多数の系外惑星はどのように認定されたか
Image Credit: NASA Ames
昨日こちらに書いたように、2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」についての記者発表があった。結果から言うと、ケプラーの観測によりアーカイブされていた太陽系外惑星候補(Kepler object of interest (KOI))のうち一気に1284個について「候補」が外れ、太陽系外惑星と認定された。
Briefing materials: 1,284 Newly Validated Kepler Planets: NASA
ここまで多くの系外惑星が認定されるとは、昨日の時点では私は考えていなかった。予想を超えた発表であった。
2009年の打ち上げ以降、これでケプラーが見つけた系外惑星は一気に2000を超えた。今回、なぜここまで多くの系外惑星が認定されたのか。これは、系外惑星候補から「候補」を外すプロセスの進展に起因している。
系外惑星が恒星の前を横切ると、恒星が減光する。もし恒星の減光期間が一定で、周期的に同程度の減光が観測されれば、その恒星の周りを惑星が回っていると推測できる(トランジット法)。
Image Credit: NASA Ames
ケプラーはこのような対象を系外惑星候補としてストックする。そのあとで、この系外惑星候補に対してフォローアップをする。地上から系外惑星候補を詳細分析し、これらが確かに系外惑星なのか、あるいは二つの恒星による連星などによる偽陽性なのかを検証する。この方法だとひとつひとつの系外惑星候補に対して長期的な分析が必要だった。
今回、プリンストン大学のTimothy氏は、プログラミング技術により自動解析法を構築し、多数の系外惑星候補を解析することを可能にした。新しいモデルはフォローアップなしでケプラーからのデータのみで候補が惑星かどうか判断する。これまでに確認されている系外惑星と偽陽性のトランジットパターンと、系外惑星候補のうちに惑星もどきが含まれる確率のデータをもとに構築されている。すべての惑星候補に対して偽陽性確率が0から1のあいだで当てられ、このうち偽陽性確率が1%未満のものを系外惑星として認定する。
この方法により、一気に多数の系外惑星候補の解析が可能となり、今回の発表となったわけだ。ちなみに、今回新たに用いられた手法の制度は、他の研究グループの先行研究によって用いられたフォローアップの手法のそれと大きくは変わらなかったと主張している。
Credits: NASA Ames/W. Stenzel; Princeton University/T. Morton
ケプラー以降の太陽系外惑星調査では、さらに多くの系外惑星候補がデータに入ってくると予想される。このとき、今回のような大量データを自動解析するシステムが威力を発揮するだろう。
さて、これまでに、液体の水が存在しうるハビタブルゾーンにある地球のサイズの2倍以下の系外惑星は12個が確認されていた。今回、この条件に当てはまる惑星が新たに9個も加えられ、合計で21個となった。
Credits: NASA Ames/N. Batalha and W. Stenzel
ところで、昨日、私が行った会見予想に、以下の一文がある。
おそらくですが、ハビタブルゾーンにある地球型惑星が複数見つかった、という内容かもしれません。
ということで、今回の予想はこれまでで一番苦戦したが、この部分については的中した。この調子で観測・解析が進めば、10年以内に地球とほぼ同条件の惑星が意外と近場で見つかる可能性もあるだろう。21世紀は宇宙生物学が隆盛を極めそうだ。
【参考書籍】
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」339号「ケプラーによる多数の系外惑星はどのように認定されたか」からの抜粋です。
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