読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

貢がないオスの精子をブロックするクモ


メスにとってオスの選別はきわめて重要である。ガガンボモドキでは、オスがメスに貢ぐプレゼント餌のクオリティーと量により、交尾の受入れを判断する。


クモの一種、Pisaura mirabilisでも、オスは糸でぐるぐる巻きにした昆虫をプレゼントしてメスに渡す。メスがプレゼント餌を食べている間、オスは交尾をすることができるのだ。


Albo et al. (2013) Sperm storage mediated by cryptic female choice for nuptial gifts. Proc. R. Soc. B


プレゼント餌を獲得できるオスは、ハンティング能力に長けている。この能力が遺伝的なものだとすれば、自分の息子も高いハンティング能力を獲得することが期待できる。この能力があれば、当然生存に有利だ。また、メスにクオリティーの高いプレゼント餌を提供できるため、配偶者選択でも有利に働く。メスからすれば、プレゼント餌はオスの質を反映するシグナルとなるのだ。


ただし、このクモでは、プレゼント餌を渡さなくてもオスはメスと交尾できる。プレゼントは義務ではないのだ。しかし、プレゼント餌がない場合は交尾時間が短く、オスは十分な数の精子をメスに渡すことができない。


さらに驚いたことに、プレゼント餌をメスにあげなかった場合は、交尾の単位時間あたりの輸送精子数も著しく低いことが判明した。何らかの形で、メスは「手ぶらオス」からの精子をブロックしているようだ。メスに対してコストをかけないオスは、交尾をしても子孫を残す確率が激減するようになっているわけだ。


その一方で、プレゼント餌を渡して交尾をしたら、さらに自分までメスに食べられてしまう悲惨なオスもいるようだ。ここの説明では、この動画のオスがそうらしい。



貢いだ男の骨の髄までしゃぶるとは、このメスグモはとんだブラックワイフである。なんとおそろしいことか。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」(月額840円・初月無料)の189号に掲載された論文を短縮した簡易論文版です。こちらから購読登録すると完全版を読むことができます。


【関連記事】

ある研究室でのラブストーリー