クマムシ研究日誌
本エントリは4月創刊のクマムシメールマガジン「むしマガ」創刊前第0号に掲載されたコンテンツを転載したものです。
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クマムシ研究日誌
私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。
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【第0回】クマムシを知ったきっかけ
僕がはじめてクマムシのことを知ったきっかけは、テレビ番組の「たけしの万物創世記」で紹介されていたのを見たことだった。1998年のことだ。僕はこの番組が特別好きなわけではなかったが、いつものようにお茶の間でぼーっとテレビを眺めていたら、その変な生き物が目に飛び込んできたのだ。
番組ではクマムシのことを極端な脱水にも超低温にも耐える生物、と紹介していたように思う。水の中を歩いているクマムシが、周囲の水がなくなるにつれて丸まっていき樽状態に変身する様子は、僕の脳に強いインパクトを残した。もともと虫が好きだった僕は、この生物の姿と能力に惹き付けられた。
「こんなすごい生物がいるのか。でも昆虫でもダニでもないみたいだし、何の仲間の生き物なんだろう?」
この番組の放映後しばらくの間、クマムシのことを定期的に思い返していた。
同じ年、僕は神奈川大学理学部応用生物科学科に入学していた。本当は昆虫を研究できる学科の大学に進学したかったのだが、それは叶わなかった。昆虫を研究できる学科のある大学のほとんどは国公立大学であり、高校生の時にろくに勉強をしてこなかった僕は、浪人しても国公立大学に入れるだけの学力はつかなかったのだ。それでも高校時代の知人らは、僕が大学に入れたことに驚いていた。それはそうだろう。高校時代はずっと劣等生で、高校三年生の時の最後のテストでは学年でビリ、3科目で300点満点中17点しかとれなかったような人間が競争倍率が1倍以上の入試をパスしたのだから。
神奈川大学への入学はやや不本意ではあったが、この大学に入ったことでクマムシとの縁ができることになる。大学入学後しばらくしてから受けた講義で、ある教授がクマムシの研究を紹介していたのだ。この教授の本来の専門はヒトの環境生理学で、ヒトが潜水するときに体内で起こる生理学的変化を研究していた。しかし、この教授はクマムシにも興味を持ち、この生き物が水深6万メートルに相当する超高圧環境の下でも生存できることを世界で初めて発見したのだ。講義では、その研究論文がネイチャーに掲載されたと得意気に話していた。僕は、
「おー、クマムシすごいなー。何にでも耐えられるんだなー。」
と感心すると同時に、
「テレビでも紹介されていたし、こんな大学でも研究している人がいるなんて、やっぱり注目されていて大勢の研究者が研究している生物なんだな。面白い生き物だから、そりゃそうだよな」
と思っていた。この時点では、その後自分がクマムシの研究をするなどとは思ってもみなかった。
僕はどちらかというと研究室に籠って実験するというよりは、野外のフィールドに出て動物を追いかけ回すような研究に憧れていた。熱帯雨林とか、南の海をフィールドにするような生態学的な研究だ。昆虫ができればなお良いと考えていたが、大学には昆虫を扱っている研究室がなかったため、他の大学の大学院に進んで昆虫の生態学ができれば良いなぁ、などと思っていた。
大学では学部4年生の時に各研究室へ配属される。そこで、とりあえず生態学をやっている研究室に入ることを検討した。しかし生態学を専門にしていた教授の講義は、教科書をだらだらと板書するような退屈なものであり、その教授にも彼自身の研究内容にも魅力を感じられなかった。この教授からは研究に対する情熱はまったく無いように感じられたのだ。いくら生態学をやりたいとはいっても、そんな教員の研究室に行っても面白くないよなぁ、と感じていた。
そして、結局は例のクマムシを研究していた教授の研究室に入ることになった。それは、この教授がクマムシを研究していたからではなく、彼がたいへんな変人であり、変人好きの私は研究内容よりも彼のキャラクターに惹かれてその研究室の門を叩いたのだった。
<続く>
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「クマムシ研究日誌」の続きは4月創刊のクマムシメールマガジン「むしマガ」で連載します。
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クマムシナイト
【日時】
2012年3月13日(火)
OPEN 18:30 / START 19:30
【会場】
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 アクセス
【出演者】
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國枝武和(東京大学)
鈴木忠(慶応大学)
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【イベント内容】
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チケット購入の方法についてはこちらを参照ください。
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みなさまのご来場を楽しみにお待ちしております。