アリをゾンビにする寄生カビの華麗なる生態
ブラジルの熱帯雨林から、アリに寄生してゾンビアリにする、新種の寄生カビが発見されたという報告がありました。
アリに寄生しゾンビ化させる新種の昆虫寄生菌が発見される(ブラジル)
新種の寄生カビを報告している論文はこちら。
寄生カビである子嚢菌の一種Ophiocordyceps unilateralisが、カーペンターアリに寄生するという事実自体は、古くから知られていました。
この種類のカビには変種(同種類だが形態に差異が認められるもの)が多く知られていました。しかし、これらの変種の多くは、まったく異なる別々の種類に分けられることが示唆されました。今回の研究では、同一種だと思われていたこの寄生カビから、4種類の新種を記載しました。それぞれのカビ1種につき、1種類のアリにだけ寄生するようです。
さて、この寄生カビは、あまりにも華麗な生態を見せてくれるので、ここで紹介することにします。
1. カビの胞子が上から落ちるなどしてアリに接触し、昆虫が外部の空気を取り入れるための器官である気門から侵入する。カビは消化酵素を分泌してアリ体内の組織を溶かしてさらに侵入していく。
2. カビはアリの脳に到達すると化学物質を放出し、アリの行動を変化させる。アリはカビに操られ、カビの生育にとって最適な温度と湿度の環境まで移動する。
3. アリはカビにとって最適な環境まで移動すると、葉の葉脈を大顎でフックするようにしっかりと噛みつき、体を葉にしっかりと固定させる。この行動をとった直後に、カビはアリを殺す。
4. アリの頭部の背側からカビが生えてくる。
5. カビは夜になると子嚢果から胞子をまき散らし、地上にいるアリに感染する。
この生活史サイクルは、だいたい1週間でまわるそうです。
こちらはBBCによる寄生カビの映像。
このカビの生きざま、本当に惚れ々れするような生存戦略ですね。でも人間に寄生するこのようなカビがあるとしたら、やっぱり嫌ですが。
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