クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

NASAらが月や火星に設置用の新型原子力発電装置を開発


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これまでに行われてきた惑星探査やその他の宇宙開発活動において必要な電力は、燃料電池や太陽電池によってまかなわれてきました。ただ、これらの発電方法では電力供給が不安定であり、将来の火星移住計画など、人々が他惑星に定住した際の生活を支えるための電力供給方式としては不適切だと考えられてきました。例えば太陽光発電だと、夜は発電できなくなるなど、安定して電力を供給できないなどの問題が生じます。

一方で、原子力発電は、どんな環境であれ電力を産生することができるという利点があります。原子力発電なら太陽光などに依存せず、安定して大きな電力を供給することが可能だからです。

今回、アメリカ化学会にて、NASAとアメリカエネルギー省(DOE)は、地球外惑星用の新型原子力発電装置を開発中であり、2012年にデモ用試作品の完成を目指していることを発表しました。


The first nuclear power plant for settlements on Moon, Mars


現在開発中の新型原子力発電装置の発電原理は、現在稼働している地上の原子力発電所のそれと基本的に同じです。ウランを使用した核分裂反応によって生じた熱を、電力に変換するというものです。

両者の発電の物理学的原理は同じものの、地上の原子力発電と異なる点として、低パワー型であり、中性子反射に異なる素材を使用する点などが挙げられます。また、宇宙への輸送を実現するために、小型化することも大きな特徴です。原子炉そのものの大きさは、幅48センチメートル、高さ76センチメートルほどとかなりコンパクトです。この原子炉に冷却塔を備えたものが、新型原子力発電装置の全体像になります。

この装置一つで、8軒の家に十分な電力を供給することができる試算だそうです。装置の設置場所としては、クレーター、峡谷、洞窟など様々な場所が考えられるとのことです。

「原発のテクノロジーは成熟しており、安価で、安全であり使い勝手が良いため、現在開発中の装置が完成し認可されれば、この小型原子炉は今後の宇宙探査計画においてマストアイテムになるだろう。」、とアメリカエネルギー省のWerner博士は上の記事の中で述べています。

ただ、火星などにおいて、人間活動が狭い地域に限定された閉鎖系空間で原発事故が起こった場合には、非難できるエリアも限られてしまうために大惨事になりかねない危険性がある、と個人的には懸念しています。

惑星現地で十分な安全な自然燃料が確保できない条件下では、原子力発電が最も効率的な発電方式になるのは間違いないですが、今回の福島でのアクシデントのことも良く考えて安全性の高い原子力発電システムを開発、採用する必要があるでしょう。もちろん、最初は月の無人基地などでの設置・稼働から始めることになると思いますが。

それにしても、アメリカの開拓根性は本当に凄まじい、と今回の発表で改めて感じさせられました。