawad:20150522152936j:plain
f:id:horikawad:20161211220359j:plain


テングザルは思ったよりも落ち着いていて、あまりアクションがない。まあ、大型哺乳類はどれもだいたいそんなものなのだろう。


さらに幸運なことに、テングザルだけではなく、野生のボルネオゾウまで発見。


ボルネオゾウ
f:id:horikawad:20150522152944j:plain


ボルネオゾウにかなり近づくことができた。ただし、あまり近づきすぎると攻撃してくるので、一定の間合いをとらなければ危険だという。


そして、生きものとの遭遇はこれだけでは終わらなかった。野生のオランウータンまで見ることができたのだ。


オランウータン
f:id:horikawad:20150522152957j:plain


「ウォッォッォッォッ!」


吠えたのはオランウータンではなかった。松田氏だ。なんと、彼はオランウータンとコミュニケーションをとり始めたのだ。マレー語だけでなく、オランウータン語も堪能に操れるというわけだ。


いつの間にかこのコラムが僕のボルネオ探訪紀となってしまったが、とにかく本書はテングザルの生態だけでなく、ボルネオ情緒を知るにもうってつけの良書である。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」292号「南極クマムシツアー」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 292【南極クマムシツアー】

2015年5月17日発行
目次

【0. はじめに】もうすぐイタリア

来月下旬は三年に一度の国際クマムシシンポジウムがイタリアのモデナで開催されます。イタリアは伝統的にクマムシ研究が盛んで、今もモデナ大学のグループが幅広いトピックでクマムシ研究を精力的に進めています。イタリア料理も楽しみ。

【1. むしコラム「南極クマムシツアー」】
南極のクマムシについては1世紀以上にわたって調査されている。南極クマムシ研究の実態をレポート。

【2. 今週の一冊『テングザルー河と生きるサル』】
ボルネオでテングザルの研究に没頭した男の研究の記録。

【3. おわりに「新宿ゴールデン街ツアー」】
新宿ゴールデン街をはじめてめぐってきました。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

クマムシさんのLINEスタンプをつくってみた

今月のはじめに、クマムシさんのLINEスタンプがリリースされました。イラストはイラストレーターの阪本かもさんに描いていただきました。


クマムシさんスタンプ:LINEストア

f:id:horikawad:20150522150314j:plain


すでに多くの方に使っていただき、毎日1000個のクマムシさんスタンプが送信されています。ダウンロードしていただいたみなさま、有り難うございます。


今回のクマムシさんスタンプはLINEでの審査が3ヵ月以上かかりました。投稿論文のそれと同じくらいの期間ですね。でも、リジェクトもされずリバイズの要求もされず、一発アクセプトだったのでよかったです。中には審査に9ヵ月間かかったものもあったらしいし。


言い換えればそれだけLINEに申請されてくるスタンプが多いわけで。それを物語るデータがあります。LINEスタンプ検索で「クマムシ」と入れると、芸人クマムシのスタンプの他に本物のクマムシをモチーフにしたクマムシを含むスタンプがいくつかヒットします。


「ミジンコ」のスタンプも30個以上ありますね。こういうニッチなスタンプですら、これだけの数がある。クマムシさんのスタンプも、この無数のスタンプの渦の中に埋もれそう。


今回は阪本かもさんにイラストを描いてもらったのですが、ちょっと時間が作れたら自分でも何か作ってみたいですね。「イヤなかんじの博士スタンプ」とか。「進捗どうですか」「Nが足りないね」「その話の新規性はどこ?」などイライラして誰も買わないようなスタンプ。・・・やっぱりやめておこう。


あるスタンプが検索をとおして発見してもらうのは困難です。だけれども、そこそこの規模のコミュニティーであれば、そのコミュニティーの内輪で使い回すようなスタンプを趣味の延長線上で作ってもいいかなと思います。大学のサークルとか学会とか。制作のコストもかからないですしね。


というわけで、こちらのクマムシさんLINEスタンプをどうぞよろしくお願いします。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」291号「ゲノム編集がおこす社会変革(後編)」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 291【ゲノム編集がおこす社会変革(後編)】

2015年5月3日発行
目次

【0. はじめに】近況

先週から屋内に籠る生活を続けているため、この心地よい天気を満喫できずにもやもやしています。

【1. むしコラム「ゲノム編集がおこす社会変革(後編)」】
欲望という名の川がいったんひとつの方向に流れ出せば、止めるのは難しい。ゲノム編集技術は、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれない。

【2. 今週の一冊『クマムシ研究日誌ー地上最強生物に恋してー』】
クマムシにかけた青春。クマムシ博士の研究日誌。

【3. おわりに「クマムシさんLINEスタンプ」】
クマムシさんのLINEスタンプがリリース。巷で好評です。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

クマムシ本『クマムシ研究日誌』を出版します。

5月下旬にクマムシ本が出ます。タイトルは『クマムシ研究日誌』。メルマガ「むしマガ」で連載していた同タイトルの原稿をベースにまとめたものです。すでにAmazonで予約受付を開始しています。


クマムシ研究日誌: 地上最強生物に恋して


前作のクマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたちーではクマムシの話が全体の3分の1ほどだったのに対し、『クマムシ研究日誌』は一冊まるごとクマムシの話。私がクマムシに出逢ってからこれまでの研究人生を時系列で追いつつ、初心者からマニア向けのクマムシ教養をつめこみました。


『クマムシ研究日誌』は怪作ぞろいの『フィールドの生物学シリーズ』の第15弾目として東海大学出版会から出版されます。このシリーズでの出版ということで、執筆中もプレッシャーがありましたが、なんとか出版までこぎ着けられてほっとしています。『クマムシ研究日誌』の目次は以下のとおり。

クマムシ研究日誌 
ー地上最強生物に恋してー


目次


はじめに

第1章 クマムシに出会うまで


型破り教授
クマムシとの出会い
クマムシとの遭遇
カーブのすっぽ抜けが真ん中やや高めに甘く入ってきた
【コラム】 クマムシとは
クマムシの圧力耐性
変な優越感
クマムシの酒
着手
クマムシを誰かにやらせようと思っていた
卒業研究

第2章 クマムシに没頭した青春の日々


パワーエコロジー
背中に深く突き刺さるナイフのような視線
運命のクマムシ
このクマムシ何のクマムシ気になるクマムシ
手なづけられたフェレットのように
大学院生としてやっていけるという自信が確信へと変わる夏
消えた学会発表資料
国際クマムシシンポジウム二〇〇三
【コラム】 人生最大のピンチ到来
クマムシと橋本聖子選手における共通点についての考察
ボゴールの奇跡
熱帯育ちの眠り姫たちに待っていた過酷な試練
クマムシを乾かそう
研究人生の転機
新天地
オニクマムシの飼育
オニクマムシの介護
【コラム】つくばライフ
ガンマ線照射施設に立ち入る
イオン線照射施設TIARA
クマムシ地獄
【コラム】つくばの異次元タイ料理店
飼い犬の鼻先をゆっくりと触れるように
岩のような塊となって肩にのしかかる落胆
最有力候補クマムシ
クマムシ・レボリューション
乾燥スケジュール異常なし
横綱級の乾燥耐性
命名「ヨコヅナクマムシ」
【コラム】乾燥耐性メカニズム
【コラム】乾燥すると縮まるクマムシの謎
宇宙生物科学会議とタコス
NASA進出への伏線
クマムシのなかまの発見と二度目の居候
【コラム】真っ白に燃え尽きるのか
クマムシゲノムプロジェクト始動
【コラム】乾眠クマムシの記憶

第3章 クマムシとNASAへ


学振の生殺し
九回の裏ツーアウトからの逆転サヨナラ
【コラム】アカデミアで研究者になるには
【コラム】余剰博士問題について
新天地2
【コラム】アメリカでの宿探し
クマムシ餌問題
【コラム】ジョン(John)
クマムシと宇宙生物学
【コラム】科学啓蒙に大切なこと

第4章 クマムシ研究所設立の夢


おもしろいことができれば、それでよい


あとがき


せっかくなので、フィールドの生物学シリーズの歴代の作品も紹介します。どれも新進気鋭の若手研究者たちが著した、熱い研究記です。


熱帯アジア動物記―フィールド野生動物学入門:松林 尚志著 (フィールドの生物学1)


サイチョウ―熱帯の森にタネをまく巨鳥:北村 俊平著 (フィールドの生物学2)


モグラ―見えないものへの探求心:川田 伸一郎著 (フィールドの生物学3)


虫をとおして森をみる―熱帯雨林の昆虫の多様性:岸本 圭子著 (フィールドの生物学4)


共生細菌の世界―したたかで巧みな宿主操作:成田 聡子著 (フィールドの生物学5)


右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化:細 将貴著 (フィールドの生物学6)


テングザル―河と生きるサル:松田 一希著 (フィールドの生物学7)


アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に:丸山 宗利著 (フィールドの生物学8)


孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生:前野・ウルド・浩太郎著 (フィールドの生物学9)


凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪:椎野 勇太著 (フィールドの生物学10)


野生のオランウータンを追いかけて―マレーシアに生きる世界最大の樹上生活者:金森 朝子著 (フィールドの生物学11)


クマが樹に登ると―クマからはじまる森のつながり:小池 伸介著 (フィールドの生物学12)


イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記:中島 啓裕著 (フィールドの生物学13)


裏山の奇人: 野にたゆたう博物学:小松 貴著 (フィールドの生物学14)


ではでは。


【関連記事】

クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたち

【書評】『毒きのこ-世にもかわいい危険な生きもの』著者らの意図にまんまとはまる

毒きのこ-世にもかわいい危険な生きもの


菌類研究者の白水貴博士(美声)監修の本書は、毒きのこのみに焦点を当てて紹介している。きれいなきのこの写真に、多すぎず少なすぎない説明が付記されており、図鑑として眺めていても楽しい。


きのこは担子菌類のものがおもである。きのこの本体は菌糸で、きのこと指しているあの物体は胞子をつくって飛ばすためにつくられる子実体だ。毒きのこが生成する毒は捕食者から身を守るために発達したものかと思いきや、昆虫はふつうにこれらの毒きのこを食べるらしい。


毒きのこの消化酵素は他の生物では分解できないものを分解し、栄養源として吸収することができる。この強力に発達した消化酵素はヒトの腸の粘膜にダメージを与えて腹痛や下痢を引き起こす。身を守るためというよりは、消化能力を向上させた結果として毒になってしまったともいえる(ただ、毒きのこにはオオワライタケのように中枢神経に作用を及ぼし視覚障害、幻覚、精神錯乱をおこすものもあるので、こちらは上述のよう理由では説明できない)。


本書で紹介されている毒きのこの中でもとくに印象に残ったのが、ドクササコだ。

ドクササコ


食べた数日後、末端紅熱症といって、手足の先や鼻、男性器が腫れ、そこに、焼け火箸を刺されたような激痛が、なんと1か月以上も続きます。別名は、火傷のような痛みから「火傷菌」、その苦しみから「地獄もたし」。地獄のような苦しみで衰弱した例も。その上、有効な治療法はないといいます。


なんて危険で魅惑的な毒きのこだろうか。


毒きのこに統一した特徴はなく、見きわめるのは困難だ。毒性分が不明なきのこすらある。また、食用キノコとして親しまれていたきのこに中毒作用があることがつい最近になって判明した例もけっこうある。


菌類の種数は多く、未記載のきのこも無数にある。当然、まだ未知の毒きのこもたくさんあるという。クマムシ研究者の感覚からすると、きのこのように肉眼で見えるサイズのものは分類がひじょうに進んでいるものだと思っていた。きのこ研究もまだまだ奥が深そうだ。本書をながめていて、きのこを見る目が変わった。著者らの策略にまんまとはまったといったところだろうか。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」290号「ゲノム編集がおこす社会変革(前編)」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 290【ゲノム編集がおこす社会変革(前編)】

2015年4月29日発行
目次

【0. はじめに】ニコニコ超会議2015に行ってきた

2年ぶりのニコニコ超会議参加。非リ充の受け皿としてのニコニコ超会議についての考察。

【1. むしコラム「ゲノム編集がおこす社会変革(前編)」】
ゲノム編集テクノロジーの発展で人類の社会はどう変わっていくのか。今回はノーベル賞受賞が確実視されるゲノム編集テクノロジーのCRISPR/Cas9システムについて解説。

【2. 今週の一冊『毒きのこ-世にもかわいい危険な生きもの』】
かわいいけれど危険な毒きのこ。本書は毒きのこの魅力を巧みに見せる。

【3. おわりに「地球知的外生命体のかたち」】
地球外知的生命体がいたとしたら、それはどんなかたちでどんな文明をもつのか。こんな議論を真面目にしている研究者集団がいる。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

4/29にニコニコ生放送でクマムシ観察会を開催します

f:id:horikawad:20150428120455p:plain


4月29日(水)の18:00から、ニコニコのクマムシチャンネルでクマムシ観察生放送を行ないます。クマムシ博士の解説つき。


クマムシ観察会生放送: クマムシチャンネル


どんなクマムシが出てくるのか、楽しみ。


f:id:horikawad:20141228230720j:plain


さらに同日19:30からは乾眠状態のクマムシに水をかけて復活するか、そのようすを生中継。


【会員限定放送】神秘!クマムシ、乾眠から復活なるか?!: クマムシチャンネル


こちらはクマムシチャンネル会員限定放送。視聴するにはクマムシチャンネルの会員登録をよろしくお願いします。


f:id:horikawad:20150428120636j:plain


乾眠からの復活実験はほぼ100%成功するのですが、こればかりは蓋を開けてみないとわからないので、毎回毎回緊張します。


というわけで、大型連休のスタートはクマムシとともにお過ごしいただければ幸いです。

ABC朝日放送「ワンダーアース」にクマムシが出ます。

2015年4月29日(水)の14:00から4時間放送予定のABC朝日放送「ワンダーアース 地球のチカラ生き物のチカラ」にクマムシが出ます。


ワンダーアース 地球のチカラ生き物のチカラ: ABC朝日放送


私も芸人のミサイルマンと一緒にクマムシを観察したり、ストレス耐性の実験をしました。関西地方にお住まいの方はぜひご覧ください。


4月29日は18:00からと19:30から、ニコニコ生放送のクマムシチャンネルでもクマムシ観察会をします。


horikawad.hatenadiary.com


こちらもお楽しみいただければ幸いです。

共同研究者に「ギブ・ミー・マネー」と言う時代

先週はフランス人の知人一家がこちらに遊びにきました。この知人は、フランスで博士号を取得し、今はアメリカのワシントン大学でテニュアトラック助教をしている知人のアンソニー。そしてアンソニーの妻(台湾人)、子ども、妻のお母さん、そしてアンソニーの弟を加えたご一行が我が家と実家に遊びにきました。


f:id:horikawad:20150416171324j:plain
私の実家の桜に興奮し激写するアンソニー一家


アンソニーの専門はナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合した分野。植物体の中にナノファイバーを張り巡らせて、光合成効率を向上させることを目指しています。フランスからアメリカに移り、現地のトップ大学でテニュアトラック助教に就いているので、アカデミア的にはなかなかのエリートコースを歩んでいる彼。でも、研究環境は恵まれているものの、フランスとアメリカの研究文化の違いへの戸惑いもこぼしていました。


たとえば、同じ大学の中で別の研究室と行なう共同研究。あるデータを取るときに、共同研究先の別の研究室の機器を使わなければならない場合があります。しかしこのとき、共同研究であっても、その別の研究室での機器の使用料を払わなければならないそうです。


共同研究ということは、論文になれば著者陣のなかに共同研究先の研究者も入ることになります。つまり、共同研究者たちに自分のところの機器をどんどん使ってもらいデータを出してくれれば、論文になるし、自分の業績にもプラスになるわけです。ですから、日本でもフランスでも、通常は共同研究者に対して自分の研究室の機器使用料を請求することはありません。


憶測ですが、この機器課金の背景にはアメリカの独特な研究システムの影響があるものと思います。アメリカでは、各研究室は研究資金のほとんどを競争的研究費に依存しています。研究費を獲得できなければ研究員や大学院生を雇うことができず、機器や試薬も購入しづらくなります。それだけでなく、研究室の賃貸料も大学に払うことができなくなります。場合によっては、自らの給料すら払えなくなってしまう。


このようなわけで、機器の使用料など、課金できる機会があれば、共同研究者であろうと躊躇なく「ギブ・ミー・マネー」と言う研究者が出てくるのでしょう。もっとも、私がアメリカにいたときには周りにこのようなタイプの研究者はいなかったので、アンソニーの共同研究者はだいぶマイノリティーだと思いますが。それでも、アメリカ型の研究システムでは、今後このようなタイプの研究者がどんどん増えてきてもおかしくありません。


日本でも、大学の運営交付金を減らして競争的研究資金の獲得を研究者に競わせる方向へと向かっています。日本の研究者もえげつなく「ギブ・ミー・マネー」を連呼する時代がもうすぐ来るのかもしれません。


【追記】



ということで、アメリカでは昔から人によってはそういうタイプがいたようですね。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」289号「日本原理主義フランス人を通して見えたもの」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 289【日本原理主義フランス人を通して見えたもの】

2015年4月19日発行
目次

【0. はじめに】春の綱島温泉大宴会〜バッタ博士を迎えて

f:id:horikawad:20150419165400j:plain:w320

久しぶりにバッタ博士を囲んでの宴会が執り行われました。綱島温泉、昭和情緒にあふれすぎて、そこが都会にあることを忘れそうになるほどでした。バッタ博士やメレ子さんらからのメッセージも掲載。

【1. むしコラム「日本原理主義フランス人を通して見えたもの」】
日本大好きフランス人の知人がやってきた。多様性から目をそらし、メディアなどにより単純化されたイメージを盲目的に信じることのこわさについて考察。

【2. Q&A『もう少し英語が上達したら・・・』】
中学生クマムシ博士からの質問。「○○がもう少し上達したらxxしよう」という考え方はやめておいた方がいいということ。

【3. おわりに「アリマニアの学生」】
アリマニアの慶應生。彼がとった意外な行動とは。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

【書評】『捏造の科学者 STAP細胞事件』科学界に横たわる問題を提起し続ける装置

捏造の科学者 STAP細胞事件:須田桃子


本書は毎日新聞記者の須田桃子氏によるSTAP細胞騒動の記録である。2015年の大宅壮一ノンフィクション賞にも選ばれている。


物語は、須田氏が笹井芳樹氏からのメールを受け取るところから始まる。須田桃子氏によるSTAP細胞騒動の記録である。物語は、須田氏と笹井芳樹氏とのメールのやりとりからはじまる。理研CDBから記者会見の招待を受けた須田氏が笹井氏に問い合わせたところ、笹井氏から会見への参加を強く勧められる。


STAP細胞論文発表の記者会見は、発見内容のインパクトの大きさに加えて、プロモーション要素も大きなものだった。熱狂する世間と科学界。しかし、その直後からSTAP細胞論文に数々の疑義が浮上する。須田氏らはSTAP細胞論文の主要著者である笹井氏、若山照彦氏、丹羽仁史氏、そして理研CDBセンター長の竹市雅俊氏に率直な疑問をぶつける。とくに、笹井氏とのメールのやりとりは分量も多く、生々しさが際立つ。


騒動の争点となった疑義の科学的な解説も秀逸だが、本書を通してもっとも感じるのは研究者たちの人間くささだ。科学や研究の世界では、ある事象に対しては私情を排して客観的かつ批判的に分析することが求められる。本件で責任的立場にあった理研CDBの研究者たちは、この能力がとくに優れていた。だが、どんなに優秀な研究者であっても、立場によっては科学哲学は二の次になりうることが、本件から浮き彫りになった。


STAP細胞論文に重大な疑義が見つかり、追試に成功していないにもかかわらず、細胞作製の詳細なプロトコールを発表したこと。STAP細胞やSTAP細胞から派生したとされる残存試料の解析は後回しにして、細胞作製の検証ばかりを優先したこと。彼らの説明は、科学的な論理が破綻しておいた。もしも彼らが当事者でなければ、このような判断や行動はしなかったことだろう。


本書は騒動の詳細を時系列順に追っており、よくまとまっている。ただし、ひとつ残念なのは、本件に対するネットの関わりについてあまり述べられていないことだ。


著者が大手新聞社の記者であるというポジションを考えれば、マスメディアのアクティビティーばかりに言及するのは仕方ないことかもしれない。しかし、STAP細胞論文や小保方氏の博士論文の疑義を見つけ出したのはネット上の人々であり、マスメディアもそれらの情報を頼りに報道をしていた部分も大きい。マスメディアから出た情報については媒体名を引用しているが、ネット上の情報については媒体名を記載せずに「ネット上」とひとくくりにするのは違和感を覚える。


須田氏自身も間違いなくTwitter上の研究者たちのつぶやきやPubPeer11jigen氏のブログ2ちゃんねる生物板などから情報を得ていたはずだ。本書では本件におけるネット上の各媒体が果たした役割についてあまり触れられておらず、そこには物足りなさを感じる。


とはいえ、STAP細胞騒動を本書ほど包括的に記載した本は他にないのも間違いない。研究分野間での熾烈な競争、保身に走る研究者や組織、世間と専門家との間の見識の乖離。STAP細胞騒動は無数の要因がその背景に存在し、そして、数えきれないほどの課題を残した。STAP細胞騒動を時系列順にまとめた本書は、これらの問題をこの先も提起し続ける装置として機能することだろう。


STAP細胞騒動における疑義や、解析結果の科学的な解説については、日経サイエンス2015年3月号「STAPの全貌」に詳しい。


日経サイエンス2015年3月号「STAPの全貌」


こちらも合わせて読むと、本騒動の核心をより深く理解できる。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」288号「熱気を帯びる地球外生命探査計画」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 288【熱気を帯びる地球外生命探査計画】

2015年4月12日発行
目次

【0. はじめに】クマムシ受容体
世間でクマムシの認知度が上がっている。クマムシ受容体が人々に発現しているのだ。そのため、以前に比べるとクマムシに関する情報がより届きやすくなっている。

【1. むしコラム「熱気を帯びる地球外生命探査計画」】
NASAのチーフサイエンティストが「地球外生命の兆候を10年以内に見つける」と発言。宇宙探査には莫大な資金がかかるため、国民の理解が必要になる。日本でも地球外生命探査を実現するために、研究者たちはあの手この手で資金をつかもうとしている。

【2. 今週の一冊『捏造の科学者 STAP細胞事件』】
毎日新聞記者によるSTAP細胞騒動の記録。本書は、科学界に横たわる問題をこの先も提起し続ける装置として機能することだろう。

【3. おわりに「クマムシチャンネル」】
クマムシチャンネルでは今後、スペシャルゲストたちが続々と登場していく予定だ。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

線虫を食べるクマムシ

youtu.be


先日、線虫を丸呑みしているオニクマムシを発見した。オニクマムシは肉食で、通常はヒルガタワムシなどを飲み込むようにして食べる。だが、線虫を食べることはほとんどない。線虫は飲み込むには大きすぎるので、通常は食べられないからだ。線虫の体の側面から食べることもできない。でも、今回観察されたように、頭か尾ならば、線虫も口に入れることができる。


こういう捕食パターンは初めて見た。最初に見たときは、線虫の長さがこの3倍以上あった。ゆっくりと飲み込むようにして食べていき、この二日後には完全に食べ終わっていた。見慣れているクマムシでも、観察していると今回のような新しい発見もあって面白い。


【関連記事】

ナショジオ『クマムシ観察絵日記』一話〜二十話

クマムシが毎日新聞で取り上げられました

クマムシが2015年4月9日付けの朝刊で取り上げられました。


クマムシ:地球最強の多細胞生物 その生態と耐性の秘密
f:id:horikawad:20150409123239j:plain


最近は芸人のクマムシがブレイクしてクマムシの認知度が上がったせいか、本物のクマムシについて問い合わせをいただく機会が増えた気がします。


f:id:horikawad:20150409124852j:plain


こういう流れでクマムシの認知度が高まるのはよいことだし、一人でも多くの人にクマムシのことについて知ってほしいですね。

ドミトリーともきんす:科学の世界へのなめらかないざない

ドミトリーともきんす


本書は『棒がいっぽん』などで知られる漫画家・高野文子さんの作品。寮母のとも子さんと彼女の娘のきん子ちゃんが住む「ドミトリーともきんす」に、研究者を志す四人の学生が下宿している。これら四人の学生の名は、朝永振一郎、湯川秀樹、牧野富太郎、中谷宇吉郎。ひとことで言って、今までに見たことのない漫画だ。


ドミトリーともきんすという架空空間。そこに日本科学界に大きく貢献をした科学者たちを召還し、とも子さんとの何気ないおしゃべりをとおして彼らの哲学にふれていく。フィクションとノンフィクションが自然と溶けあい、不思議な空気を醸し出している。


おしゃべりの中身は各々の科学者たちの著書がソースになっており、しっかりした出典の説明もある。つまり、この漫画作品はこれら科学者たちの書籍を紹介する『書評本』ともみなせる。科学者の言葉を扱ってはいるが、その中身は極限にまで削ぎ落とされているため、固かったり、重かったりは、感じない。エッセンスと少しの潤滑油から成る会話が、滑らかに流れる。


彼らが活躍した時代に比べると、現代の科学技術はドラスティックに発展したものだ。それでもなお、半世紀前に生きた彼らの言葉は普遍性を帯びているし、いつの時代によんでも示唆に富むものとなっている。本書は、やや難しめな自然科学書に興味があるものの、一歩足を踏み入れるのに躊躇しているような人にとって、うってつけだろう。


ちなみに本書は、高野さんが編集者の田中祥子さんから自然科学書を借りたことがきっかけで生まれたらしい。田中さんはブロガーのメレ山メレ子さんの『ときめき昆虫学』や、微生物原理主義者の高井研氏による『微生物ハンター、深海を行く』を手がけた方でもある。本は著者の個性が肝になるが、このラインナップを見ると、編集者の引き立て方がいかに重要かも再認識させられる。


今後、田中さんがどんな自然科学系の本を手がけていくのかが、楽しみだ。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「クマムシのミトコンドリアをまもれ」の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 287【クマムシのミトコンドリアをまもれ】

2015年4月5日発行
目次

【0. はじめに】エンセラダスのサンプルリターンプロジェクト
土星衛生エンセラダスには液体の内部海が存在し、これがプリュームとなって宇宙空間に吹き出している。このプリュームのサンプルリターン計画がJAXAとJAMSTECにより提案されている。

【1. むしコラム「クマムシのミトコンドリアをまもれ」】
クマムシが乾燥しても生存できる理由。最近になって、クマムシのミトコンドリアに特異的に存在するタンパク質が見つかった。このタンパク質が、乾燥時にミトコンドリアの構造を保っているのかもしれない。

【2. 今週の一冊「『ドミトリーともきんす』:科学の世界への滑らかないざない」】
架空のドミトリーに偉大な科学者四名を召還させた、フィクションとノンフィクションが交差する不思議な科学啓蒙書。

【3. おわりに「灯台下暗し」】
久しぶりに父親と話したが、ニセ医学の言説を信じていたことが明らかに・・・。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ

f:id:horikawad:20150308120846j:plain


私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。


みんな納豆菌を甘く見ない方がいい: むしブロ+

もう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。

納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+


納豆菌は学名をバチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)とよばれる細菌とされている。芽胞とよばれる休眠状態になると、ほぼ不死身ともいえる耐性能力を発揮する。


芽胞状態の納豆菌は100万年以上を生きのび、100ºCで煮沸しても死なず、人間にとって1万シーベルト相当の放射線を照射されても平気だ。


納豆菌が宇宙空間に6年間さらされても生存できることが、NASAによって実証されている。納豆菌のネバネバ物質であるγ-ポリグルタミン酸は、そのほとんどが地球の生物には見られないD型の光学異性体で構成されている。


そう。納豆菌は地球外生命体だったのだ。


納豆菌は地球に飛来したのち、納豆という食べ物に紛れることに成功した。こうして地球人の体内に侵入を開始したのだ。日本は、納豆菌にひどく汚染された、絶望の地と化してしまった。


私がこのような警告を繰り返し行なっても、あいかわらず、世間では納豆や納豆菌がもてはやされている。健康によい、ダイエットにきく、水が浄化される・・・などなどだ。これはマスメディアや政府関係者の中枢の人間すべてが、納豆菌に冒され洗脳されていることを示している。納豆菌の仲間であるLactobacillusは、腸内に潜んで動物の脳に働きかけ、行動を変えることが知られているのだ。


私はこれまで、何度も何度も納豆菌や納豆菌側の人間たちに抹殺されそうになってきた。洗脳されていない知人でも、納豆菌の真実を知ったあとは、私に近づかなくなってしまった。


絶体絶命のなか、私のそのあげる声がかき消されそうになったとき、天から救いの手が差し延べられた。この恐ろしい真実を社会に知らせたいと願う私に共鳴してくれた、命を投げ打つ覚悟をもった出版社である。この出版社は、これまでにも、権力や世論の圧力にも屈しずに、物議をかもす本を何冊も世に送り出してきた。事実、納豆菌の書籍化については、この出版社以外のところからは、すべて断られてしまったのである。


こうして納豆菌の陰謀を書籍化できることになり、命を懸けてきた甲斐があったというものだ。それでは、本書の内容を以下に紹介させていただきたい。


——————

納豆菌の真実(幻党舎刊)


第一章「欺瞞の納豆」

納豆は悪臭を放つだけでなく、その効用も科学的根拠が薄弱だ。それにもかかわらず、マスメディアは「納豆は身体によい」と繰り返す。納豆は、きわめて有害ですらあるのに。納豆消費量が世界一の日本では、がん患者数や自殺者数も諸外国に比較して多い。日本人にみられる不自然な納豆依存の実体に迫る。


第二章「異形生命体:納豆菌」

納豆菌にはほかの生物にはみられない特殊な性質がある。栄養不足になると芽胞とよばれる休眠状態になる。芽胞ではほぼ不死身と言えるほどの耐久力を発揮する。さらに、芽胞に形成されるときにつくられる特殊なタンパク質は地球上のどの生物にもみられない。納豆菌が生産するネバネバ物質の光学異性体比も異様である。納豆菌は、生物の常識から大きく逸脱した、不可解な性質をもった生命体なのだ。


第三章「意志をもった納豆菌」

納豆菌は細菌の一種であることが定説となっている。細菌はひとつの細胞でできている単細胞生物である。ところが、納豆菌はときに互いに集合する。多数の納豆菌たちがネットワークをつくり、あたかも意志をもったひとつの多細胞生命のようにふるまうのである。さらに、納豆菌の仲間は腸内に潜み、脳に作用をおよぼし行動を巧みに変えることも明らかになりつつある。そう。我々は納豆菌の操り人形と化しているのだ。


第四章「納豆菌は地球外生命体だった」

地球上の生物にはみられない生命様式をもつ納豆菌。その正体は、地球外生命体だった。それも、意志をもった地球外知的生命体(SETI)である。納豆菌は隕石様宇宙船によって地球にやってきた。このパンスペルミア型飛来を裏付ける証拠がNASAにより提出されている。納豆菌の飛来の目的とは、いったい何か。


第五章「人類と地球の未来」

人類、そして地球は、納豆菌に滅ぼされてしまうのか。それとも、生き残る術はあるのだろうか。NASAを中心とした納豆菌対策は秘密裏に進んでいるが、強大な敵の前になす術はないように映る。だが、かすかな希望の光がみえてきた。クマムシを活用するのである……。

——————

今後、私が発行するメールマガジン「むしマガ」にて、本書籍のコンテンツを順次配信していく予定だ。出版は、次の冬あたりを予定している。


本書が出版され、国民が納豆菌と納豆の恐ろしさを認知してくれればと、心より願う。


メールマガジン「むしマガ」にはこちらからご登録いただければ幸いだ。月額840円、初月無料である。


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

【書評】『「ニセ医学」に騙されないために』騙されない人も一読の価値あり

今週はNATROM著『ニセ医学に騙されないために』を読みました。本書の著者はネット上で言わずと知れた内科医ブロガー集団のNATROM


「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!


科学的根拠が乏しいにもかかわらず、治療法や健康法として一定の市民権を得ているものが、国内外を問わず多数ある。端的に言えば、これらのニセ医学のほとんどは魅力的な金儲けの手段なので、あの手この手でリテラシーの低い人々を誘引してしまう。ニセ科学は何の効果もないばかりか、ときとして命を奪うものにもなりうる。


本書ではニセ医学をとりいれた治療法や健康法のうち、代表的なものが取り上げられている。それらの治療法や健康法がなぜ効果がないのかを論理的かつ丁寧に指摘しており、この一冊で書店に並ぶトンデモ医学指南書の主張のほとんどを論破できていると言ってよいだろう。簡潔に言うならば、科学的手法に則って有意な効果が示されなければ、それは有効な治療法や健康法とはみなされないということだ。

 
個人的には、本書を読むまでまったく知らなかったニセ医学もあり、そのバリエーションの豊富さに変に感心してしまった。本書はニセ医学を批判しつつさまざまな病態のメカニズムも記述されているので、ちょっとした医学読み物にもなっている。医者が患者の病態に合わせてそのように治療法を選択しているのかなど、医者の思考を垣間見れるのも楽しい。本書はタイトルこそ「ニセ医学に騙されないために」となっているが、このあたりのリテラシーがすでに高い人間が読んでも楽しめる内容になっている。


私は、ニセ医学につかまりやすい人々にこの本を手に取ってくれることを切に願っているが、これは果たしてどうだろうか。なにせ、著者の名前が「NATROM」である。巷では有名な著者だが、著者を知らない人が書店を訪れて本書を手にとり「NATROM著」と書かれているのを見たら、どう思うだろうか。著者は前書きで「著者名よりも内容で判断してくれ」と書いているが、ふつうはかなり怪しいと感じて読む行為にも至らないのではないか。


実名は難しいにしろ、ここは「NATROM」という記号的な名称ではなく、たとえば「伊藤仁也」といったような血の通った人間らしい名前の方がよかった。


せめて多くの病院が本書を購入し、患者待合室に置いてくれることを、願ってやまない。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「研究者の世界と学会と私」】の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 285【研究者の世界と学会と私】

2015年3月22日発行
目次

【0. はじめに】研究室選びのリテラシー
東大が不正論文を作成した三名の博士号を剥奪した。異様な慣習のある研究室に入ってしまうと、研究人生を棒に振るかもしれない。

【1. むしコラム「研究者の世界と学会と私」】
科学研究の世界も人間たちの営みで成り立っている。学会では、研究者は研究成果だけでなく、政治的社会的なステータスでも評価されることがある。

【2. おわりに】
書評:「ニセ医学」に騙されないために。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから

地球外生命体のアジトに潜入

納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。


みんな納豆菌を甘く見ない方がいい

もう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。

納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった


そして今回、さらなる納豆菌の真実に迫るべく、かれらのアジトへの潜入を試みた。さまざまな情報を総合すると、納豆菌のアジトは北関東のI城県某所であることがわかってきた。この某所では、日々、納豆を製造し続けている。納豆を製造するということは、納豆菌を増殖させていることに他ならない。そして、ここでは、一般人に向けて、納豆製造の見学ツアーが堂々と行われているのだ。そこで、納豆菌の陰謀とその実態を探るべく、僕も、このツアーに参加することにした。


このツアーは、「O納豆」という商品を世に出している納豆メーカー「T社」が主催している。このツアーは、納豆工場見学と納豆博物館見学がセットになっている。場所はたいへん辺鄙なところにあり、最寄りのI岡駅からはタクシーで30分以上もかかった。バスで行くことはできない。周囲は山に囲まれており、住宅街からは完全に隔離されている。さすが、地球外生命体のアジトだけのことはある。


納豆工場見学と博物館見学ツアーは1日に3回開催されているようだ。僕が参加したツアーには、他に20人ほどの参加者がいた。思っていたよりも人気だ。いかに多くの日本人が、納豆菌に洗脳されているかがうかがえる。参加者一同はまず、暗い密室に閉じ込められ、納豆に関するビデオを鑑賞させられる。納豆の歴史、納豆の製造法、そして、納豆と納豆菌がいかに素晴らしいか・・・などなど、納豆と納豆菌をひたすらプッシュする洗脳ビデオを流していた。


ビデオでは、研究員が常に新しい納豆菌を探していることも紹介されていた。土壌や河川から新種の納豆菌を単離し、それらで納豆を作った際のねばりや香りを評価し、新規納豆の開発につなげるのだとか。納豆菌に魂を売った科学者たちは、このようにして、日夜を問わず、強力な納豆菌の仲間たちを地球上のあらゆるところから召還していたのである。おそろしい。


次に、工場見学。そこには、おぞましい光景が広がっていた。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」283号「地球外生命体のアジトに潜入」】の一部です。

クマムシ博士のむしマガVol. 283【地球外生命体のアジトに潜入】

2015年3月15日発行
目次

【0. はじめに】スパルタの系譜
スパルタの系譜は軍事国家としての教育方針が定まった時期から続いているのだろう。スパルタの名残は就活マナーににも見て取れる。

【1. むしコラム「地球外生命体のアジトに潜入」全文】
地球外生命体・納豆菌のアジトへ。迫真の潜入ルポ。

【2. おわりに】
沖縄の現在、過去、未来。クマムシの常設展示の可能性などについて。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週

「クマムシ博士のむしマガ」のご購読はこちらから