クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

クマムシ研究のクラウドファンディングを開催中です

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このたび、クマムシ研究プロジェクトのクラウドファンディングを学術系クラウドファンディングサイト「academist」にて行います。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!


極限的乾燥、超低温、超高圧、高線量放射線、そして、宇宙空間の超真空。驚異的な環境にも耐えられるクマムシの強さの秘密をさぐるべく、今回、この生きものでのゲノム編集技術を確立して調べたい。ということで、クラウドファンディングを行うことになりました。ぜひとも皆さんとご一緒に、クマムシ研究を進めていきたいのです。


このクラウドファンディングは、ただの寄付ではありません。資金額に応じて、クマムシにゆかりのあるリターン(お返し)を用意しています。ここでしか入手できないクマムシグッズもあります。また、今回は、共同研究者も募集しています。ゲノム編集や遺伝子操作に明るく、クマムシ研究に興味のある研究者の方、お気軽に声をかけてください。


それでは、今回のクラウドファンディングについて、ちょっと詳しめに説明させていただきますね。


・クマムシの謎を探る冒険


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通常、生物は乾燥してカラカラになったり、多量の放射線を浴びると、タンパク質やDNAといった細胞の部品が壊れてしまいます。部品が壊れて機能しなくなるということは、生物の死を意味します。ファミマで買ってきたくさやに水をかけても、残念ながらいつまでたっても生き返ることはありません。しかし、クマムシは、体がカラカラに乾燥しても水をかければ復活します。


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また、多量の放射線を浴びても、生き続けることができます。つまり、クマムシには細胞の部品を守るような仕組みがあり、その秘密は生命の設計図であるDNAの遺伝子に隠されていると考えられます。


大学生の頃、私はクマムシにすっかり魅せられ、この生きものの研究を始めました。


ある生物を継続的、安定的に実験するためには、実験室で飼育することが不可欠です。ところが15年以上前の当時は、クマムシの基本的な生態もあまり分かっておらず、ほとんどの種類について、どんな餌を食べているかもわからず、飼育できる種類はほんどありませんでした。そこで、実験のためにわざわざ野外でクマムシを採集する必要がありました。


クマムシを実験生物として発展させるために、私は飼育のできる種類のクマムシを探しました。国内外から10種ほどのクマムシを採集し、それらのクマムシにさまざまな餌の候補を与えて、飼育できる種類を選別しました。


そして、餌として生クロレラを与えることで、札幌市から採集した1種類のクマムシを 繁殖させることに成功しました。この茶色いクマムシは、他の種類のクマムシに比べて乾燥や放射線への耐性がひときわ高いことが判明し、横綱級の強さをもつという意味で「ヨコヅナクマムシ」と名付けました。こうして、継続的に実験できるクマムシが得られたのです。


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さらにヨコヅナクマムシの標準系統「YOKOZUNA-1」を作製し、東京大学や国立遺伝学研究所などとの共同研究で、この種の全ゲノムDNAの解読を行いました。その結果、ヨコヅナクマムシには1万数千個の遺伝子が見つかり、その中にクマムシ固有の新規遺伝子の存在が多数確認されました。

また、ヨコヅナクマムシには、乾燥耐性や放射線耐性にかかわる遺伝子の候補が、複数見つかってきました。これらの遺伝子から発現したタンパク質は、乾燥や放射線のダメージからヨコヅナクマムシの細胞を守る役割があると考えられています。ただし、これらのタンパク質が、どこまでヨコヅナクマムシの耐性に関与しているのかは、まだはっきりとわかっていません。


・ゲノム編集でクマムシの謎に迫る


耐性にかかわると考えられている遺伝子が、ヨコヅナクマムシの中で実際にどのような働きをもつかは、これらの遺伝子を壊すことで調べることができます。


ある遺伝子の機能を失わせた時に、もしヨコヅナクマムシの耐性が低下すれば、その遺伝子は耐性にかかわる重要な遺伝子であることが推定できるからです。しかしながら、クマムシの特定の遺伝子を操作する技術は、長い間開発されてきませんでした。


ところがここ数年、生物の遺伝子を改変する、ある革命的な技術が広まってきました。それは、将来にノーベル賞を受賞すると思われる「CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)システム」とよばれる、ゲノム編集技術です。


horikawad.hatenadiary.com


これまで、遺伝子改変は限られた生物でしかできませんでした。しかし、このゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを用いることで、今までに遺伝子操作が難しかった数多くの生物種を遺伝子改変することが可能になっています。


ゲノム編集でヨコヅナクマムシの遺伝子を改変して機能を失わせることで、実際に耐性に関わっている遺伝子レパートリーを特定しやすくなります。つまり、クマムシの常識外れの耐性能力の謎の解明に向けて、大きく前進するものと期待されます。


ただし、クマムシの実験システムはまだまだ未熟な部分もあり、目的達成のためには基本的な技術を段階的に確立していく必要があります。ゲノム編集では、クマムシの生殖巣に外来の 核酸などを注入し、産まれてくる子どもの遺伝子が改変されるかを確認する必要がありますが、この最初のステップをきちんと行うのも、まだ難しいのが現状です。


そこでゲノム編集技術確立のための最初のステップとして、まずは、 クマムシに核酸のmRNAをうまく注入できるかを検討するところから始めます。たとえば緑色蛍光タンパク質GFPを発現するmRNAを卵巣に注入し、産まれてくる子どもが蛍光を発するかを確認します。それと並行して、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを構成するCas9タンパク質とsgRNAもクマムシに注入し、遺伝子改変を起こせるかを検討していきます。


慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究室には、ヨコヅナクマムシの他にも、ドゥジャルダンヤマクマムシなど、数種類のクマムシがいます。ゲノム編集技術の確立に向けて、これらのクマムシも実験に用いる予定です。本研究室の荒川和晴特任准教授らの協力も得て、クマムシ研究を推進していきます。


・クマムシ研究は基礎研究


クマムシの耐性のメカニズムが分かってくれば、生鮮食品、血液、移植用臓器など、将来的な乾燥保存法にも応用できるかもしれません。もちろん、すぐに応用できるようになったり、必ず実現するとは限りません。しかし、このような基礎研究は、のちにどう化けるのかがわかりません。小さなクマムシも、大きな可能性を秘めているのです。


ぜひとも本研究のサポートをacademistこちらからお願いさせていただきたく思います。私どもの船に、一緒に乗ってみませんか?


・共同研究者の募集


また、今回のプロジェクトでは、共同研究者も募集しています。クマムシの実験システムはまだまだ未熟な部分もあり、目的達成のためには基本的な技術を段階的に確立していく必要があります。 まずは、 GFP発現mRNAをクマムシの卵巣に注入し、産まれてくる子どもが蛍光を発するかを確認し、それと並行してCas9タンパク質とsgRNAもクマムシに注入し、遺伝子改変を起こせるかを検討していきます。


遺伝子操作技術などに明るく、クマムシの研究にご興味のある研究者の方、ぜひともこちら(horikawadd@gmail.com)までコンタクトをいただければと思います。また、本プロジェクトにご興味のある企業の方からのご連絡も歓迎しています。


・オリジナルアイテムも。クマムシ研究サポートのリターン


今回、クマムシ研究に支援をいただいた方には、支援額に応じて以下のリターンを用意しました。どれも、クマムシにかかわるものばかりです。ここでしか入手できないクマムシアイテムもあります。


★1,000円
研究報告レポート(画像付き)


ご支援いただいた資金で進めた研究の進捗について、レポートにまとめてお送りいたします。ヨコヅナクマムシのオリジナル画像と一緒にお楽しみください。


★2,000円
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クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)



ここでしか手に入らない、クマムシさんとacademistとのコラボ「クマムシさんCFオリジナルステッカー」をお送りします(デザインはまだ未定)。


★5,000円
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CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


2000円のリターンに加えて、今回の目玉アイテム「かんみんシロクマムシちゃんSサイズぬいぐるみ」をお送りします(画像はサンプルです)。ここでしか手に入らない、プレミアムアイテムです。これよりも支援額の多いプランには、もれなくこの「かんみんシロクマムシちゃんSサイズぬいぐるみ」がついてきます。


★15,000円
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クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


5,000円のリターンに加えて、サイエンスカフェ参加券、最近発刊した著書『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』(サイン付き)、そして大人気のクマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)をお届けします。正直、クマムシさんLサイズぬいぐるみと書籍だけでも普通に買えば1万円をこえるので、このプランが一番お得感があると思います。100個限定リターンですので、お早めに。


★30,000円
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オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


15,000円のリターンに加えて、オンラインサロン「クマムシ博士のクマムシ研究所」への参加券(1年間)をプレゼントします。現在はFacebookの限定グループで運営しており、研究者だけではなく、学生や社会人など、幅広い方々にご参加いただいています。クラウドファンディングを終えた後も、クマムシコミュニティで共に活動していきませんか?


★50,000円
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論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


30,000円のリターンに加えて、本プロジェクトの論文が出版された暁には、謝辞にあなたのお名前を掲載いたします(かなり長い道のりで、実現する保証は100%ではありませんが、ぜひ長期スパンで応援していただけると嬉しいです)。


★100,000円
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クマムシレクチャー参加券
論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


50,000円のリターンに加えて、クマムシ採取、観察、飼育のいろはを伝授する少人数レクチャーにご招待いたします。一口ご支援いただければ、ご家族でご参加いただいて構いません。


★300,000円
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堀川とのお食事会(食事代含む)(注:写真はイメージです) 
クマムシレクチャー参加券
論文謝辞にお名前掲載
オンラインサロン参加券(1年間)
クマムシさんLサイズぬいぐるみ(47cm)
クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説(サイン付き)
サイエンスカフェ参加券
CFオリジナルぬいぐるみ「かんみんシロクマムシちゃんSサイズ」
クマムシさんCFオリジナルステッカー
研究報告レポート(画像付き)


100,000円のリターンに加えて、堀川とのお食事会を設定させていただきます。クマムシ研究の最新動向から、クマムシを題材としたビジネスの話題、人生相談など、なんでも気軽に話しましょう。なお、親子でご参加いただける場合は、一組二人まで可能です。


その他の詳しい情報はぜひacademistのサイトでご確認ください。ご支援もこちらからどうぞ。なお、academistのサイトで使えるクレジットカードの種類が限られていますが、銀行振込も可能なので、 その場合はacademistの方( info@academist-cf.com )までご連絡ください。


というわけで、改めて研究サポートのほど、よろしくお願いいたします。


最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!