クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

科学・研究

ヒアリ被害による死亡例とリスクについて

ヒアリ被害による死亡例とリスクについて、あらためて手短にまとめた記事をハーバー・ビジネス・オンラインに寄稿しました。 困ったことに、この環境省の声明を受けて、一部の報道機関が「ヒアリによる死亡例はない」とする誤った情報を流してしまった。この…

「ヒアリ死亡例は確認されなかった」という一部報道を検証する

日本テレビのニュース報道が「環境省の調査により海外でのヒアリによる死亡例は確認できなかった」と伝えていた。 news.livedoor.com 国内で相次いで発見されているヒアリについて、海外での死亡例は確認できなかったとして、環境省はホームページから表現を…

「ヒアリに刺されて年間100人死亡説」を検証する

ヒアリ Solenopsis invicta. 撮影:松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館)(CC BY 4.0) 2017年になって、神戸、名古屋、大阪、そして東京で相次いで発見されている、侵略的外来種のヒアリ(Solenopsis invicta)。ヒアリは人を刺し、確率はきわめて低いものの…

『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る

Image: Insects Unlocked (Creative Commons CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication) 2017年5月、神戸港で国内では初となるヒアリが発見された。さらに同年6月には名古屋港と大阪港でもヒアリが確認された。ヒアリは原産地の南米からアメリカ、オース…

乾いても死なないクマムシの謎。その鍵を握るのは……?

よく聞かれる質問の中に「どうしてクマムシを研究しはじめたんですか?」というものがある。「そのクマムシ帽子はどうやって頭にくっついているんですか?」の次に、頻繁に聞かれる質問である。 クマムシの道に入ったのは、私が大学学部4年生のとき。変わり…

【書評】『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)作者: 前野ウルド浩太郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2017/05/17メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る 書店内でいやでも目を引く、虫取り網をかまえこちらを凝視する全身緑色のバッタ男の表紙。キワモ…

NASAが発表した「太陽系の海に関する知見」について

Credit: NASA/JPL 現地時間2017年4月13日、NASAは土星の衛星エンセラダスから噴き出している間欠泉ガスから水素(H2)を検出したことを発表した。これは、エンセラダスの内部海底に熱水活動が存在し、生命が存在しうる環境が整っていることを示唆している。 …

アストロバイオロジーのトークイベント開催

このブログでもたびたび話題にするアストロバイオロジー。今年はTRAPPIST-1の系外惑星系も話題になりました。はたして、この宇宙には地球外生命は存在するのか。存在するとすれば、それはどのようなものか。 そんなアストロバイオロジーのトークイベント、渋…

クマムシ研究クラウドファンディングの支援者が150名になりました

現在、クラウドファンディングサイト「academist」で、クマムシ研究プロジェクトの支援を募っています。 最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する! クラウドファンディング開始から5日間が経過し、ご支援いただいた方の数が151名になりました。目…

クマムシ研究クラウドファンディングの支援者が100名になりました

academistで行っているクマムシ研究クラウドファンディング、3月2日にスタートしてから3日間が経過し、ご支援いただいた方の数が100名になりました。 最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する! 100名の皆さまに心より御礼申し上げます。 【関連記…

クマムシ研究クラウドファンディングに2日間半で100万円のご支援をいただきました

3月2日にスタートしたクマムシ研究クラウドファンディングが、開始2日間半で100万円の支援が集まりました。 最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する! これで目標金額200万円に対し50%の達成率となりました。うーん、嬉しいですね。ご支援いただ…

TRAPPIST-1の系外惑星群について、観測の背景や今後の展望

先日、NASAらが会見で発表したTRAPPIST-1の系外惑星群について、観測の背景や今後の展望について解説した記事を『iRONNA』に寄稿しました。 ironna.jp 記事タイトルは私ではなく編集部がつけたので盛っているかんじですが、興味ある方はご一読ください。『iR…

NASAが発表した「TRAPPIST-1の系外惑星群」のインパクト

Image credits: NASA/JPL-Caltech (images used under NASA media usage guidelines) アメリカ時間の2017年2月22日、NASAは系外惑星に関する新たな発見について記者会見を開いた。その新発見の内容とは、「ひとつの惑星系に7つの地球サイズの系外惑星が存在…

NASAの「太陽系外の惑星に関する発見」を予想する

Image credit: NASA JPL/Caltech (images used under NASA media usage guidelines) NASAは2017年2月22日(日本時間は23日未明)、「太陽系外惑星についての新たな発見」について記者会見を開催すると公式サイトでアナウンスした。 www.nasa.gov ・系外惑星…

すでに始まっている「子どもの遺伝子改変」

人類の倫理観を変えつつあるバイオテクノロジー「ゲノム編集」と「ミトコンドリア置換」についての解説記事をウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 もしかすると、治療目的で子どもを遺伝子改変することは、10〜20年後には…

【書評】『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題

ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影 (イースト新書Q)作者: 石井哲也出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2017/01/08メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る 生殖医療技術と遺伝子改変技術の目覚しい進展により、人…

クマムシでも分かる。生殖医療・遺伝子治療技術「ミトコンドリア置換法」

2016年と2017年、遺伝子改変を含む生殖医療技術「ミトコンドリア置換法」が施された子どもが相次いで誕生した。今後の生殖医療動向に大きな影響を与える出来事だといえよう。 ゲノム編集による遺伝子治療の臨床試験も本格化し、今後はヒトへの遺伝子改変実施…

クマムシしか研究したくない教員と、アリしか研究したくない学生。

勇ましい姿の岩井くん 私が北海道大学大学院に進学した2002年、研究室の指導教員の東正剛教授の専門はアリの生態学でした。通常であれば、研究室の指導教員は自分の専門に関連したテーマを学生に与えるもの。でも、私はどうしてもクマムシしか研究したくあり…

ハチミツ嫌いのマルクス

マルクスは「ニガイー族」の末裔として生まれた女の子。一族の他の者と同様に、小さい頃より外の世界から隔絶されて過ごしていた。 ここでいう外の世界とは、「アマイー」族の社会のこと。ニガイー族はアマイー族から差別を受け、虐げてられていた。 アマイ…

【書評】『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格書

衛生害虫ゴキブリの研究 (SCIENCE WATCH)作者: 辻英明出版社/メーカー: ?北隆館発売日: 2016/09/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 「黒塗りの家庭内ランナー」としてお馴染みの生きもの、ゴキブリ。 たったの一匹が加工食品に…

人工肉と人工肉が変える道徳

みんな大好きなお肉。人工肉開発の現場と、人工肉が未来の道徳や倫理観を変えうると考察したコラムをウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 今、この記事を読んでいる時点でも、10億頭のブタ、15億頭のウシ、そして190億羽…

ノーベル賞と研究費供給

ノーベル賞受賞に絡んで、研究供給をどうするかという問題について考察したコラムをウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 研究費の集め方や研究活動のやり方も、多様化している。基礎研究の芽を絶やさないためには、科研費…

納豆菌の真実、政府公式発表のXデー近づく

Image: 203gow 納豆菌。学名、バチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)。 納豆菌は栄養源が枯渇すると、芽胞とよばれる休眠状態になる。この芽胞状態では、宇宙空間でも耐えられるほどの不死身ぶりを発揮する。 なぜ納豆菌はここま…

世界初となるゲノム編集技術「CRISPR-Cas9システム」を用いた遺伝子治療が実施される

中国の研究グループにより、世界初となるゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子治療の臨床試験が行われた。 CRISPR gene-editing tested in a person for the first timePD-1 knockout engineered T cells for metastatic non-small cell lung ca…

教授ショートコント「若手研究者問題」

(「若手研究者問題検討委員会有識者会議」終了後、新橋のとある飲み屋で) 有識者教授A「くそう、大学運営費交付金の削減がこのまま続くと、若手研究者を雇用できないじゃないか・・・!」 有識者教授B「でも、もう何年も言ってるけど全然変わんないじゃな…

マンガ版『アカデミック・ラブ』

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NASA発表の「エウロパに間欠泉の存在」の意味を考える

Credit: NASA Goddard 現地時間の2016年9月26日にNASAで会見が開かれ、「木星衛星エウロパから吹き出す水と思われる物質を観測した」と発表した。 NASA’s Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa これは先日、小野雅裕さんや…

NASAの「木星衛星エウロパに関する驚くべき発見」を予想する

Credit: NASA, Michael Carroll NASAオフィシャルサイトによると、「木星の衛星のエウロパの内部海に関連すると思われる活動についての驚くべき証拠」についての記者会見を現地時間9/26の14:00(日本時間9/27未明)に開くようだ。 NASA to Hold Media Call o…

『アカデミック・ラブ』をカクヨムに発表しました

先日の記事『アカデミック・ラブ』を小説投稿サイトのカクヨムに発表しました。 『アカデミック・ラブ』:カクヨム アカデミック・ラブ - むしブロほりかわさんもカクヨムに来ましょう!2016/09/15 09:39このようなコメントをいただき、カクヨムの存在を初め…

アカデミック・ラブ

四月上旬、北関東のとある学園都市でもようやく桜が咲き始めた。それと同時に、この街に植えられている多数のスギに由来する花粉が、少なくない市民を攻撃していた。 T大学は、そんな街の一角を占める総合大学である。日本でも有数の広大なキャンパスを擁し…

【書評】『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』 来るべき未来に備えて正しい理解を

ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー:NHK「ゲノム編集」取材班 著 「今、もっともエキサイティングなバイオテクノロジーは何か」。この質問に対し、多くの生命科学者は次のように答えるだろう。「それはゲノム編集だ」、と。本書は、ゲノム編…

【書評】我々は特別な存在か。宇宙的バランス感覚を養う一冊『生命の星の条件を探る』

生命の星の条件を探る:阿部 豊 著 生命の星、地球。都会のようなコンクリートジャングルにおいても雑草が茂り、アリたちが闊歩する。足下をふと見れば道路の片隅にコケが生育していて、そのコケの中にはクマムシがいる。朝晩の電車に乗り込めば、無数のホモ…

多数の系外惑星はどのように認定されたか

Image Credit: NASA Ames 昨日こちらに書いたように、2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」についての記者発表があった。結果から言うと、ケプラーの観測によりアーカイブされていた太陽系外惑星候補(Kepler object of int…

NASAの「ケプラーによる最新の発見」を予想する

Image Credit: NASA 2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」について記者発表します。 NASA to Announce Latest Kepler Discoveries During Media Teleconference: NASA このようなアナウンスが出ると予想してみたくなるのが…

英語教師に英語力は必要か

日本人は英語の話題が好きだ。どの媒体でもかならず、英語に関する話題を頻繁に目にする。個人的には英語についての議論はあまり興味がないのでスルーするのだが、さきほど目にしたこの記事に書かれていた教師の英語力について、少しだけ気になった。 toiann…

クマムシの味を知る−−人類の偉大な飛躍

図0. 無数のドゥジャルダンヤマクマムシ。 1. はじめに 人類が構築してきた文明のなかでも、食文化は、もっとも重要なカテゴリーのひとつを占める。ヒトの摂食行為は、生命活動に必要なエネルギーを確保するためだけのものではない。摂食行為にかかわる味覚…

STAP細胞のルーツは芽胞様幹細胞(スポアライクステムセル)だった

小保方晴子氏が沈黙を破って執筆した『あの日』を読みました。公式の調査結果などと異なり、若山照彦教授が不正を行った張本人であるかのように書かれていました。このあたりの小保方氏の主張の正当性についてはあえて論じませんが、個人的に印象的だったの…

クマムシが30年ぶりに覚醒

南極クマムシAcutuncus antarcticus。©Kazuharu Arakawa 南極で採取され、30年間保存されていたコケの中にいたクマムシが復活したことを報告した論文が出版された。これはクマムシにおける生存期間の最長記録。 Tsujimoto et al. 2015 Recovery and reproduc…

クマムシ研究所を設立しました

このたび、クマムシ研究所を設立しました。 クマムシ博士のクマムシ研究所 クマムシ研究所では所員とともにクマムシ研究を推進し、人類が共有する科学的知見の集積に貢献することを目標とします。原則として、会費(月額2000円(学生は500円))を払えば誰で…

「クマムシに外来遺伝子17%」は真実か

いっけなーい乾眠乾眠 私ヨコヅナクマムシ!ちょっと最強の緩歩動物でもある時、別の弱いクマムシが細菌の遺伝子どっさり取り入れてる報告が出ちゃってもう大変しかもみんな信じちゃって!?一体私の立場、これからどうなっちゃうの〜!?次回「それはただの…

サイエンスアゴラの「オープンサイエンス革命」に登壇します

2015年11月14日(土)に日本科学未来館で開催されるサイエンスアゴラの「オープンサイエンス革命」にちょこっと登壇します。セッションのオーガナイザーは学術系クラウドファンディングサイト「academist」代表の柴藤亮介さん。当日は研究者と非研究者がどの…

ノーベル賞受賞者トウ・ヨウヨウ氏はダンゴムシをつぶしたか

1951年当時のトウ・ヨウヨウ氏(右)。This image is now in the public domain. 2015年のノーベル医学生理学賞は抗線虫薬剤の開発で大村博士、Campbell博士、そしてトウ氏の三名が共同受賞しました。大村さんは研究もさることながら生き方が格好よい。すで…

クマムシでも分かる。ノーベル賞候補・ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9システム」

ゲノム編集技術、CRISPR/Cas9。今年のノーベル賞(化学賞あるいは医学生理学賞)受賞候補として大きく注目されているが、仮に今年の受賞が無くても、近い将来確実に受賞することだろう。今回は、この革命的テクノロジーの概要をできるだけ分かりやすく解説す…

NASAが発表した「火星表面に液体の水が存在」の意味

Credit: NASA/JPL/University of Arizona NASAが予告していた「火星に関する重大な科学的発見」の発表が、2015年9月28日(日本時間は29日)に行なわれました。会見内容は「現在の火星表面に液体の水が存在することが示唆された」というものでした。 NASA con…

NASAの「火星における重大な科学的発見」を予想する

2015年9月28日(日本時間は29日)、NASAが「火星に関する重大な科学的発見」について記者発表します。 NASA to Announce Mars Mystery Solved: NASA 発表予定時刻から8時間前にこの予告を知り、自分なりに短時間で発表内容を予想してみました。以前、似たよ…

ベジタリアン・チーズに見る、バイオテクノロジーが道徳心を刺激する時代の幕開け。

Photos courtesy of Biocurious バイオテクノロジーが医療や食料生産に応用されるようになって久しい。遺伝子操作により、ヒトのホルモンを効率よく分泌する大腸菌が作られ、害虫に負けない農作物などが作られてきた。ただ、「人工」や「遺伝子組換」という…

共同研究者に「ギブ・ミー・マネー」と言う時代

先週はフランス人の知人一家がこちらに遊びにきました。この知人は、フランスで博士号を取得し、今はアメリカのワシントン大学でテニュアトラック助教をしている知人のアンソニー。そしてアンソニーの妻(台湾人)、子ども、妻のお母さん、そしてアンソニー…

『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ

私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいい: むしブロ+もう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+ 納豆菌は学…

地球外生命体のアジトに潜入

納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいいもう…

京大でお話しします

そういえばここではお知らせしてなかったんですが、パリから帰ってきて久しぶりに日本での生活を始めました。落ち着いたらまたこちらでクマムシの研究をしていくので、みなさんどうぞよろしくお願いします。 さて、博士コンサルの山田光利さんに誘われて、今…