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クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

【書評】『ときめき昆虫学』元虫好き少年少女がふたたび虫スイッチを押すとき



ときめき昆虫学: メレ山メレ子 著


ニコニコ学会βのむしむし生放送むしマガのインタビューでもたびたびお世話になっている虫大好きブロガー・メレ山メレ子さんの渾身の虫本「ときめき昆虫学」が出版された。私と一緒にクマムシを観察したときの様子も収録されている。

ときめき昆虫学

目次

1 チョウ 美しい翅のお客さん
2 ハチ すべて春の仕業
3 アリ 巣の中と外のドラマ
4 クモ 神秘の網にからめとられた「クモ狂い」たち
5 ホタル 愛され虫の甘い罠
6 タマムシ 女子開運グッズとしてのタマムシに関する一考察
7 ダンゴムシ はじめての虫のお友達
8 トンボ 水辺の恋のから騒ぎ
9 ガ 灯の下の貴婦人
10 セミ 真夏のホラー
11 カイコ 家畜化昆虫との新しい関係とは?
12 ゲンゴロウ 黒光りの誘惑
13 クマムシ 最強生物を商う男
14 バッタ 「バッタ者」はなぜカブくのか
15 コガネムシ 「黄金虫」は金持ちか?
16 カタツムリ おっとり型の生きる知恵
17 コオロギ いさましいちびの音楽家
18 ダニ よちよち歩きのチーズ職人
19 オサムシ 「歩く宝石」の見つけかた
20 ゴキブリ 害虫と書いて戦友(とも)と読む


虫本とは思えない洗練された装丁やデザインは、唐揚げに対するレモンのような効果を発揮しており、読みやすい仕上がりになっている。各章のトビラのグラビアも、目の保養になる。


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本書の内容だが、メレ子さんが体当たりで臨んだ昆虫の野外採集や室内での飼育、はたまたイナゴ捕獲競争などの虫イベントのレポートで構成されている。本書には、著者が初めて触れた虫たちの生き様が瑞々しくも美しい文章で綴られている。本業の昆虫研究者では、このような新鮮味溢れる描写は逆になかなか書きにくいだろう。また、少し不安にさせるような著者の妄想も見どころだ。

グローワームはゆっくり玉すだれをたぐり上げ、獲物をミチミチと捕食するのだ。(中略)そう、表参道や六本木のイルミネーションにまぎれて、寄ってきた人間たちを食い尽すのだ。ミッドタウンがピチャピチャという食事のやさしいざわめきに満たされ、エコでロハスなイルミネーションで街はふたたび輝きを取り戻すだろう・・・・・・人の住むところとは思えない暑さの中で、そんな光景を想像するだけで、なんだかちょっと胸がすっとして涼しくなれるのである。


私の場合、クマムシ以外の昆虫(クマムシは昆虫ではないが)への熱は、中学生以降はやや冷めてしまった部分がある。しかし、本書を読んでいると、小学生の頃に虫と触れ合っていた頃の気持ちが鮮明によみがえってくる。今すぐにでも、雑木林の中に昆虫を見つけにいきたい衝動に駆られる。本書の狙いである「眠れる虫スイッチ」が見事に入った格好だ。元虫好き少年少女は本書を読めば、ほぼ間違いなく全員の虫スイッチがオンになるだろう。


もちろん、最近になって虫に興味をもち始めたライト層も、本書を読めば見事にメレ山教に洗脳されること請け合いである。その意味では、近年稀に見る強力な昆虫啓蒙書といって差し支えない。自分の研究対象や仕事をいかに魅力的に表現するか。研究者もそれ以外の人も、本書から学ぶべきところは多い。


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