かわけ!クマムシのように。:理系クンと思想クン
最近、思想ブームが来ているらしい。あちこちのウェブ媒体で思想系の論客がインタビュー記事をみかける。
そして、若手の思想系論客、いわゆる思想クンが一部の女子たちにとってアイドル的な存在になっているようだ。
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90年代後半に頭角を現したくるりの岸田繁と漫画「ピンポン」のスマイルによって確立された、メガネ男子ブーム。
その後、文化系メガネ男子や理系メガネ男子などやや細分化されたメガネ男子のブームがあり、そこに群がっていた女子の一部が今、思想クンの深遠な脳内世界に着地点を見いだしたしたように映る。
ところで、文化系メガネ男子の人気に比べて理系メガネ男子(≒理系クン)のそれは明らかに物足りなく感じる。ブームも一瞬で終わってしまった。
これは、文化系女子のマーケットの方が理系女子マーケットよりも圧倒的に大きいことに一因があろう。なんだかんだで、文化系女子は理系男子よりも文化系男子を好む傾向にあるのではないだろうか。
また、文化系の最終的なフォーカスが人に帰結するのに対し、理系の主な関心は人以外のモノや現象であることが多い。たとえ思想クンがどんなに難しい内容の話をしていたとしても、そこには人の根源に関わる何らかのトピックが絡んでいるため、相手の共感が得られやすい。
一方で、理系クンの会話は人以外のモノが中心であるため、そのモノが共通の関心ごとでない限り、共感を呼びにくい。
「クマムシの爪の形や体表のデコボコ模様が種類によって違い、どれも美しい。この違いで種類を見分けることができるんだ」
などと熱く語る人間と長時間一緒にいることに耐えられず、ショートケーキをすくうと見せかけて、理系クンが履いている淡い淡いブルー色のジーンズの上に、力一杯握りしめたフォークを突き立ててしまう女子がほとんどだろう。残念ながら。
そのように悟った私は、理系クンから思想クンへの身分の転換を図ろうと考えた。そして、アンドロメダ流星群を見ながら、こんなふうにつぶやいた。
そしてなんと、このつぶやきを聞いた神様=とある編集者が私に思想系雑誌への論文投稿を依頼してきたのだ。まだユリイカを取り寄せてもいなかったのに。
私はここぞとばかりに「地上最強の動物クマムシと人類」と題した論文を無我夢中で執筆し、投稿した。
結果は、なんと「受理」だった。
そして本日、この論文が思想雑誌「kotoba」の特集、
「新世代が撃つ!ニッポンを変える若手論客たち—縮小均衡の時代、過渡期にあるこの国への処方箋は、古参の権威ではなく、新たなリーダーが見つけ出すにちがいない。1970年以降に生まれた新しい世代、これからの時代を担っていく若き論客たちが、ニッポンを変える。」
にて発表された。
今を代表するイケメン思想クンの面々が活躍しているのと同じ舞台で、晴れて論壇デビューと相成ったのである。
理系のイケメン思想家には茂木健一郎氏、斎藤環氏、福岡伸一氏など錚々たる顔ぶれがいるが、若手で理系出身の思想クンを挙げろといわれると、あまり思いつかない。つまり、理系出身の若手思想クンというニッチなジャンルを、イケメンでもない私が今後独占できる可能性があるのだ。競争の少ない環境をあえて生活の場として選び繁栄に成功した、クマムシのように。
上に述べたように、モノばかりを語る理系クンはとっつきにくいが、理系的視点で思想を論じる行為は理系的な人間の考察に繋がり、共感が得られやすい。つまり、女子にモテやすいだろう。それを狙い、今回の私の論文タイトルにもずばり「人類」の語を入れておいたのだ。
ニッチな思想の世界で生きるという戦略をとることにより、私もついにモテ期をつかむことが可能になるかもしれない。
果たして結果はどうなるだろうか。この検証結果は1年後に報告したい。
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