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NASA発表の「エウロパに間欠泉の存在」の意味を考える

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Credit: NASA Goddard


現地時間の2016年9月26日にNASAで会見が開かれ、「木星衛星エウロパから吹き出す水と思われる物質を観測した」と発表した。


NASA’s Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa


これは先日、小野雅裕さん藤島皓介さん、そしてここで予想した内容とほぼ一致。今回の予想は優しかった。ただ、私が希望的観測で予想していたエウロパ全域での間欠泉の存在や、有機物の検出については、今回の発表に含まれていなかった。


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エウロパの地表は厚い氷で覆われており、その下には内部海があると信じられていた。液体の水があれば、生命体が潜んでいても不思議ではない。NASAはエウロパの探査計画に力を入れている。


さらに、もしエウロパに間欠泉が存在し、宇宙空間まで吹き出していれば、探査機が海に潜ったり地上に着陸しなくても、間欠泉を突っ込んで成分を分析したりサンプルを採取することも可能になる。今回、ハッブル宇宙望遠鏡の紫外線観測により、エウロパの7時の部分から水蒸気が噴出していることが示唆された。ちなみに、エウロパから吹き出している水の高さはおよそ200kmに達するらしい。


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Credit: NASA


今回の報告は、NASAの動画で2分ほどでよくまとめられているので、英語だがこちらもおすすめ。



ところで、エウロパから間欠泉が吹き出していることを報告したのは、今回が初めてではない。今回の研究グループとは別の研究グループが、2014年にScience誌にて同様の内容の報告をしている。


Transient Water Vapor at Europa’s South Pole: Science


通常、わざわざ大きなアナウンスをしてまで発表する内容には、大きな科学的新知見が含まれる。今回のように、そこまで新規性が高くない研究結果が大々的に報告されるのはまれだ。


今回の発表に踏み切ったのには、ある理由が考えられる。2014年にScience誌で報告されたエウロパの間欠泉のデータについては、そのあとで別の研究グループが同様の観察をしても確認できず、再現性が取れていなかった。間欠泉が吹き出るのは恒常的ではなく、エウロパと木星の距離によって出たり出なかったりすると考えられたが、「エウロパに間欠泉はない」という主張をする研究者も出てきた。


エウロパから間欠泉が噴出しているのか、していないのか。このどちらかによって、NASAや他の宇宙開発機関によるエウロパ探査の計画は大きく変わってくる。もし間欠泉があれば、上述したように、探査がやりやすくなり、その意義も理解されやすい。予算もつきやすくなる。一方で、もしも間欠泉がなければ、セクシーな研究プロポーザルを書く難易度は上がる。実際に、エウロパ探査に関わる研究者らは、この問題に頭を悩ませていたことがリポートされている。


Plumes on Europa tease NASA mission planners


エウロパに間欠泉があるかどうかは、NASAにとっても組織全体を左右する大きな問題だったのだ。


今回の研究の科学的新規性としては、木星を背景にしてエウロパを観察したことと、間欠泉が出ているのを3回確認したことが挙げられる。今回の成果の発表予定雑誌はAstrophysical Journal誌。良い雑誌だが、前回の研究成果がScience誌に掲載されたことを考えれば(あまりインパクトファクターで比べたくないが)、雑誌のランクが落ちた感は否めない。論文の審査員も、科学的には二番煎じという印象を持ったはずだ。


もちろん、科学的な新規性に乏しいから会見を開く意義がない、というわけではない。このようにして科学研究や宇宙開発の最前線を世界にアピールするのはポジティブな啓蒙にもよいことだ。ふだん、科学研究に興味のない人で、このブログに訪れた人も多いはず。そしてなによりも、個人的には地球外生命体の1日も早い発見を期待している。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」353号「NASA発表の「エウロパに間欠泉の存在」の意味を考える」からの抜粋です。


【参考資料】

生命の星・エウロパ:長沼 毅 著


地球外生命を求めて:マーク・カウフマン 著


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