クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

科学・研究

【書評】我々は特別な存在か。宇宙的バランス感覚を養う一冊『生命の星の条件を探る』

生命の星の条件を探る:阿部 豊 著 生命の星、地球。都会のようなコンクリートジャングルにおいても雑草が茂り、アリたちが闊歩する。足下をふと見れば道路の片隅にコケが生育していて、そのコケの中にはクマムシがいる。朝晩の電車に乗り込めば、無数のホモ…

多数の系外惑星はどのように認定されたか

Image Credit: NASA Ames 昨日こちらに書いたように、2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」についての記者発表があった。結果から言うと、ケプラーの観測によりアーカイブされていた太陽系外惑星候補(Kepler object of int…

NASAの「ケプラーによる最新の発見」を予想する

Image Credit: NASA 2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」について記者発表します。 NASA to Announce Latest Kepler Discoveries During Media Teleconference: NASA このようなアナウンスが出ると予想してみたくなるのが…

英語教師に英語力は必要か

日本人は英語の話題が好きだ。どの媒体でもかならず、英語に関する話題を頻繁に目にする。個人的には英語についての議論はあまり興味がないのでスルーするのだが、さきほど目にしたこの記事に書かれていた教師の英語力について、少しだけ気になった。 toiann…

クマムシの味を知る−−人類の偉大な飛躍

図0. 無数のドゥジャルダンヤマクマムシ。 1. はじめに 人類が構築してきた文明のなかでも、食文化は、もっとも重要なカテゴリーのひとつを占める。ヒトの摂食行為は、生命活動に必要なエネルギーを確保するためだけのものではない。摂食行為にかかわる味覚…

STAP細胞のルーツは芽胞様幹細胞(スポアライクステムセル)だった

小保方晴子氏が沈黙を破って執筆した『あの日』を読みました。公式の調査結果などと異なり、若山照彦教授が不正を行った張本人であるかのように書かれていました。このあたりの小保方氏の主張の正当性についてはあえて論じませんが、個人的に印象的だったの…

クマムシが30年ぶりに覚醒

南極クマムシAcutuncus antarcticus。©Kazuharu Arakawa 南極で採取され、30年間保存されていたコケの中にいたクマムシが復活したことを報告した論文が出版された。これはクマムシにおける生存期間の最長記録。 Tsujimoto et al. 2015 Recovery and reproduc…

クマムシ研究所を設立しました

このたび、クマムシ研究所を設立しました。 クマムシ博士のクマムシ研究所 クマムシ研究所では所員とともにクマムシ研究を推進し、人類が共有する科学的知見の集積に貢献することを目標とします。原則として、会費(月額2000円(学生は500円))を払えば誰で…

「クマムシに外来遺伝子17%」は真実か

いっけなーい乾眠乾眠 私ヨコヅナクマムシ!ちょっと最強の緩歩動物でもある時、別の弱いクマムシが細菌の遺伝子どっさり取り入れてる報告が出ちゃってもう大変しかもみんな信じちゃって!?一体私の立場、これからどうなっちゃうの〜!?次回「それはただの…

サイエンスアゴラの「オープンサイエンス革命」に登壇します

2015年11月14日(土)に日本科学未来館で開催されるサイエンスアゴラの「オープンサイエンス革命」にちょこっと登壇します。セッションのオーガナイザーは学術系クラウドファンディングサイト「academist」代表の柴藤亮介さん。当日は研究者と非研究者がどの…

ノーベル賞受賞者トウ・ヨウヨウ氏はダンゴムシをつぶしたか

1951年当時のトウ・ヨウヨウ氏(右)。This image is now in the public domain. 2015年のノーベル医学生理学賞は抗線虫薬剤の開発で大村博士、Campbell博士、そしてトウ氏の三名が共同受賞しました。大村さんは研究もさることながら生き方が格好よい。すで…

クマムシでも分かる。ノーベル賞候補・ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9システム」

ゲノム編集技術、CRISPR/Cas9。今年のノーベル賞(化学賞あるいは医学生理学賞)受賞候補として大きく注目されているが、仮に今年の受賞が無くても、近い将来確実に受賞することだろう。今回は、この革命的テクノロジーの概要をできるだけ分かりやすく解説す…

NASAが発表した「火星表面に液体の水が存在」の意味

Credit: NASA/JPL/University of Arizona NASAが予告していた「火星に関する重大な科学的発見」の発表が、2015年9月28日(日本時間は29日)に行なわれました。会見内容は「現在の火星表面に液体の水が存在することが示唆された」というものでした。 NASA con…

NASAの「火星における重大な科学的発見」を予想する

2015年9月28日(日本時間は29日)、NASAが「火星に関する重大な科学的発見」について記者発表します。 NASA to Announce Mars Mystery Solved: NASA 発表予定時刻から8時間前にこの予告を知り、自分なりに短時間で発表内容を予想してみました。以前、似たよ…

ベジタリアン・チーズに見る、バイオテクノロジーが道徳心を刺激する時代の幕開け。

Photos courtesy of Biocurious バイオテクノロジーが医療や食料生産に応用されるようになって久しい。遺伝子操作により、ヒトのホルモンを効率よく分泌する大腸菌が作られ、害虫に負けない農作物などが作られてきた。ただ、「人工」や「遺伝子組換」という…

共同研究者に「ギブ・ミー・マネー」と言う時代

先週はフランス人の知人一家がこちらに遊びにきました。この知人は、フランスで博士号を取得し、今はアメリカのワシントン大学でテニュアトラック助教をしている知人のアンソニー。そしてアンソニーの妻(台湾人)、子ども、妻のお母さん、そしてアンソニー…

『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ

私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいい: むしブロ+もう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+ 納豆菌は学…

地球外生命体のアジトに潜入

納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいいもう…

京大でお話しします

そういえばここではお知らせしてなかったんですが、パリから帰ってきて久しぶりに日本での生活を始めました。落ち着いたらまたこちらでクマムシの研究をしていくので、みなさんどうぞよろしくお願いします。 さて、博士コンサルの山田光利さんに誘われて、今…

【書評】『ときめき昆虫学』元虫好き少年少女がふたたび虫スイッチを押すとき

ときめき昆虫学: メレ山メレ子 著 ニコニコ学会βのむしむし生放送やむしマガのインタビューでもたびたびお世話になっている虫大好きブロガー・メレ山メレ子さんの渾身の虫本「ときめき昆虫学」が出版された。私と一緒にクマムシを観察したときの様子も収録さ…

【書評】『パワー・エコロジー』生態学者たちの青春研究冒険譚集

パワー・エコロジー: 佐藤 宏明, 村上 貴弘 編 私は大学院生時代、動物生態学の研究室に所属していた。北海道大学大学院の地球環境科学研究科の東正剛(ひがしせいごう)研究室だ。本書「パワー・エコロジー」は、この東研究室に学生として所属していた研究…

クラウドファンディングによる研究費獲得を成功させる方法

前回の記事で紹介した研究活動支援型クラウドファンディングサイト「academist」の第一弾プロジェクト「深海生物テヅルモヅルの分類学的研究」が、残り日数40日以上を残してめでたく目標金額に達成した。自分には関係のないことなのだが素直に嬉しいし、ほっ…

研究活動支援型クラウドファンディングサイトがオープン

STAP細胞騒動の影にすっかり隠れてしまった感があるが、日本初となる研究活動支援に特化したクラウドファンディングプラットフォームサイト「academist(アカデミスト)」がオープンした。 研究費獲得のためのクラウドファンディングサイト「academist(アカ…

【書評】『バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!』DIYバイオムーブメントのすべてがここに

バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック! 先日も少し紹介した、これからのバイオ研究活動の動向がわかるエキサイティングな一冊。 ここ数年、アカデミアの外でバイオの研究を行う「バイオハッカー」がアメリカを中心に増加している。彼らの多くは改造…

アカデミアを卒業します

この4月をもって、パリ第5大学および仏医学衛生研究所との契約が終了します。これにてアカデミアでのキャリアを卒業し、晴れてフリーの研究者になります。ここでのフリーというのは精神的なフリーという意味で、厳密には法人に所属する民間の研究者という立…

クラウド査読により透明になるアカデミア

STAP細胞研究は残念な方向に進んでしまいました。この間もメルマガで色々と書いてきましたが、もうこの研究結果を擁護する研究者はほぼ皆無でしょう。私もだいぶ前に理研への寄附手続きの取り下げを申請し、受理されました。 小保方さんの博士論文の剽窃問題…

「博士メガネ男子論」にみる不器用理系男子の需要

マスコミの報道の中で小保方晴子さんが「リケジョ」と称されていることについて、議論が起きている。確かに、同様の報道の中で男性研究者が「リケダン」と呼ばれないことを考えると、ジェンダーを前に出した呼び方は適当でない。研究所のグループリーダに用…

乾いても死なない線虫のサポーターたち

・線虫シーエレガンス クマムシに比べると、肢もなくニョロニョロしていてあまり可愛くない線虫シーエレガンス(主観)。 シーエレガンス from Wikimedia だが、このシーエレガンスは生物学研究において非常に大きな役割をもっている。大腸菌を餌として爆発…

ヒルはクマムシよりも強いか

・ヒル ヌマエラビルというイシガメの体表に寄生するヒルが、−196ºCもの低温で凍っても生き延びることが分かった。東京海洋大学と農業生物資源研究所の研究グループの研究だ。 A leech capable of surviving exposure to extremely low temperatures: PLoS O…

貢がないオスの精子をブロックするクモ

メスにとってオスの選別はきわめて重要である。ガガンボモドキでは、オスがメスに貢ぐプレゼント餌のクオリティーと量により、交尾の受入れを判断する。 クモの一種、Pisaura mirabilisでも、オスは糸でぐるぐる巻きにした昆虫をプレゼントしてメスに渡す。…