クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

21世紀は昆虫食の世紀になるかもしれない

2013年5月13日、国連食糧農業機関(FAO)は人類に昆虫を食すことを促す内容を記したレポートを発表した。


虫は未来の食糧源、国連FAOが報告書: AFPBB News


昆虫は栄養価が高い上に飼育による増殖効率がよく、食料として非常に高いポテンシャルを備えている。そこで、積極的に昆虫を食べよう、というわけだ。


「昆虫を食べる」というと、昔は貧困層が主菜の代替食品として仕方なく食べる、というイメージがあった。漫画「はだしのゲン」にも、戦時中の食糧難のために、主人公一家がイナゴを捕まえて食べるシーンがある。戦後になると、やがて食糧難は解消され、わざわざイナゴを捕まえて食べなければ生きられないような国民も、ほぼ皆無になった。


そして飽食の時代になると、再び昆虫を食べ始める層が日本国内に出現した。彼らは当然、食料に困っているわけではない。この世に無数ある食材の一つとして、昆虫に舌鼓を打っているのだ。つまり、昆虫食をグルメとして楽しんでいるのである。


意外に思われるかもしれないが、最近では昆虫を食べる女性も多い。昆虫食に造詣の深いブロガー・メレ山メレ子氏によれば、国内の昆虫食推進組織である昆虫料理研究会には男性よりも女性の方がやや多く在籍しているとのことだ。


国内における昆虫食人口が増加しつつあることは間違いない。しかしながら、現時点で昆虫を食べているのは、やや先鋭化したアーリーアダプター層に限られていることは否めない。


そこで、昆虫食を一般人に普及するためには、まずは著名な文化人や富裕層をターゲットとした高級路線を歩むことが大事だろう。昆虫食をファッションにすることが最初は肝心だからだ。そうすれば、昆虫食はいずれ大衆化していくと思われる。


10年ほど前、私はJAXAが掲げる宇宙農業計画のミーティングに出席したことがある。その席でJAXAの研究者が宇宙食材としてカイコを大プッシュしていたのだが、正直、私は「これはありえない」と思っていた。


だが、今後の昆虫食マーケティング次第では、昆虫はあらゆるシチュエーションで食材として利用される可能性があると、今では感じている。


昆虫食を推進するようなベンチャー企業には、公的機関やクラウドファンディングによる資金も調達しやすいと思われる。NPO法人のような非営利団体がこのような活動を行うのもよいだろう。21世紀には、昆虫食ビジネスが花開くかもしれない。