【NASA会見】DNAにヒ素をもつ生物の発見
先日の記事で、本日行われたNASAの記者会見の内容予想をしました。
実際の会見内容は、
「リンの代わりにヒ素をDNAやその他の生体物質にもつ細菌の発見」
ということで、私の予想1.にきわめて近い内容でした。
ここで、今回の新発見の概要をまとめてみたいと思います。
1. カリフォルニアにあるヒ素濃度の高い湖、Mono Lakeから採取した細菌[GFAJ-1]を、リンを含まずヒ素のみを含む培地で培養したところ、増殖した。
2. ヒ素培地で増殖した細菌のDNAやタンパク質にヒ素が取り込まれていた。
3. DNAに取り込まれたヒ素は、もともとあったリンと置き換わっていた。
この研究成果は、今までの生命の概念をもう一度考え直させるようなものです。
先日の記事にも書きましたが、リンは生物を構成する上で必須の元素であり、これまでに生物の必須元素がその他の元素と置き換わった生物は発見されていませんでした。
しかし、NASAのFelisa Wolfe-Simonさんらは、リンとヒ素の物理化学的な性質の類似性に着目し、「もしかしたらリンがヒ素で置き換わった生物がいるんじゃないだろうか?」という仮説のもとに、このような研究を行ってきました。
そして、ヒ素濃度の高い環境から微生物を採取し、実験室内でリンを排除した超高濃度ヒ素環境下でこれを培養し、たしかに細菌を構成するリンがヒ素で置き換わっていることを突き止めたのです。
生物の主要構成元素の置き換えが可能であるということは、
1. 地球上の生命誕生は、リンが使われて起こった場合と、ヒ素が利用されて起こった場合、つまり1度ではない可能性が考えられる。
2. 他の惑星にリンがなくてもヒ素があれば生命がいる可能性がある。
そして、次が個人的にはとても重要だと思うのですが、
3.「生命の形態」というのは我々が考えている以上にバリエーションがある。よって、生命が存在しえる環境の幅は思っていたよりもずっと広い。極限的な環境と思える惑星でも、想像を超えるような生命体が存在するかもしれない。
ということが言えます。
今後、リン以外の主要構成元素が他の元素で置き換わった生物も発見されるかもしれませんね。
さて、今回の発見は、地球上の極限環境にすむ生物を研究することが、地球外生命体の存在を考える上でいかに重要か、ということを教えてくれています。
今回の発見の研究分野である極限環境生物学/宇宙生物学の考え方は、下の本でインタビュー形式にてわかりやすく解説されています。
辺境生物探訪記 生命の本質を求めて (光文社新書) 長沼 毅 藤崎 慎吾 光文社 2010-07-16 |
最後に。
今回の研究成果で、改めて「常識を疑う」ことの大切さに気づかされました。
会見でもFelisa Wolfe-Simonさんが、周囲に流されず、純粋に疑問をもつことの大切さを唱えていました。
人と違うことをするのは勇気が必要ですが、研究者は常に勇気を持ち続けることができるかどうかが、大きな発見をする上で重要なのだと痛感しました。
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