むしマガハイライト【Vol. 34, 35, 36】
突然ですがこの言葉、私の恩師の元神奈川大学教授・関邦博さんが好んで使っていたもので、僕も好きな言葉です。
昔も今も、その時点では99.9%の研究者に受け入れられないような非常識とされていた説が実は正しかった、ということがよくあります。
ヒッグス粒子(と思われる物質)の発見もその一例です。
☆ヒッグス粒子提唱の学者「放心状態」、CERNとは皮肉な過去も
http://bit.ly/N86cfA
ヒッグス粒子を超簡単に説明すると、すべての物質に質量、つまり「重さ」を与える実体といえます。1964年にヒッグス粒子の存在を予見したヒッグス氏は自説を論文にまとめてジャーナルに投稿したものの、これは却下されてしまいました。
そしてこの論文を却下した審査員は、今回ヒッグス粒子と思われる物質を発見した欧州合同原子核研究所(CERN)に所属する研究者だったということです。なんとも皮肉な話です。
そしてもうひとつ、例のヒ素細菌の話。
☆ 米科学誌:NASA発表の「ヒ素で生きる細菌」は誤り
http://bit.ly/N9kelp
2010年にDNAにヒ素を材料として使う細菌の発見が報告されました。このあまりにも「非常識な」発見については猛烈なバッシングが巻き起こりましたが、ついに今回、Science誌に反証論文が掲載されました。
僕もこの4月にアトランタで開かれた宇宙生物学会で、この反証論文を出した研究グループの人たちに直接話を聞きました。
☆ヒ素細菌のDNAにはヒ素がなかったーライバル研究者らが発表
http://bit.ly/J1Otuj
やはりというか、残念ながらというか、2011年のヒ素細菌の論文の主張はかなり黒に近いと思われます。
しかし、だからといって、あの2011年の報告の価値がゼロになるわけではありません。
そんなことが本当にあるかもしれない、我々の常識の及ばない生命体が、まだこの地球上に、そして宇宙には存在するかもしれない。
このヒ素細菌騒動では、そんなロマンを感じ、生命科学に興味を持った子どもたちも多いでしょう。そんな子どもたちが将来、型破りな研究者として活躍してくれるに違いありません。
Vol. 34【森山和道インタビューその5「科学イベントに参加する理由」】
森→森山
堀→堀川
森: この3月、堀川さんは色々とイベントもやっていますよね。あれは有料なんですか?
堀: 有料ですね。
森: お客さんは結構来てるんですか。
堀: おかげさまで盛況です。もともと山内さんという宇宙関係のイベントをオーガナイズしている方がいて、彼女から一緒にやりませんかと持ちかけられたのがきっかけなんです。で、最初のイベントは定員が26人だったんですが、予約開始からほぼ一日で満員になりました。
森: それはすごいですね。
堀: ええ......
<本編に続く>
ぱっと見て他の種類と区別できるクマムシが2種類いた。その1つがオニクマムシである。
オニクマムシはとにかく体が大きくーといっても0.7mmほどだがー、他のクマムシに比べて顔が面長である。そして、体全体を左右に振りながら歩き回る。
このどう猛なオーラを放ちつつ歩き回るオニクマムシが、豊平橋の上にかかるM橋の上から採取したコケから多数出てきたのだ。
研究をする時には、ある決まった種類のクマムシを使う必要がある。この場所にコケを採りにいくことで安定してオニクマムシを使うことができるため、この問題はクリアーできたことになる。
そしてもう1種類、きわめて特徴的な見かけをしたクマムシが、オニクマムシが多数見つかったのと同じM橋のコケから、やはり多数出てきた。
このクマムシは体全体が赤褐色をしていた。見つかったその他のクマムシはすべて半透明の白色であり、これは非常に珍しい特徴である。
また、体もずんぐりしていて、肢の動きもヨチヨチボテボテしており、とても可愛らしい。顕微鏡で数時間眺め続けてしまうほど、出てきたクマムシの中で一番愛着のわいた種類だった。
そしてこのクマムシこそが、後にヨコヅナクマムシと命名される、僕の運命
を変えることになるクマムシなのであった......
<本編に続く>
Vol. 36【クマムシトリビア:クマムシ研究に参入するのは今が絶好のチャンス】
読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。
◆ 質問:
クマムシは、世界でどれくらいの数の研究者が研究しているんでしょうか。
◇ 回答:
クマムシの最近の知名度の高さとは裏腹に、クマムシを研究している研究者は、かなり少ないです。
クマムシを研究している研究者の正確な人数は把握できませんが、3年に一度開かれる国際クマムシシンポジウムの参加者数から、おおよその人数を推測できます。
前回、2009年にドイツで開催されたクマムシシンポジウムの参加者数は、70人程度でした。シンポジウムの開催回数を増すごとに参加者数も増えているのですが、世界中からクマムシ研究者が集まっても、この程度です......
<本編に続く>
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