クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

ダイヤモンドで精子は元気になる

精子の荒ぶる運動性無くして、人類や動物の繁栄はありえない。そんな精子を元気にする方法が、最新の研究成果により提唱された。


Sperm Performance Better on Diamond than on Polystyrene: MSR Proceedings


精子を体外で活き活きと保つことは、とりわけ体外受精を実行する上で大事なことである。


だが、ここで問題がある。精子は体の中では活発に動き回るが、体外では元気をなくしてしまい、あまり長くは生きられないのだ。ペトリディッシュの中で受精させようとしても、あまり上手くいかない。精子のパフォーマンスが落ちるのは、研究者にとっては困りものだ。研究者が男性の場合、萎えていく精子を見ていたら何故か自信も無くなってしまうだろう。


では、どうするか。まず研究者らは、精子のパフォーマンス低下は、ポリスチレン製ペトリディッシュの表面が湿ることで生じる粘着物の毒性が原因であることを突き止めた。研究者らは、様々な素材の上にガン細胞を置いて、その移動性も観察した。移動性は、元気があるかどうかの指標になるからだ。その結果、ガン細胞はペトリディッシュの素材であるポリスチレンの上に置かれた時、移動性が最も低かった。そして、ガン細胞が最も元気だったのは、ナノ結晶性ダイヤモンドの上にいた時だった。


では、精子ではどうだろうか。さっそく研究者らは、「ダイヤモンド・精子実験」に着手した。ペトリディッシュの表面にダイヤモンドでナノレイヤー・コーティングを施し、ダイヤモンド・ペトリディッシュを作成した。そして、その美しいボディに向けて、精子たちを勢いよく放出してあげたのだ。


すると、どうだろう。ダイヤモンド・ペトリディッシュの心地よい感触の中で、精子たちは元気よく暴れ続けた。顕微鏡越しにこの様子を見ていた男性研究者も、自身の能力に根拠のない自信が湧いてきた。


研究者らは「細胞にとってフレンドリーな次世代ペトリディッシュの開発が期待できる」と論文の要旨でしめくくっている。