NASAの「ケプラーによる最新の発見」を予想する
Image Credit: NASA
2016年5月10日(日本時間は11日)、NASAが「ケプラーによる最新の発見」について記者発表します。
NASA to Announce Latest Kepler Discoveries During Media Teleconference: NASA
このようなアナウンスが出ると予想してみたくなるのがクマムシ博士です。近年は二回連続でNASAの会見内容を的中させています。
今回、記者会見で発表される内容は、ケプラーによる新発見とのこと。ケプラーが、どのような発見をしたのか。ついに地球外生命体、それも宇宙人でも見つけたというのか。はたまたクマムシでも見つけたのか。
残念ながら、それはありえません。ケプラーのスペックでは、生命体やその痕跡をつかむことは不可能だからです。今回の発表はまちがいなく、系外惑星についてのアナウンスとなるでしょう。
ケプラーはNASAが打ち上げた宇宙望遠鏡。そのミッションをざっくり言うと、太陽系外の地球型惑星を探索することです。私たち地球生命体は宇宙でぼっちな存在なのか。それとも、宇宙には自分たちと同じような仲間がいるのか。ケプラーのミッションは、この宇宙生物学の大きな命題に挑むために欠かせません。
ケプラーは、光度測定器により、太陽系外の恒星を観測します。もし系外惑星が恒星の前を横切れば、そのときに恒星が薄暗くなります。恒星が暗くなる期間が一定で、さらに、周期的に同程度の輝度の低下が見られれば、その恒星の周りを惑星が回っていると推測できます。このような方法をトランジット法とよびます。
Image Credit: NASA Ames
ケプラーのおかげで、これまでに太陽系外惑星が次々と発見されてきました。液体の水が存在しうるハビタブルゾーンにある地球型惑星も次々と見つかっています。天文学や宇宙生物学におけるケプラーの貢献は計り知れません。
それでは毎度恒例ですが、今回の記者発表内容を予測するにあたり、記者会見に登場するメンバーの専門分野を最大公約数的に絞り込みました。記者会見に登場するメンバーは以下の通り。
1. Paul Hertz(NASA本部の宇宙物理学部門ディレクター)
2. Charlie Sobeck(NASA Ames Research Centerのケプラーミッション・マネージャー)
3. Natalie Batalha(NASA Ames Research Centerのケプラーミッション・サイエンティスト)
4. Timothy Morton(Princeton Universityのアソシエイト・リサーチ・スカラー)
ここで、1.のHertzさんはNASA本部の偉い人なので、今回の研究内容には直接関係ありません。2.のSobeckさんはケプラーミッションを統括するやはり偉い人なので、この方の身辺を掘り起こしても研究内容と直接関係のあるファクツは見つかりそうにありません。
今回の会見発表内容に実質的にかかわっていそうなのは、3.のBatalhaさんと4.のMortonさんだと思われます。Batalhaさんは、ケプラーミッションで2011年にはじめて太陽系外の地球型惑星(Kepler-10b)を見つけた、この道のエキスパートです。Mortonさんは、ケプラーが取得したデータを解析するスペシャリストのようです。
さて、この二人の情報をさらに集めて今回の発表内容を予測しました。が、今回は特異的な情報をあまり得られなかったため、あまり予想を絞りこめませんでした。おそらくですが、ハビタブルゾーンにある地球型惑星が複数見つかった、という内容かもしれません。これが一つ目の可能性。個人的な希望的観測を含めれば、「これまでにもっとも生命が存在しうる条件の星が見つかった」という発表だと嬉しいのですが。
「今回、NASAが事前にアナウンスをして記者発表するのだから、きっと重大な発表に違いない」。そう思いたいのもやまやまですが、実際には、とりたてて騒ぐような発見ではないかもしれません。記者会見のアナウンスにも「重大な発見」とは書かれていませんしね。
さて、会見発表内容の二つ目の可能性として、昨年の「イメージダウン」を払拭するためのものが考えられます。
2015年、フランスやポルトガルの研究グループが、「ケプラーが発見した大惑星(Giant Planet)のうちの半数は実在しないだろう」とする研究発表を行いました。
Kepler’s Giant Exoplanet Candidates — Real or Not Real? : Sky and Telescope
彼らはケプラーにより選定された系外惑星候補を地上から観測・解析したところ、多数の偽陽性が見つかったと報告しています。とくに、恒星から近距離に位置する木星型惑星(ホット・ジュピター)を含む大惑星の半数は偽陽性であると主張。これに対し、今回の記者発表に出席するBatalhaさんとMortonさんは「ケプラーは系外惑星の見落としがないように”甘めに”候補を選定している」と反論しています。また、「大惑星ではないサイズの惑星についての偽陽性の頻度はそれほど高くない」とも主張しています。
この反論はもっともに聞こえます。ただ、パブリックイメージを気にするNASAは、このちょっとした騒動でついたマイナスイメージを挽回する目的もあり、今回の会見を開くのかもしれません。つまり、会見内容の二つ目の可能性として、「ケプラーにより選定された系外惑星候補には真の惑星の割合が高い。偽陽性はあいつらが言うほど多くなんかない」というものが挙げられます。今回のキーパーソンであるMortonさんのウェブにも、「系外惑星候補から「候補」を外す解析をしている」と書いてありますし、こちらの可能性はそれなりにありそうです。
ということで、今回のNASA会見予想でした。ちょっと穿った見方も入ってしまいましたが、実際の会見を楽しみに待ちたいと思います。
【参考書籍】
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」338号「NASAの「ケプラーによる最新の発見」を予想する」からの抜粋です。
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