クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

NASAが発表した「TRAPPIST-1の系外惑星群」のインパクト

Image credits: NASA/JPL-Caltech (images used under NASA media usage guidelines) アメリカ時間の2017年2月22日、NASAは系外惑星に関する新たな発見について記者会見を開いた。その新発見の内容とは、「ひとつの惑星系に7つの地球サイズの系外惑星が存在…

NASAの「太陽系外の惑星に関する発見」を予想する

Image credit: NASA JPL/Caltech (images used under NASA media usage guidelines) NASAは2017年2月22日(日本時間は23日未明)、「太陽系外惑星についての新たな発見」について記者会見を開催すると公式サイトでアナウンスした。 www.nasa.gov ・系外惑星…

すでに始まっている「子どもの遺伝子改変」

人類の倫理観を変えつつあるバイオテクノロジー「ゲノム編集」と「ミトコンドリア置換」についての解説記事をウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 もしかすると、治療目的で子どもを遺伝子改変することは、10〜20年後には…

【書評】『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題

ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影 (イースト新書Q)作者: 石井哲也出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2017/01/08メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る 生殖医療技術と遺伝子改変技術の目覚しい進展により、人…

クマムシール付き『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』を出版します。

クマムシ本新刊『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』を2月下旬に出版します。最強生物クマムシの本なので、本書の帯には「死なない!」がやたら目立っていますが、もちろんクマムシも死にます。それも、意外なくらいにあっけなく。本書ではクマムシの…

クマムシでも分かる。生殖医療・遺伝子治療技術「ミトコンドリア置換法」

2016年と2017年、遺伝子改変を含む生殖医療技術「ミトコンドリア置換法」が施された子どもが相次いで誕生した。今後の生殖医療動向に大きな影響を与える出来事だといえよう。 ゲノム編集による遺伝子治療の臨床試験も本格化し、今後はヒトへの遺伝子改変実施…

小飼弾さんのニコニコチャンネル『404ch Not Found』の番組にゲスト生出演します

2017年1月23日(月)20時から小飼弾さんのニコニコチャンネル『404ch Not Found』の番組にゲスト生出演します。 live.nicovideo.jp 私はだいぶ前から小飼弾さんのブログ『404 Blog Not Found』で書評などの記事をよく読んでいたので、今回、ニコニコ生放送で…

2016年にクマムシ博士が掲載された雑誌や書籍など

ジュニアエラ2016年9月号より 2016年もさまざまな出版物などでクマムシ博士を紹介していただいた。ここでは、主なものを紹介させていただく。 DVD付 水の生き物 (学研の図鑑LIVE)作者: 武田正倫出版社/メーカー: 学研プラス発売日: 2016/06/28メディア: 大型…

クマムシしか研究したくない教員と、アリしか研究したくない学生。

勇ましい姿の岩井くん 私が北海道大学大学院に進学した2002年、研究室の指導教員の東正剛教授の専門はアリの生態学でした。通常であれば、研究室の指導教員は自分の専門に関連したテーマを学生に与えるもの。でも、私はどうしてもクマムシしか研究したくあり…

クリスマスにクマムシを24時間生中継します

今年のクリスマスはクマムシチャンネルでクマムシを24時間生放送します。クマムシチャンネルはこちら。 live.nicovideo.jp 中継場所は、渋谷FabCafe MTRLのオープンバイオスペース・BioClub。 Photo credit: BioClub www.bioclub.org 放送は2016年12月24日(…

ハチミツ嫌いのマルクス

マルクスは「ニガイー族」の末裔として生まれた女の子。一族の他の者と同様に、小さい頃より外の世界から隔絶されて過ごしていた。 ここでいう外の世界とは、「アマイー」族の社会のこと。ニガイー族はアマイー族から差別を受け、虐げてられていた。 アマイ…

【書評】『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格書

衛生害虫ゴキブリの研究 (SCIENCE WATCH)作者: 辻英明出版社/メーカー: ?北隆館発売日: 2016/09/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 「黒塗りの家庭内ランナー」としてお馴染みの生きもの、ゴキブリ。 たったの一匹が加工食品に…

人工肉と人工肉が変える道徳

みんな大好きなお肉。人工肉開発の現場と、人工肉が未来の道徳や倫理観を変えうると考察したコラムをウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 今、この記事を読んでいる時点でも、10億頭のブタ、15億頭のウシ、そして190億羽…

ノーベル賞と研究費供給

ノーベル賞受賞に絡んで、研究供給をどうするかという問題について考察したコラムをウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。 研究費の集め方や研究活動のやり方も、多様化している。基礎研究の芽を絶やさないためには、科研費…

納豆菌の真実、政府公式発表のXデー近づく

Image: 203gow 納豆菌。学名、バチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)。 納豆菌は栄養源が枯渇すると、芽胞とよばれる休眠状態になる。この芽胞状態では、宇宙空間でも耐えられるほどの不死身ぶりを発揮する。 なぜ納豆菌はここま…

世界初となるゲノム編集技術「CRISPR-Cas9システム」を用いた遺伝子治療が実施される

中国の研究グループにより、世界初となるゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子治療の臨床試験が行われた。 CRISPR gene-editing tested in a person for the first timePD-1 knockout engineered T cells for metastatic non-small cell lung ca…

【映画レビュー】『X-コンタクト』アクロバティックすぎるクマムシ映画

ここ数年、日本におけるクマムシの認知度が急速に高まってきた。我が国のクマムシ研究は世界的に見ても進歩しており、下の記事でも紹介したように、2016年には日本の研究グループからクマムシの一種であるヨコヅナクマムシの全ゲノム解読と放射線耐性を向上…

マンガ版『アカデミック・ラブ』

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NASA発表の「エウロパに間欠泉の存在」の意味を考える

Credit: NASA Goddard 現地時間の2016年9月26日にNASAで会見が開かれ、「木星衛星エウロパから吹き出す水と思われる物質を観測した」と発表した。 NASA’s Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa これは先日、小野雅裕さんや…

NASAの「木星衛星エウロパに関する驚くべき発見」を予想する

Credit: NASA, Michael Carroll NASAオフィシャルサイトによると、「木星の衛星のエウロパの内部海に関連すると思われる活動についての驚くべき証拠」についての記者会見を現地時間9/26の14:00(日本時間9/27未明)に開くようだ。 NASA to Hold Media Call o…

レールを外れてクマムシ研究

クマムシは極限環境に耐える動物として知られる。私たちは今回、そのクマムシの中でも横綱級の耐性を誇るヨコヅナクマムシの高精度ゲノム配列を決定し、本生物の放射線耐性機構の一端を解明した。本論文はNature Communicationsに掲載された。 Hashimoto T*,…

『アカデミック・ラブ』をカクヨムに発表しました

先日の記事『アカデミック・ラブ』を小説投稿サイトのカクヨムに発表しました。 『アカデミック・ラブ』:カクヨム アカデミック・ラブ - むしブロほりかわさんもカクヨムに来ましょう!2016/09/15 09:39このようなコメントをいただき、カクヨムの存在を初め…

アカデミック・ラブ

四月上旬、北関東のとある学園都市でもようやく桜が咲き始めた。それと同時に、この街に植えられている多数のスギに由来する花粉が、少なくない市民を攻撃していた。 T大学は、そんな街の一角を占める総合大学である。日本でも有数の広大なキャンパスを擁し…

【書評】虫ビギナーにおすすめのポップな虫入門書2冊『恋する昆虫図鑑』『カブトムシゆかりの虫活! 』

私は、自身の研究対象であるクマムシのキャラクター「クマムシさん」を、数年前からプロモーションしている。この活動の大きな目的のひとつは、キャラクターを入り口として人々が生物や自然に親しみを持ってもらうことだ。 実際に、クマムシや昆虫にまったく…

蓮舫氏の二重国籍問題と国籍法

※写真は本記事の内容とは関係ありません 民進党の蓮舫氏が保持している国籍状況が話題になっている。クマムシとは関係ないが、重国籍に関する備忘録として、本件について記そうと思う。 ・重国籍になる可能性 父母が日本人と外国人の組み合わせをもつ子ども…

【書評】『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』 来るべき未来に備えて正しい理解を

ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー:NHK「ゲノム編集」取材班 著 「今、もっともエキサイティングなバイオテクノロジーは何か」。この質問に対し、多くの生命科学者は次のように答えるだろう。「それはゲノム編集だ」、と。本書は、ゲノム編…

【書評】松尾芭蕉マニアもいる?!等身大の北朝鮮がみえてくる『実録・北の三叉路』

実録・北の三叉路:安宿 緑 著 本書は北朝鮮系の人々を描いたノンフィクションである。北朝鮮、といっても、日頃の報道番組が扱うような、政治的な話にフォーカスしたものではない。スポットライトが当てられているのは、北朝鮮に暮らしていたり、北朝鮮にル…

【書評】我々は特別な存在か。宇宙的バランス感覚を養う一冊『生命の星の条件を探る』

生命の星の条件を探る:阿部 豊 著 生命の星、地球。都会のようなコンクリートジャングルにおいても雑草が茂り、アリたちが闊歩する。足下をふと見れば道路の片隅にコケが生育していて、そのコケの中にはクマムシがいる。朝晩の電車に乗り込めば、無数のホモ…

【書評】昆虫研究者に囲われた、セクシーすぎる愛人たちの図鑑『きらめく甲虫』

きらめく甲虫:丸山 宗利 著 「これまでの昆虫図鑑の概念を覆した」。本書のことを、こう紹介しても過言ではないだろう。従来の昆虫図鑑では体現できなかった、圧倒的な質感と光沢。本書では、各ページがひとつの標本箱、いや、宝石箱になっている。その中に…

クマムシ研究所がMaker Faire Tokyo 2016に出展します

直前の告知になってしまいましたが、8月6日(土)と8月7日(日)に東京ビッグサイトで開催されるMaker Faire Tokyo 2016にクマムシ研究所が出展します。 クマムシ研究所:Maker Faire Tokyo 2016 ブースでは私たちが普段研究しているヨコヅナクマムシの展示…