クマムシの味を知るには
下の写真が何だか判るだろうかだろうか。ただのノイズではない。
少し拡大してみよう。これなら判るだろうか。けっして、コシヒカリではない。
さらに拡大する。
もうお判りだろう。
そう、クマムシである。一番最初の写真はただのノイズではなく、水中で無数のクマムシが戯れているようすだ。今回、10万匹のドゥジャルダンヤマクマムシを用意した。通常、クマムシをここまで集めるのは難しい。世界でもここまでの数のクマムシを増殖させる技術をもつのは、ここ慶応義塾大学クマムシ研究グループくらいだろう。
うちのラボの全クマムシストック。左上がヨコヅナ35万匹、右上がHypsibius230万匹、下がAcutuncus150万匹。これがおそらく人類が一度に保有した乾眠クマムシの最高記録。 pic.twitter.com/BbeXJbAERg
— Kazuharu Arakawa (@gaou_ak) 2016年1月14日
なぜ、今回、ここまでの数のクマムシを集めたのか。それは、クマムシの味を知るためである。クマムシは体長0.3ミリメートル程度の小さな生物だ。数匹を食べたところで、味はわからない。味を認知するためには、膨大な数のクマムシが必要なのだ。
では、なぜクマムシをあえて食する必要があるのか。それは、人類の食文化史における食材レパートリーに、新たにクマムシを加え、そのテイストがどのようなものか、何に近いのかをカテゴライズするためである。もちろん、私としては、この目的のために10万匹のクマムシが供されるのは心がいたむ。だが一方で、知的探求もきわめて重要な活動である。今回の実験が、クマムシ研究所が発足して初めてのプロジェクトである。
今回、10万匹のクマムシを粉砕し、200マイクロリットルの水とともに煮沸して「特別なスープ」とする。このスープの味を判定していただくのは、フランス出身のバイオ研究者、ジョゼフィーヌ・ガリポン博士である。本クマムシ実食実験は、2016年3月23日20:00からクマムシチャンネルにて生放送する(※こちらの放送は有料です。クマムシチャンネル会員は無料、非会員は324円が必要です)。
はたしてクマムシはどんな味がするのか。注意深く検証したい。
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