クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

NASA会見予想について

NASAの会見発表時間、時差を読み違えて1日勘違いしていました。
最近バタバタしていて、このニュースの優先順位が低くなっていました。
楽しみにこのブログをチェックしていたみなさん、すみません。
あとで発見内容についての解説はアップする予定。

アストロバイオロジーのトークイベント開催

f:id:horikawad:20170324145849j:plain


このブログでもたびたび話題にするアストロバイオロジー。今年はTRAPPIST-1の系外惑星系も話題になりました。はたして、この宇宙には地球外生命は存在するのか。存在するとすれば、それはどのようなものか。


そんなアストロバイオロジーのトークイベント、渋谷FabCafe MTRL4月11日(火)にて開催します。


登壇者はこちら。


藤島 皓介(東京工業大学地球生命研究所)
f:id:horikawad:20170325203401j:plain

慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程早期修了、日本学術振興会海外特別研究員、NASA Ames研究所研究員を経て、現職。慶應義塾大学Advanced Astrobiology Projectを立ち上げる。研究対象は主に合成生物学を利用した生命の起源。2種類のポリマー(タンパク質とRNA)の起源と進化から地球生命を考える。またJAXA/JAMSTEC/慶應の研究者や学生らとともに土星衛星エンケラドスの生命探査に関連した基礎研究を行い、NASAでは将来の人類の火星移住をサポートするような有用微生物の研究に従事している。2016年WIRED Audi INNOVATION AWARD受賞。


柴藤亮介(アカデミスト)
f:id:horikawad:20170327110240j:plain

アカデミスト株式会社代表取締役。2013年3月に首都大学東京博士後期課程を単位取得退学。研究アイデアや魅力を共有することで、資金や人材、情報を集め、研究が発展する世界観を実現するために、2014年4月に日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」をリリースした。


クマムシ博士
f:id:horikawad:20170325203430j:plain

北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程を修了。NASA Ames研究所研究員、パリ第5大学研究員などを経て、現職。オンラインバーチャル研究所『クマムシ博士のクマムシ研究所』所長や、クマムシキャラクター『クマムシさん』のグッズ製作などプロデューサーも務める。月間10万PVのブログ『むしブロ』ではアストロバイオロジーの話題も扱う。著書に『クマムシ博士の「最強生物」学講座』(新潮社)、『クマムシ研究日誌』(東海大学出版会)、『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』(日経ナショナルジオグラフィック社)。


藤島さんとは10年近くの付き合いですが、このようなトークイベントを一緒にするのは意外にも初めて。参加申し込み方法などの詳細はこちらからどうぞ。


mtrl.net


みなさんのご来場をお待ちしております。

『リアルクマムシ飼育観察キット』をクラウドファンディングでゲットしよう

f:id:horikawad:20071119024607j:plain


現在開催中のクラウドファンディング「最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!」が、おかげさまで第一目標だった200万円を超えたため、第二目標の300万円に向けて新リターンのプログラムを追加します。


新リターンの内容は、世界でも珍しい『リアルクマムシ飼育観察キット』。自宅で最強生物ヨコヅナクマムシを飼育し観察できるキットです。このリターンを購入できるのは先着5名様まで。ぜひクマムシを育てて増やして愛でてみてください。


『リアルクマムシ飼育観察キット』に入っているアイテムのラインナップは、以下のとおり。


1. 乾眠ヨコヅナクマムシ


乾眠しているヨコヅナクマムシを合計60匹をご提供します。20匹が入ったシャーレが3つ届きます。全部で3機。スーパーマリオでいうところの「×3」です。


f:id:horikawad:20170330154525j:plain


シャーレの中の実際の乾眠ヨコヅナクマムシ20匹は、下の写真のようになっています(250倍で撮影)。


f:id:horikawad:20170330163102j:plain


カラカラに干からびている乾眠ヨコヅナクマムシは、水ををかければ復活します。


f:id:horikawad:20170401113625j:plain


下の動画のように、カラカラのクマムシが動き出す神秘的なようすをリアルタイムで観察できます。



まずは「×1」のシャーレにいるヨコヅナクマムシから復活させ、残りの「×2」と「x3」のシャーレは冷凍庫に保管しておきます。


もし「×1」のクマムシが全滅したら、「×2」のクマムシを、「×2」のクマムシも全滅してしまったら、「x3」のクマムシを復活させてください。


ところで、これらのヨコヅナクマムシは、クマムシ博士が自ら丹念に育てたメスたちです。


f:id:horikawad:20170330193258j:plain:w350


もちろん、ひとつひとつのシャーレにクマムシを入れて乾眠させる作業も、クマムシ博士が行います。すべては、ご支援をしていただいた、あなたのために。


2. 生クロレラ


ヨコヅナクマムシの飼育に欠かせないごはん、生クロレラ。この生クロレラは、クロレラ工業株式会社の生クロレラV-12です*1


シャーレにこの生クロレラを付属のスポイトでかけます。うまくいけば、ヨコヅナクマムシは生クロレラを食べて育ち、卵を産んで増えていきます*2


シャーレ内のクロレラ水は1週間に1度、スポイトで吸って捨てて、フレッシュな水と生クロレラに交換します。なお、生クロレラの消費期限は冷蔵庫で30日間ですが、本リターンの購入者には、6ヶ月間にわたり毎月生クロレラを郵送でお届けします。詳しい飼育のやり方は、付録の説明書をお読みください。


3. 双眼実体顕微鏡
f:id:horikawad:20050111033958j:plain:w400


体長0.4ミリメートル以下の小さなヨコヅナクマムシの観察に欠かせないのが、実体顕微鏡。本リターンには、クマムシの観察に最適な新日本通商株式会社の双眼実体顕微鏡がついてきます。2タイプの接眼レンズで、20倍あるいは40倍での観察が可能。


f:id:horikawad:20050111042552j:plain:w450


また、照明は上方からの落射光と下方からの透過光を切り替えることができます。


f:id:horikawad:20170330155715j:plain


LEDライトなので、とてもクリアに観察しやすい。また、発熱がおこりにくいので、ステージ上にシャーレを置いても、クマムシへの熱の影響を抑えることができます。


さて、本リターンの気になる支援額は20万円。先着5名様まで。なお、本リターンは『クマムシ飼育観察キット』の他に、『サイン付き『クマムシへんてこ最強伝説』』『限定かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみS』『クマムシさんぬいぐるみL』『オンラインサロン『クマムシ研究所参加権』1年分』『論文謝辞にお名前掲載権』も含んだ価格です。


『サイン付き『クマムシへんてこ最強伝説』』『限定かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみS』『クマムシさんぬいぐるみL』
f:id:horikawad:20170303084254j:plain


『オンラインサロン『クマムシ研究所参加権』1年分』
f:id:horikawad:20170302081244j:plain


『論文謝辞にお名前掲載権』
f:id:horikawad:20170302081517j:plain


これよりも上位のリターンプログラム『クマムシ博士とスペシャル研究者たちとのお食事権』にも、この『クマムシ飼育観察キット』はついてきます。こちらもあと1名の空きがあるので、お早めにどうぞ。


ぜひこの機会にクマムシブリーダーとなり、そして、クマムシ研究をご支援いただければ幸いです。購入はこちらからどうぞ。


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

*1:この生クロレラはクロレラ工業からクマムシ博士が受け取ったものを開封後に分与する形になるため、品質保証の責任はクロレラ工業にはございませんので、ご了承ください。

*2:ヨコヅナクマムシは20〜25度の範囲内の温度で飼育することが望ましく、これよりも低温や高温になると育ちにくくなるので、ご了承ください。

クラウドファンディング目標額達成とお食事同伴スペシャルゲストのお知らせ

f:id:horikawad:20170318232618j:plain:w350


学術系クラウドファンディングサイト「academist」3月2日に開始したクマムシ研究クラウドファンディングが、当初の目標額の200万円に達成しました。本クラウドファンディングにご支援いただいた200名を超える支援者の皆様に、厚く御礼申し上げます。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!:academist


これらのご支援をいただいたみなさま全員の力をお借りして、クマムシ研究を推進していきます。支援者全員がクマムシ研究チームの一員です。研究成果をご報告できる日を楽しみにしています。


10日間で200万円を達成したのは、「academist」で行ったクラウドファンディングのプロジェクトで、最速記録だそうです。予想を上回るスピードで第一目標を達成したため、セカンドゴールとして300万円を設定します。追加分の支援は、さらなる実験のための試薬などの購入に充てます。これにより実験回数を増やせれば、それだけ成功に近づくことができます。引き続きよろしくお願い致します。


今回の目玉リターンである12000円のクマムシ福袋(「クラウドファンディング限定かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみ」「クマムシさんLサイズぬいぐるみ」「サイン付クマムシへんてこ最強伝説」「サイエンスカフェ」)は限定100個がすべて完売してしまったので、同福袋を15000円(100個限定)でさらに提供させていただきます。


f:id:horikawad:20170303084254j:plain


また、30万円の「クマムシ博士とお食事権」ですが、新たに追加スペシャル同伴ゲストが降臨することになりました。


それは、国立研究開発法人海洋研究開発機構深海・地殻内生物圏研究プログラム・プログラムディレクターにして、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞、チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー2012など数々の受賞歴に輝き、毒舌のダウンタウンから「口の悪いやっちゃな!」と評される、日本が世界に誇る微生物学者、天才(自称)高井研氏です。


f:id:horikawad:20170307003443j:plain


高井氏についてご存じない方は、こちらをご参照ください。


goo.gl

goo.gl


これまでクマムシを目の敵にしてきた高井氏ですが、ちょっとした経緯があり、今回、高井氏のご厚意で、本クマムシ研究クラウドファンディングプロジェクトにご協力いただけることになりました。ご本人から、今回の参加に際し、以下のようメッセージもいただいています。

おう、クマムシ芸人!クラウドファンディング、調子いいのう!でもキミ、アレね。ちゃんと自分のブログでも研究計画のサイエンスな説明をしているのが、いいね。見直したわ。


オレ様も協力したる。お食事、一緒に出てもええで。ただし、購入者は20代女性限定な!がははは!!!


もちろん、20代女性でない方も大歓迎です。なお、20代女性以外の方が食事権を購入した場合は、華奢な早稲田大学先進理工学部の岩崎秀雄教授がギャルの装いで同席することになってしまうとか、しまわないとか。


f:id:horikawad:20170318233809j:plain:w200

spork.jp


さて、どうなってしまうのでしょうか。いずれにしても、なかなかないタイプの食事会になると思われるので、奇特な方にはぜひ本リターンにベットしていただければと思います。ちなみに、食事代は、こちらで持ちます。


近日中に、さらに魅力的な追加リターンも告知する予定なので、引き続きよろしくお願い申し上げます。


【関連記事】


horikawad.hatenadiary.com

クマムシ研究クラウドファンディングの支援者が150名になりました

f:id:horikawad:20170307221824j:plain


現在、クラウドファンディングサイト「academist」で、クマムシ研究プロジェクトの支援を募っています


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


クラウドファンディング開始から5日間が経過し、ご支援いただいた方の数が151名になりました。目標達成率は86%に。この151名の皆さまに心より御礼申し上げます。


限定100個のクマムシ福袋リターン(「限定かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみS」「クマムシさんぬいぐるみL」「サイン付き『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』」「クマムシ博士サイエンスカフェ参加権」)は、なんとこの5日間で完売してしまいました。


f:id:horikawad:20170307222622j:plain


そこで、クマムシ福袋と同じ内容のリターンを、さらに100個限定で追加しました。


f:id:horikawad:20170303084254j:plain


こちらの価格は15,000円。初回の福袋よりも価格が高くなっていますが、それでもまだお得感はじゅうぶんにあります。初回の福袋をゲットし損ねた方は、こちらの購入をご検討ください。


なお、academistのサイトで使えるクレジットカードの種類が限られていますが、銀行振込も可能なので、 その場合はacademistの方( info@academist-cf.com )までご連絡ください。


それでは引き続きよろしくお願いいたします。


【関連記事】


horikawad.hatenadiary.com

3月8日にJ-WAVE TOKYO MORNING RADIOに出演します

f:id:horikawad:20170225172157j:plain


3月8日(水)朝8時35分ごろから、J-WAVE TOKYO MORNING RADIOに出演します。


www.j-wave.co.jp


この番組に出るのは2013年以来。当日は六本木ヒルズから世界にクマムシを発信します。


クマムシ研究クラウドファンディングも142名ものサポーターの方から150万円以上のご支援をいただきました。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


みなさま、どうも有難うございます。引き続きよろしくお願いします!

クマムシ研究クラウドファンディングの支援者が100名になりました

f:id:horikawad:20170305092257j:plain


academistで行っているクマムシ研究クラウドファンディング、3月2日にスタートしてから3日間が経過し、ご支援いただいた方の数が100名になりました。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


100名の皆さまに心より御礼申し上げます。


【関連記事】


horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

クマムシ研究クラウドファンディングに2日間半で100万円のご支援をいただきました

f:id:horikawad:20170304230647j:plain


3月2日にスタートしたクマムシ研究クラウドファンディングが、開始2日間半で100万円の支援が集まりました。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


これで目標金額200万円に対し50%の達成率となりました。うーん、嬉しいですね。ご支援いただいた皆様、どうも有難うございます。


とくに限定100個の12000円のリターン、「限定かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみS」「クマムシさんぬいぐるみL」「サイン付き『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』」「クマムシ博士サイエンスカフェ参加権」のクマムシ福袋は、すでに67個が購入されています。残りは33個。あと2〜3日で完売する勢い。


f:id:horikawad:20170303084254j:plain


たくさんのご支援の他にも、うれしいことに研究者の方や企業からもコンタクトをもらっています。ただ、目標達成をしなければこのプロジェクトは成立しないので、引き続きどうぞよろしくお願いします。


【関連記事】


horikawad.hatenadiary.com

トトロの里、瑞穂町でクマムシ講演と観察会を開催。

f:id:horikawad:20170304112234j:plain


2017年3月12日(日)、東京都瑞穂町の郷土資料館でクマムシ講演会とクマムシ観察会を行います。参加費無料、子ども大歓迎。瑞穂町は『となりのトトロ』の舞台といわれる狭山丘陵の西に位置する牧歌的な町。


この講演会、「人をダメにする超巨大クマムシさん」も特別に参加します。


f:id:horikawad:20150722224433j:plain


定員110人ですので、参加申し込みはお早めに。場所や申し込み方法の詳細はこちら。

「最強生物クマムシを知ろう」

場所:東京都瑞穂町郷土資料館けやき館(多目的室・体験学習室)

開催日:2017年3月12日(日)

時間割:
12:30     開演
13:00〜14:00 講演 
14:45~15:30 観察会

定員:110人

申し込み方法:瑞穂町図書館にメール toshokan@town.mizuho.tokyo.jp か電話 042-557-5614 で予約


みなさんのご来場をお待ちしています。

クマムシ研究のクラウドファンディングを開催中です

f:id:horikawad:20170302073831j:plain


このたび、クマムシ研究プロジェクトのクラウドファンディングを学術系クラウドファンディングサイト「academist」にて行います。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


極限的乾燥、超低温、超高圧、高線量放射線、そして、宇宙空間の超真空。驚異的な環境にも耐えられるクマムシの強さの秘密をさぐるべく、今回、この生きものでのゲノム編集技術を確立して調べたい。ということで、クラウドファンディングを行うことになりました。ぜひとも皆さんとご一緒に、クマムシ研究を進めていきたいのです。


このクラウドファンディングは、ただの寄付ではありません。資金額に応じて、クマムシにゆかりのあるリターン(お返し)を用意しています。ここでしか入手できないクマムシグッズもあります。また、今回は、共同研究者も募集しています。ゲノム編集や遺伝子操作に明るく、クマムシ研究に興味のある研究者の方、お気軽に声をかけてください。


それでは、今回のクラウドファンディングについて、ちょっと詳しめに説明させていただきますね。


・クマムシの謎を探る冒険


f:id:horikawad:20121205113715j:plain


通常、生物は乾燥してカラカラになったり、多量の放射線を浴びると、タンパク質やDNAといった細胞の部品が壊れてしまいます。部品が壊れて機能しなくなるということは、生物の死を意味します。ファミマで買ってきたくさやに水をかけても、残念ながらいつまでたっても生き返ることはありません。しかし、クマムシは、体がカラカラに乾燥しても水をかければ復活します。


f:id:horikawad:20170302074449j:plain


また、多量の放射線を浴びても、生き続けることができます。つまり、クマムシには細胞の部品を守るような仕組みがあり、その秘密は生命の設計図であるDNAの遺伝子に隠されていると考えられます。


大学生の頃、私はクマムシにすっかり魅せられ、この生きものの研究を始めました。


ある生物を継続的、安定的に実験するためには、実験室で飼育することが不可欠です。ところが15年以上前の当時は、クマムシの基本的な生態もあまり分かっておらず、ほとんどの種類について、どんな餌を食べているかもわからず、飼育できる種類はほんどありませんでした。そこで、実験のためにわざわざ野外でクマムシを採集する必要がありました。


クマムシを実験生物として発展させるために、私は飼育のできる種類のクマムシを探しました。国内外から10種ほどのクマムシを採集し、それらのクマムシにさまざまな餌の候補を与えて、飼育できる種類を選別しました。


そして、餌として生クロレラを与えることで、札幌市から採集した1種類のクマムシを 繁殖させることに成功しました。この茶色いクマムシは、他の種類のクマムシに比べて乾燥や放射線への耐性がひときわ高いことが判明し、横綱級の強さをもつという意味で「ヨコヅナクマムシ」と名付けました。こうして、継続的に実験できるクマムシが得られたのです。


f:id:horikawad:20141204151313j:plain


さらにヨコヅナクマムシの標準系統「YOKOZUNA-1」を作製し、東京大学や国立遺伝学研究所などとの共同研究で、この種の全ゲノムDNAの解読を行いました。その結果、ヨコヅナクマムシには1万数千個の遺伝子が見つかり、その中にクマムシ固有の新規遺伝子の存在が多数確認されました。

また、ヨコヅナクマムシには、乾燥耐性や放射線耐性にかかわる遺伝子の候補が、複数見つかってきました。これらの遺伝子から発現したタンパク質は、乾燥や放射線のダメージからヨコヅナクマムシの細胞を守る役割があると考えられています。ただし、これらのタンパク質が、どこまでヨコヅナクマムシの耐性に関与しているのかは、まだはっきりとわかっていません。


・ゲノム編集でクマムシの謎に迫る


耐性にかかわると考えられている遺伝子が、ヨコヅナクマムシの中で実際にどのような働きをもつかは、これらの遺伝子を壊すことで調べることができます。


ある遺伝子の機能を失わせた時に、もしヨコヅナクマムシの耐性が低下すれば、その遺伝子は耐性にかかわる重要な遺伝子であることが推定できるからです。しかしながら、クマムシの特定の遺伝子を操作する技術は、長い間開発されてきませんでした。


ところがここ数年、生物の遺伝子を改変する、ある革命的な技術が広まってきました。それは、将来にノーベル賞を受賞すると思われる「CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)システム」とよばれる、ゲノム編集技術です。


horikawad.hatenadiary.com


これまで、遺伝子改変は限られた生物でしかできませんでした。しかし、このゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを用いることで、今までに遺伝子操作が難しかった数多くの生物種を遺伝子改変することが可能になっています。


ゲノム編集でヨコヅナクマムシの遺伝子を改変して機能を失わせることで、実際に耐性に関わっている遺伝子レパートリーを特定しやすくなります。つまり、クマムシの常識外れの耐性能力の謎の解明に向けて、大きく前進するものと期待されます。


ただし、クマムシの実験システムはまだまだ未熟な部分もあり、目的達成のためには基本的な技術を段階的に確立していく必要があります。ゲノム編集では、クマムシの生殖巣に外来の 核酸などを注入し、産まれてくる子どもの遺伝子が改変されるかを確認する必要がありますが、この最初のステップをきちんと行うのも、まだ難しいのが現状です。


そこでゲノム編集技術確立のための最初のステップとして、まずは、 クマムシに核酸のmRNAをうまく注入できるかを検討するところから始めます。たとえば緑色蛍光タンパク質GFPを発現するmRNAを卵巣に注入し、産まれてくる子どもが蛍光を発するかを確認します。それと並行して、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを構成するCas9タンパク質とsgRNAもクマムシに注入し、遺伝子改変を起こせるかを検討していきます。


慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究室には、ヨコヅナクマムシの他にも、ドゥジャルダンヤマクマムシなど、数種類のクマムシがいます。ゲノム編集技術の確立に向けて、これらのクマムシも実験に用いる予定です。本研究室の荒川和晴特任准教授らの協力も得て、クマムシ研究を推進していきます。


・クマムシ研究は基礎研究


クマムシの耐性のメカニズムが分かってくれば、生鮮食品、血液、移植用臓器など、将来的な乾燥保存法にも応用できるかもしれません。もちろん、すぐに応用できるようになったり、必ず実現するとは限りません。しかし、このような基礎研究は、のちにどう化けるのかがわかりません。小さなクマムシも、大きな可能性を秘めているのです。


ぜひとも本研究のサポートをacademistこちらからお願いさせていただきたく思います。私どもの船に、一緒に乗ってみませんか?


・共同研究者の募集


また、今回のプロジェクトでは、共同研究者も募集しています。クマムシの実験システムはまだまだ未熟な部分もあり、目的達成のためには基本的な技術を段階的に確立していく必要があります。 まずは、 GFP発現mRNAをクマムシの卵巣に注入し、産まれてくる子どもが蛍光を発するかを確認し、それと並行してCas9タンパク質とsgRNAもクマムシに注入し、遺伝子改変を起こせるかを検討していきます。


遺伝子操作技術などに明るく、クマムシの研究にご興味のある研究者の方、ぜひともこちら(horikawadd@gmail.com)までコンタクトをいただければと思います。また、本プロジェクトにご興味のある企業の方からのご連絡も歓迎しています。


・オリジナルアイテムも。クマムシ研究サポートのリターン


今回、クマムシ研究に支援をいただいた方には、支援額に応じて以下のリターンを用意しました。どれも、クマムシにかかわるものばかりです。ここでしか入手できないクマムシアイテムもあります。


★1,000円
研究報告レポート(画像付き)


ご支援いただいた資金で進めた研究の進捗について、レポートにまとめてお送りいたします。ヨコヅナクマムシのオリジナル画像と一緒にお楽しみください。


★2,000円
f:id:horikawad:20170302075537j:plain
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)



ここでしか手に入らない、クマムシさんとacademistとのコラボ「クマムシさんCFオリジナルステッカー」をお送りします(デザインはまだ未定)。


★5,000円
f:id:horikawad:20170408132208j:plain
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


2000円のリターンに加えて、今回の目玉アイテム「かんみんシロクマムシちゃんSサイズぬいぐるみ」をお送りします(画像はサンプルです)。ここでしか手に入らない、プレミアムアイテムです。これよりも支援額の多いプランには、もれなくこの「かんみんシロクマムシちゃんSサイズぬいぐるみ」がついてきます。


★15,000円
f:id:horikawad:20170302080432j:plain
f:id:horikawad:20170228231447j:plain
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


5,000円のリターンに加えて、サイエンスカフェ参加券、最近発刊した著書『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』(サイン付き)、そして大人気のクマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)をお届けします。正直、クマムシさんLサイズぬいぐるみと書籍だけでも普通に買えば1万円をこえるので、このプランが一番お得感があると思います。100個限定リターンですので、お早めに。


★30,000円
f:id:horikawad:20170302081244j:plain
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


15,000円のリターンに加えて、オンラインサロン「クマムシ博士のクマムシ研究所」への参加券(1年間)をプレゼントします。現在はFacebookの限定グループで運営しており、研究者だけではなく、学生や社会人など、幅広い方々にご参加いただいています。クラウドファンディングを終えた後も、クマムシコミュニティで共に活動していきませんか?


★50,000円
f:id:horikawad:20170302081517j:plain
論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


30,000円のリターンに加えて、本プロジェクトの論文が出版された暁には、謝辞にあなたのお名前を掲載いたします(かなり長い道のりで、実現する保証は100%ではありませんが、ぜひ長期スパンで応援していただけると嬉しいです)。


★100,000円
f:id:horikawad:20170302081925j:plain
クマムシレクチャー参加券
論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


50,000円のリターンに加えて、クマムシ採取、観察、飼育のいろはを伝授する少人数レクチャーにご招待いたします。一口ご支援いただければ、ご家族でご参加いただいて構いません。


★300,000円
f:id:horikawad:20170218194057j:plain:w400
堀川とのお食事会(食事代含む)(注:写真はイメージです) 
クマムシレクチャー参加券
論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


100,000円のリターンに加えて、堀川とのお食事会を設定させていただきます。クマムシ研究の最新動向から、クマムシを題材としたビジネスの話題、人生相談など、なんでも気軽に話しましょう。なお、親子でご参加いただける場合は、一組二人まで可能です。


その他の詳しい情報はぜひacademistのサイトでご確認ください。ご支援もこちらからどうぞ。なお、academistのサイトで使えるクレジットカードの種類が限られていますが、銀行振込も可能なので、 その場合はacademistの方( info@academist-cf.com )までご連絡ください。


というわけで、改めて研究サポートのほど、よろしくお願いいたします。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!

NHK『あさイチ』にクマムシと出ます

3月2日(木)のNHKの情報番組『あさイチ』にクマムシがちょこっと出てきます。慶應義塾大学先端生命科学研究所が取り上げられる中で、クマムシ研究グループも取材を受けました。8:15から9:00の間のどこかで出てくるようです。


www.kumamushikansatsu.com

JAPA-NAVI 山形・庄内地方|NHKあさイチ


クマムシとは関係ないですが、『あさイチ』アナウンサーの有働由美子さんといえば、シドニーオリンピック柔道男子100kg超級決勝の疑惑の判定後に涙を流しながら原稿を読んでいたのがとても印象に残っています。


クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

  • 作者: 堀川大樹,ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る


クマムシールがついてくるクマムシ本新刊『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』も好評発売中。よろしくまむしです。


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

TRAPPIST-1の系外惑星群について、観測の背景や今後の展望

先日、NASAらが会見で発表したTRAPPIST-1の系外惑星群について、観測の背景や今後の展望について解説した記事を『iRONNA』に寄稿しました。


ironna.jp


記事タイトルは私ではなく編集部がつけたので盛っているかんじですが、興味ある方はご一読ください。『iRONNA』ではTRAPPIST-1の系外惑星群について、福江翼さんや山岸明彦さんなど惑星科学やアストロバイオロジーの専門家も寄稿しているので、こちらもおすすめ。

ironna.jp

ironna.jp


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

クマムシさんを預かっていただける書店さん募集

f:id:horikawad:20170223204438j:plain


クマムシ本新刊『クマムシ博士のへんてこ最強伝説』が、全国の書店で並び始めました。今回のクマムシ本はゆるマニ系(ゆるくてマニアック系)。おまけでクマムシールもついてきます。


クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

  • 作者: 堀川大樹,ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る


f:id:horikawad:20170202111155j:plain


アマゾンなどで予約注文をしていただいた方にも、そろそろ発送が始まるころですので、しばしの間クマムシさんを揉みながらお待ちください。


ところで今回は、全国の書店さんに、クマムシ博士と出版元のナショジオから、下記のとおりお願いがあります。



クマムシさんの存在は書籍売上のみならず、店舗イメージアップにも貢献すると思われます。ということで、もし『クマムシ博士のへんてこ最強伝説』の販売に際し、クマムシさんキーチェーン付きポップを設置していただける書店さんは、ぜひナショジオのツイッターアカウントまでメンションかDMでご連絡ください。


それでは、どうぞよろしくお願いします。


【関連記事】


horikawad.hatenadiary.com

NASAが発表した「TRAPPIST-1の系外惑星群」のインパクト

f:id:horikawad:20170223065348j:plain:w400
Image credits: NASA/JPL-Caltech (images used under NASA media usage guidelines)


アメリカ時間の2017年2月22日、NASAは系外惑星に関する新たな発見について記者会見を開いた。その新発見の内容とは、「ひとつの惑星系に7つの地球サイズの系外惑星が存在すること」だった。これら7つの系外惑星のうち、3つは地表に液体の水が存在しうるハビタブル(生命棲息可能)な惑星である可能性が示された。


生命を宿せるような「第二の地球」候補になりうる系外惑星が3つも同じ惑星系内で確認されるのは、初めてのこと。今回の発見は、我々が想像していた以上に太陽系の外には生命の星がありふれていることを示唆する、重要な発見といえる。


・系外惑星とは


系外惑星とは、太陽系の外に存在する惑星のことである。これらは恒星の周りを公転している。観測技術の発達により最初の系外惑星が発見されたのは、1990年代に入ってからのこと。その後の観測精度の向上により、現在までに3449個の系外惑星が確認されている。2016年には、ケプラー宇宙望遠鏡により観測された系外惑星候補のうち、1284個が一気に系外惑星として認定された


これらの系外惑星の中には、地球の数倍〜10倍程度のサイズで、岩石でできているものもある。これらはスーパーアースとよばれる。さらに2016年3月時点では、地球のサイズの2倍以下で、なおかつ液体の水が存在しうるハビタブルゾーンにある系外惑星は、21個が確認されていた。


・TRAPPIST-1の系外惑星


系外惑星をもつ惑星系の中でも、TRAPPIST-1系は、生命を探すアストロバイオロジー研究における「スター」として注目され始めた惑星系である。TRAPPIST-1は赤色矮星であり、太陽系から40光年先の水瓶座の方向に位置する。TRAPPIST-1の大きさは太陽の0.08倍しかなく、表面温度も非常に低い。


2016年、このTRAPPIST-1を周回する3個の地球型系外惑星TRAPPIST-1b、TRAPPIST-1c、そしてTRAPPIST-1dの存在が、トラピスト望遠鏡によって取得されたデータから示された。そしてこれらの系外惑星は、生命を育める可能性があるとして、一気に注目されるようになる。


・3個ではなく7個だった


ベルギー・リエージュ大学のMichael Gillon氏が主導する研究グループは、系外惑星TRAPPIST-1dのデータが少しおかしいことに気づいた。そこで今回、新たにトラピスト望遠鏡を含む複数の地上の望遠鏡と、スピッツァー宇宙望遠鏡による観測により、以前取得したTRAPPIST-1dのデータが、実は1個ではなく4個の惑星をとらえたものであることが判明した。かくして、TRAPPIST-1dはTRAPPIST-1d、TRAPPIST-1e、TRAPPIST-1f、TRAPPIST-1gに増えた。


さらに研究グループは今回、TRAPPIST-1の軌道の一番外側に、新しひとつの惑星TRAPPIST-1hの存在を確認。これにより、もともと全部で3個だと思われていたTRAPPIST-1の系外惑星の数は7個になった。


f:id:horikawad:20170223083435j:plain
Credits: NASA (images used under NASA media usage guidelines)


ところで、なぜこのような間違いが起きたのだろうか。それは、データの取得と分析方法にある。系外惑星を見つける手法の一つに、トランジット法がある。これは、惑星が主星の前を横切る(トランジットする)ときの減光を検出することで、間接的に系外惑星をみつける手法だ。もし主星の減光期間が一定で、周期的に同程度の減光が観測されれば、その恒星の周りを惑星が回っていると推測できる。


f:id:horikawad:20120601171840j:plain
Credits: NASA Ames (images used under NASA media usage guidelines)


前回の研究では、トランジット法による周期的な観測ができなかった。しかも、複数の系外惑星が間を置かずに次々に主星の前を通り過ぎたデータを取得したため、あたかも1個の惑星が主星の減光をもたらしたように見えてしまったのである。このように、論文では捏造でなくても、誤った結果を提出してしまうことがある。論文発表はあくまでも、仮説の提示をすることに過ぎないのである。


・地球に似ている惑星たち


話を元に戻そう。TRAPPIST-1に近い6個の系外惑星は、質量が地球の0.4〜1.4倍、半径が0.77〜1.13倍の範囲に収まることが分かった。非常に地球に似通った惑星であることがうかがえる。


ただし、これらの系外惑星は主星であるTRAPPIST-1にきわめて近いところを周っており、その公転周期も1.5〜12日間と驚くほど短い。それでも、TRAPPIST-1e、TRAPPIST-1f、TRAPPIST-1gなどは地球ー太陽間に比べて主星に20倍以上も近づいているにもかかわらず、地表に液体の水を維持しうると考えられている。これは、TRAPPIST-1が太陽に比べるときわめて低温の赤色矮星であるため、TRAPPIST-1との距離が近くても、惑星はさほど熱くならないと考えられるからである。


ただし、TRAPPIST-1と距離が近すぎるため、これらの系外惑星たちは「潮汐ロック」により、惑星の半面が常にTRAPPIST-1を向いており、もう片方の半面はその反対の方向に面していると考えられる。つまり、片方は常に昼で、もう片方は常に夜という環境である。これは、月も同じ。このような環境が、地球とはだいぶ異なる。


こういった環境条件の惑星は、生命が棲むには厳しいかもしれない。だが、惑星上に局所的に適度な環境があれば、そこに生命がいてもおかしくはないだろう。


・今後は大気を分析


今回の研究により、TRAPPIST-1の系外惑星群の「第二の地球」モデルとしての魅力がいっそうと深まった。今後のアストロバイオロジーの研究対象として、これらの系外惑星のベールがさらに脱がされていくことだろう。


今後、既存の地上や宇宙の望遠鏡により、これらの系外惑星の大気を分析していくことになるはずだ。トランジット分光法という方法により、系外惑星の大気を透過した主星の光を分析することで、大気のどの物質が光を吸収したかを推定できる。とくに、2018年に打ち上げられる予定の次世代宇宙望遠鏡「James Webb Space Telescope」のにより、大気組成の詳細な分析がなされるだろう。


f:id:horikawad:20170222163158j:plain


希望的観測だが、もしもこれらの系外惑星に水や酸素やメタンなどが同時に見つかれば、生命存在の可能性が格段に高まる。これらの分子は、生命活動による積極的な供給がないと、共存できないと考えられているからだ。植物のサインなどキャッチできれば、これは大変なことになる(次世代宇宙望遠鏡のスペックでどこまで高い精度のデータが取れるかは不明だが)。


いずれにしても、宇宙探査は今後ますます生命探査と同義になっていくだろう。太陽系外でも太陽系内でも生命が存在する大きな証拠が得られれば、それは人類の思考の根幹に計り知れない影響を与え、価値観の大転換を促すはずだ。その瞬間が訪れるのがあと10年なのか20年なのかは、誰にもわからないが。


さて、最後に、先日行った「クマムシ博士のNASA会見発表内容予想」の自己採点をしようと思う。正直、今回は予想難易度がだいぶ高かった。当初、「系外惑星の大気の分析」が発表内容だと思っていたが、これは違っていた。だが、次のように、当たっていた部分もある。

その系外惑星の表面温度が「液体の水」を保持できる範囲内である可能性、つまり、ハビタブル(生命棲息可能)な惑星である可能性が強く示唆されるような内容も、今回の発見に含まれるのではないかと予想する。

(中略)

今回はTRAPPIST-1の系外惑星群をフィーチャーした可能性が高い。


「ハビタブルな惑星である可能性が強く示唆されるような内容」、そして、「TRAPPIST-1の系外惑星群」というかなり狭い範囲で特定の系外惑星群を予想できていた。このポイントは高い。よって、今回は総合して65点の出来だったのではないかと思う。この点数が高いか低いかは、各読者のご判断にお任せしたい。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」374号「NASAが発表した「TRAPPIST-1の系外惑星群」のインパクト」からの抜粋です。

www.mag2.com


【参考資料】

第二の地球を探せ!  「太陽系外惑星天文学」入門 (光文社新書)

第二の地球を探せ! 「太陽系外惑星天文学」入門 (光文社新書)

系外惑星の探索の歴史から、その発見の手法について網羅的に解説した良書。アストロバイオロジーの文脈での系外惑星を知りたい人にとくにおすすめの一冊。


NASA Telescope Reveals Largest Batch of Earth-Size, Habitable-Zone Planets Around Single Star

These seven alien worlds could help explain how planets form

Gillon et al. (2017) Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1. Nature


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

NASAの「太陽系外の惑星に関する発見」を予想する

f:id:horikawad:20160914115913j:plain
Image credit: NASA JPL/Caltech (images used under NASA media usage guidelines)


NASAは2017年2月22日(日本時間は23日未明)、「太陽系外惑星についての新たな発見」について記者会見を開催すると公式サイトでアナウンスした。


www.nasa.gov


・系外惑星について何かしらの発見


私、クマムシ博士はこれまでに「ヒ素をDNAに取り込む細菌」や「火星表面に液体の水」、そして2016年には「エウロパの間欠泉」など、NASA発表の予想を的中させてきた。このイベントは恒例になりつつあり、NASAが会見をアナウンスすると、現役のNASA職員からも予想について聞かれるようになった。



ちなみに、こちらの小野さんのようにNASA内部の人だからといって、今回の会見内容を知っているわけではない。NASAにはセンターがいくつもあり、同じセンター内でも部署や専門分野が異なれば、発見内容を知る由もない。私も以前NASAに所属していたが、今回の件については、もちろん何も知らされていない。


さて、今回の発見は「太陽系外の惑星」、いわゆる「系外惑星」に関するものであることが、NASA公式サイトで明示されている。実は、2016年にも系外惑星について同様の記者会見が開かれ、このときは1000を超える多数の系外惑星が認定された、という内容の発表だった。


horikawad.hatenadiary.com


しばしばNASAの記者会見アナウンスでは、「ヒ素細菌」のときのように「重大な発見」など、その重要性を強調する形容詞がつけられるが、今回はそのような大げさな感じはない。また、前回の「エウロパ間欠泉」のように、わざわざ記者会見するのかわからないような、科学的インパクトがそれほど大きくない成果を発表することもある。


ただ、今回は科学誌Natureに発表する研究成果ということで、科学的インパクトはそれなりに大きく「セクシー」な内容と思われる。


・記者会見出席メンバーから発見内容を予想する


それでは、今回は系外惑星について、どんな知見が得られたのだろうか。2016年の時のように、また、多数の惑星が系外惑星リストに加えられるのだろうか。


今回の発見の内容を知る手がかりは、記者会見に出席するメンバーにある。各メンバーの属性、つまり、得意とする専門分野を調べれば、どのような内容かを絞り込める。さっそく、ここで公式サイトに掲載されている記者会見出席メンバーを見てみよう。


Thomas Zurbuchen, associate administrator of the Science Mission Directorate at NASA Headquarters in Washington

Michael Gillon, astronomer at the University of Liege in Belgium

Sean Carey, manager of NASA's Spitzer Science Center at Caltech/IPAC, Pasadena, California

Nikole Lewis, astronomer at the Space Telescope Science Institute in Baltimore

Sara Seager, professor of planetary science and physics at Massachusetts Institute of Technology, Cambridge


1人目のThomas Zurbuchen氏はNASA本部の人だ。NASA本部の偉い人は発見内容の本質には無関係な、ただの調整役。なので、この人からは何の情報も引き出せないのでパスする。


2人目のMichael Gillon氏は、ベルギーのリエージュ大学に所属する天文学者。NASAの所属でないのにもかかわらず、わざわざNASA主催の会見に出席するところがポイント。Gillon氏はトラピスト望遠鏡(TRAPPIST)を用いて、系外惑星系の観測を行っている。今回のキーパーソンだろう。


3人目のSean Carey氏はNASA Spitzer Science Centerのマネージャー。Carey氏について検索をしても、彼の専門分野の詳細についてはよくわからない。ただし、彼がNASA GoddardでもNASA Amesでもなく、NASA Spitzer Science Centerの所属というのは、ヒントになるだろう。NASA Spitzer Science CenterはNASA JPLに関係のあるセンターと思われ、スピッツァー宇宙望遠鏡(Spitzer Space Telescope)を運用している。


4人目のNikole Lewis氏はアメリカ・ボルチモアにある宇宙望遠鏡科学研究所に所属する天文学者。彼女の専門は系外惑星の大気の解析。しかも、スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた解析にも関わっている。これらは大きなヒントになる情報だ。


5人目のSara Seager氏はマサチューセッツ工科大学の宇宙物理学者。系外惑星の大気の解析などで功績がある。TEDでも系外惑星についてプレゼンをしている。



これら5人のメンバーのバックグラウンド調査からは、「系外惑星」の他に「望遠鏡」や「大気分析」といったキーワードが引き出された。つまり、これらのキーワードをつなげてみると「望遠鏡で系外惑星の大気分析をした」となる。つまり、今回は「系外惑星をたくさんみつけた」という量的な発見ではなく、「特定の系外惑星の大気を分析して何かがわかった」という質的な成果なのだろう。


・生命を育める系外惑星についての報告か


さらに、もうひとつ大事な前提がある。ここ最近の宇宙探査の目的は、地球外生命の探索がメインになっている。これは、アストロバイオロジー(宇宙生物科学)が扱う研究分野だ。実際に、ここ数年、NASAが開くこのような会見はすべて、アストロバイオロジーに関わる成果報告の場になっている。今回の発見も間違いなく、アストロバイオロジーに根ざしたものだろう。


アストロバイオロジーを軸とした、系外惑星の大気の分析。ずばり、今回の発見内容は、「ある系外惑星に生命が存在しうる大気成分がみられた」というものだろう。たとえば、あるスーパーアース(岩石成分でできている地球の数倍程度の大きさの系外惑星)の大気に水蒸気、酸素、二酸化炭素、メタン、オゾンなどが観測された、などである。


これは一部、上の小野さんの予想ともかぶる。私としては、これにプラスアルファとして、その系外惑星の表面温度が「液体の水」を保持できる範囲内である可能性、つまり、ハビタブル(生命棲息可能)な惑星である可能性が強く示唆されるような内容も、今回の発見に含まれるのではないかと予想する。


今回の観測には、スピッツァー宇宙望遠鏡の分光計などを用いたと思われる(分光トランジット観測)。これは、観測されたスペクトルにより大気の成分を予測する方法である。よって、「地球外生命体そのものの検出」はできない。


以上が、クマムシ博士による今回のNASAの会見内容の予想である。


・さらに突っ込んだ予想をしてみる


さて、おまけで、ここからはさらにもう少し突っ込んだ予想をしてみたい。


今回の成果でフォーカスする系外惑星だが、おそらく新規のものではなく、すでに見つかっている既知のものである可能性が高いと考える。有名なスーパーアースとしてケプラー22bやグリーゼ581gなどがあるが、今回はTRAPPIST-1の系外惑星群をフィーチャーした可能性が高い。


TRAPPIST-1は、太陽系から40光年の距離に位置する、きわめて小さな赤色矮星である。2016年には、このTRAPPIST-1の周りを公転する複数の系外惑星の存在がトラピスト望遠鏡により確認された。これらの系外惑星TRAPPIST-1b、TRAPPIST-1c、そしてTRAPPIST-1dは、生命を宿す可能性があるとして注目されている。そしてこの成果は、今回の記者会見に出席するGillon氏が主導する研究チームによるものだ。


Gillon et al. (2016) Temperate Earth-sized planets transiting a nearby ultracool dwarf star. Nature

de Wit et al. (2016) A combined transmission spectrum of the Earth-sized exoplanets TRAPPIST-1 b and c. Nature


もしかすると、今回は、スピッツァー宇宙望遠鏡によってこれらの系外惑星の大気や表面温度を詳細に解析した結果、「第二の地球」にふさわしい条件をもつことがわかったのかもしれない。そうだとしたら、たったの40光年しか離れていないところにも生命体がいる可能性が出てくるわけで、相当に面白い発見である。


ただ一方で、この予想には不安要素もある。現在の技術では、地球より少し大きいくらいの系外惑星を解析するのは難しい。これらの系外惑星の大気を詳細に分析するためには、まだ打ち上げられていない次世代宇宙望遠鏡「James Webb Space Telescope」の活躍を待たなくてはならないと言われている。スピッツァー宇宙望遠鏡のスペックで、系外惑星の大気をどこまで詳細に分析できるのか、疑問が残る。


若干、もやもやした部分が残るが、これが現段階で私が考えうる、NASA会見内容の予想である。当日の会見を、楽しみに待ちたい。


【追記】2017.2.23


NASA会見が行われ、今回の発見内容が判明した。「ハビタブルなTRAPPIST-1の系外惑星についての新知見」という今回の予想が的中。この発見内容について、解説記事を書いたた。

horikawad.hatenadiary.com


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」373号「NASAの「太陽系外の惑星に関する発見」を予想する」からの抜粋です。


【参考資料】

生命の星の条件を探る

生命の星の条件を探る

クマムシ博士のレビューはこちら。

horikawad.hatenadiary.com


山門 峻: ガリレオ衛星食を用いた分光観測による木星上層大気の構造解析


【関連記事】

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com

horikawad.hatenadiary.com