クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

「やりたいことしかやりたくない」がいいね

サイエンスライター森山和道さんの科学ジャーナリズム論が、深い。


「問い続けることの面白さ」を見出す: moriyama.com


ネットが普及して誰でもこのように世間に向けて気軽に情報発信ができるため、専門家と一般市民を仲介するジャーナリストを経由せずに、専門家が市民に直接語ることができるようになった。私自身も専門家の身分だが、このブログなどで自分や他の人の研究を世間に向けて紹介している。


専門家が直接情報発信をする時代になると、仲介役のジャーナリストの存在意義は希薄になってくる気がする。専門分野に関する知識の量や見識の深さ、そして情報を仕入れるスピードはジャーナリストは専門家には及ばないだろうから。


そんな疑問を、思い切って森山和道さんご本人とお会いした時にぶつけてみた。森山さんの返答は「笑顔を振りまく人と、その笑顔を写真に撮って伝える人は違う」というものだった。前者が専門家、後者がジャーナリストというわけだ。


また、「たまに情報を発信する人と、毎日発信し続ける人は全く別物だよね」とも仰った。これは非常に説得がある。確かに、研究者がジャーナリストのように頻繁に情報を発信をし続けることは片手までは無理だからだ。とりわけ森山さんはウェブのメディアをこれでもかとばかりに使い倒し、本当に毎日何かしら書いている。


私も科学ジャーナリズムのようなことをかじっていると言えなくもないので、その道の大先輩である森山さんのジャーナリズム論は非常に面白かった。しかし、もっと面白かったのは、森山さんの生き様の方の話だった。


もともと、森山さんはNHKの職員だった。しかし、NHKでは将来の出世コースが決まっているため、自分が敷かれたレールに沿った人生を歩んでいくこと情景が目に浮かび、絶望して辞められたとのこと。


NHKの職員といえば、高給取りで名高い。もちろん、安定もしている。そんな好条件を捨てて、不安定な水モノともいえるライターに転職した森山さん。「媚びない」が森山さんの人柄を表す最も適切な言葉だろう。


そして、彼のライター活動を見ていても、非常に正直というか、媚びている感じが全然ないのだ。


他のサイエンスライターやサイエンスコミュニケーターの中には、企業と組んで心にもないことを言ったり書いたりしている人もちらほらいるように見える。食べていくためにはこのような活動も仕方ない面もあるので、企業からお金をもらってステマをする行為を完全に非難しているわけではない。


ただ、森山さんの「やりたいことしかやらねー」的な活動を見ていると、「クマムシしかやりたくねー」と常に言っている私としては、深く共感する部分がある。そう、彼からはロックを感じるのだ。


「やりたいことしかやりたくない」人間というのは、わがままだで魅力的な人が多い。


そんな森山さんへのインタビュー内容を、本日から9週にわたって「むしマガ」に掲載します。科学ジャーナリズムの話から森山さんのメルマガ「サイエンスメール」にまつわる裏話などが満載なので、科学ジャーナリズムに関心のある方、サイエンスライターになりたい方は必読です。


また、森山さんの「サイエンスメール」では近々、森山さんから私へのインタビューが掲載される予定です。自分の発言を改めて読み返してみると、かなりぶっちゃけたことを話していたのに気付きました。


ところで、森山さんは鈴木忠さんと下のクマムシ本も出しています。こちらもクマムシ学的に貴重な資料なので、クマムシマニアを目指すむしブロ+読者は要チェックです。


クマムシを飼うには―博物学から始めるクマムシ研究:鈴木忠、森山和道 著

クマムシを飼うには―博物学から始めるクマムシ研究


ということで、続きはメルマガで。