クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

研究者が自立して研究活動を続ける方法

本日の朝日新聞朝刊で、私の活動が紹介されました。それも、尊敬してやまないバッタ博士と同じコーナーで。光栄な限りだ。


堀川大樹さん「最強」のクマムシを「ゆるキャラ」に仕立てた: 朝日新聞


研究者がキャラクターグッズの販売や有料メルマガの発行を行い、その収益を自らの研究活動の資金にしようする例は自分以外に皆無なため、興味を持っていただいたのだと思う。


クマムシさんtwitter

有料メルマガ「むしマガ」


一方で、海外では寄付によるマイクロファンディングが盛んになってきた。PETRIDISH.orgのような、研究活動に特化したウェブサイトもある。


だが、よほどのことがない限り、寄付のみで個人の研究者が生活し、研究活動を続けるのは無理があるように感じる。上記のサイトなどで寄付を募っている、2〜3人で行う規模の研究プロジェクトでも、日本円でせいぜい数十万円を集めるのがやっとだからだ。


確かにプロジェクトを遂行するための研究資金としては、この程度の金額でも足しになるだろう。しかし、一人の研究者が生活し、研究を持続するためには、到底足りるものではない。現時点では、マイクロファンディングは、あくまでも生活が保証されている研究者のための、研究資金集めと位置づけられる。任期付だったり、どこにも雇われるチャンスのない人間が、研究者としてやっていくための手段にはなりえない。


もちろん、将来、より多くの人々が研究者に寄付をする行為が盛んになり、研究者が人間らしく暮らしながら研究も続けることができる世の中が来るかもしれない。だが、今の時点ではそういう未来は感じられない。あのノーベル賞受賞者の山中伸弥教授でさえ、マラソンを一回走って集まる寄付金が1000万円程度なのだから


そう考えると、研究者や研究機関がコンテンツを作って販売するのが、持続可能な方法のように思う。このやり方の方が、お金を払う方も納得するだろう。私の場合は、自分の研究対象であるクマムシを「クマムシさん」としてキャラクター化し、科学啓蒙やtwitter上での人生相談などの社会貢献を行っている。有料メルマガでは、一般の方にも楽しめるようなサイエンスのコンテンツを提供している。これらのサービスの対価として、お金をいただいている。


キャラクタービジネスは、多くの研究者ができるものではないと思う。だが、自分を支えるための手段として、執筆業は知的労働者には向いているだろう。ブログで専門分野の解説をしつつ、有料メルマガや書籍を出版するなどして、収入を得るやり方だ。雑誌連載や講演も、まとまった収入になる。


このようにして、最低限、自分一人の生活費が確保できれば、研究生やポスドクという立場で研究活動を続けられる。人件費がかからなければ、受け入れてくれる研究室は多いはずだ。


この場合、週末などを執筆作業などに充て、平日は研究活動をするというこのスタイルになる。このやり方の素晴らしいところは、自分のやりたいことができる場所を自分で選べる点だ。世界中の、どこでも。好きな研究を持続してできるのは、研究者にとっては幸せなことだろう。


もちろん、この方法だと、研究室の主催者になるのは、難しいかもしれない。しかし、あまり性に合わない研究をボスにやらされ続けたあげく、任期切れの末に研究の世界からドロップアウトするくらいなら、一生ポスドクの立場で好きなことをやっていた方が、はるかに充実した人生を過ごせるだろう。


私の試みは始まったばかりであり、まだ自立はできる状態ではない。ただ、今後もこの社会実験を継続し、成功させたいと思う。そして、明日がないと思い込んでいる博士たちに、自由になるための道筋の一例を示せるようになりたい。


ということで、改めてクマムシさんむしマガをどうぞよろしくお願いします。