クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

むしマガハイライト【Vol. 73, 74, 75】


☆━━━━日本対フランス戦

 先週の金曜日に、パリ郊外の競技場Stade de Franceにサッカー日本代表対フランス代表の試合を観に行きました。

 会場はもちろん地元フランス人でいっぱい。僕は日本サポーターの集まるビジター席で観戦しました。ビジター席の日本サポーターには日本人だけではなく、多くの外国人もいました。


 これらの外国人のほとんどが、日本代表のユニフォームを着ていたり日の丸を振ったりと熱狂的に日本を応援していました。中には阪神タイガース西武ライオンズのユニフォームを着た外国人の男性コンビも。KANEMOTOとMATSUZAKA。どれだけ日本びいきなんでしょうか。


 中にはフランス人と思われるオタクっぽい青年がフランス国旗と日の丸両方を掲げて応援していました。おそらく、日本のアニメの熱狂ファンの方と思われます。自分はナショナリズムがだいぶ薄い方ですが、自国が他の国の人から好かれるというのは素直に嬉しいものですね。


Vol. 73【むしコラム「iPS細胞で変わる未来」】


☆━━━━━━━━━━━━━━ノーベル生理医学賞

 京都大学山中伸弥教授と英ケンブリッジ大学ジョン・ガードン名誉教授が、2012年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。両者とも細胞の多能性に関する発見を評価されての受賞です。


☆山中・京大教授にノーベル賞 iPS細胞の作製
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0301P_Y2A001C1000000/?dg=1


☆━━━━━━━━━━━━━━iPS細胞

 私たちの体は1個の受精卵が細胞分裂を繰り返して形作られます。この過程で、高度に専門化した細胞が生まれ、これらが組織化して組織や器官が発達します。


 これを分化といいますが、分化して専門化した細胞は、他の種類の細胞に変わることはない(例えば、上皮細胞が骨細胞にかわることはない)と考えられてきました。


 しかし、ある個人の遺伝情報は体の中の全ての細胞で同一なため、理論上は分化した細胞からも分化決定前の細胞と同様に、他の種類の細胞や、もう一人のクローン個体丸ごとを生み出すことができるはずです。


 2006年、山中教授らは分化した細胞に4種類の遺伝子を導入することで、分化決定前の細胞の状態、つまりどんな細胞にも分化できる多能性を備えた細胞を作り出すことに成功しました。これは人工多能性幹細胞、iPS細胞と名付けられました。


 他人からの臓器移植には拒絶反応という問題がつきまといますが、iPS細胞を用いることで患者自身の細胞から移植用の臓器を作り出すことも可能になります。損傷した組織にiPS細胞を注入して修復させる技術が確立される日も近いでしょう......


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Vol. 74【クマムシ研究日誌「クマムシをかわかそう。」】


  インドネシア産のオニクマムシが凍結耐性をもつこと、しかしその凍結耐性は札幌産のオニクマムシよりも低いことが分かった。


 両者のこの凍結耐性の程度の差は、乾燥耐性の能力の違いに関係しているに違いない。この仮説を検証するため乾燥実験室を作り、乾燥実験にとりかかった。


 クマムシの乾燥耐性能力の度合いは、どのくらいの乾燥スピードで脱水しても生存できるかを観察することで、知ることができる。乾燥スピードは、クマムシの周りの湿度を設定することで調整することができる。冬の乾燥した日には洗濯物の水分が急速に蒸発しが早く乾くが、梅雨のじめじめした日は洗濯物の水分はなかなか蒸発しない。これと同じ原理である。


 このときは、相対湿度を50%から62%まで調整した密閉容器の中でインドネシア産と札幌産のオニクマムシを10匹ずつ乾燥させた。乾燥したオニクマムシに水を与え、復活した個体数を記録した......


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Vol. 75【クマムシトリビア「日の当たる大通りを歩かない」】


読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。


◆ 質問:


  前回ヨコヅナクマシの飼育について質問をした者ですが、もう少し聞いておきたいことがあります。


 堀川さんの論文にはクマムシの培地をモイスチャー・チャンバーという装置に入れて保管すると書かれていますが、これは具体的にどのような装置か教えていただけますか?


 また、クマムシの培地はずっと暗いところで保存していますが、暗く保存する理由は何になりますか?


◇ 回答:


 前回に引き続き、ヨコヅナクマムシの飼育に関する質問ですね。


 まず、モイスチャー・チャンバーについて。これはモイスチャー(湿気)でみたされたチャンバー(容器)のことです。具体的には、タッパーの中に湿ったペーパータオルを敷いたものです。


☆モイスチャー・チャンバー
http://farm9.staticflickr.com/8471/8086031786_e6e522bede.jpg


 ということで、何てことはない、ただの湿ったペーパータオル入りのタッパーなんですね。論文は英語で書かなければならないので「湿ったペーパータオル入りのタッパー」を「モイスチャー・チャンバー」という装置チックな名前に変換してしまいました。


 クマムシの培地をこのような湿気を充満させたタッパーに保存するのは、培地から水分が蒸発するのを防ぐためです。クマムシの培地は寒天の上にクロレラとボルビックのミネラルウォーターを少量入れてあるのですが、日が経つにつれて培地から水が無くなっていき、クマムシの状態が悪化することがあるのです。モイスチャー・チャンバーはこれを防ぐ目的で開発されました。


クマムシの培地
http://farm9.staticflickr.com/8046/8086031736_d74087b19a.jpg


 しかしタッパーに培地が何枚も入っている場合など、タッパーの容積あたりの培地の密度が高い時は、培地から水分が抜ける割合が低く抑えられるので湿ったペーパータオルを入れておく必要は必ずしもありません。


 次に、ヨコヅナクマムシの培地を暗いところで保存する理由について。これは結論から言うと......


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