クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

評価されることで生きやすくなる世の中の到来

世の中が評価経済社会に向かって進んでいる昨今、ネット上などで個人に簡単に投げ銭ができるシステムができれば、高い評価を持つ人間がサポーターに支援されることで経済自立できるようになる。私は常々そういう世界になると思っていた。


そして先週、まさにそんなシステムが日本で立ち上がった。


studygift


このstudygiftは学生への支援目的で立ち上がったものらしく、この立ち上げに際して一人の大学生がフィーチャーされている。


この大学生は坂口綾優さんで、彼女は自ら撮影した写真をネットへ投稿し続けることで人気を獲得、Google+で多くのフォロワーを集めて話題になった人だ。坂口さんが注目されているのは、普通の大学生がネットでの活動により類希な高い人気≒評価を集めたことだろう。


そんな坂口さんがstudygift上で学費の支援を募っていた。その額は112万円。このうち25%が自己負担なので、支援額の満額は92万円である。そして驚いたことに、数日で希望額満額が支援者によってペイされたのだ。


これは非常に画期的な結果であり、多くの人々に希望の光を照らすことになるだろう。ちょっと前まで、世の中での知名度がゼロだった普通の大学生が、ネット上で活動することにより人気者になり、たった数日で100万円近くものお金を集めたのだから。


これが意味するところは、ユニークな活動をしていたり、切実な願いがあったり、ものすごく変態だったりと、何かで評価される人が、その評価をお金に換えることが可能になっていくということだ。


これまではCAMPFIREなどプロジェクト単位に寄付をするシステムはあったが、個人への支援システムがなかなか立ち上がらなかったのは、個人に現金が直接流れることで、評価を受けられない人々からの妬みによる攻撃されるのを懸念していたからだろう。


みんなが苦労しているんだから、一人だけ抜け駆けは許せない。私はバイトしているんだから、あなたもバイトしろ。


横並びを美徳とするこの世の中で、まさに出る杭は打たれるし、それを支える運営側も叩かれるのは想像に難くない。そして、実際に、そのようになった。


しかし、この新しいシステムが数年後には根付き、平凡な人々が評価を得るために何かを頑張る、そんな世の中になると期待している。将来に希望を持てなかった人が、何か目標を持って生きる意味を見いだすことができるようになるのではないだろうか。


私も博士号を取得した直後は、どこにも雇ってもらえず無給で研究活動をしていた。私がやっていた研究は自分でももちろん面白く意義のあるものだと思っていたし、周囲にも面白いと言ってくれる人が少なからずいた。


当時、私たちが取り組んでいたある研究プロジェクトの中で、自分が根幹の役割を担っているという自負があった。しかし、私への研究対価は一銭もなかった。他のプロジェクトメンバーは全員、常勤の研究者で当然給料をもらっていた。


同期の同僚たちも、就職活動をすることなく学位を取ったのと同じ研究室でそのまま常勤の博士研究員として研究していた。私は彼らよりも業績があったが、国内10カ所以上の公募に応募してもことごとく蹴られ、運も実力もないと感じた自分はもう研究の世界からは足を洗おうかと思った。


その後結局、アメリカの方から救いの手がのべられ、なんとか研究活動を続けることができたが、もしあの時にこのようなマイクロパトロンシステムがあれば、もっと早く助かったかもしれない。自分の過去の経験をふまえてリスクマネージメントのため、実際に有料メルマガも始めた(もっとも当分の間は、この有料メルマガの収益は全額福島のために寄付することにしたが。福島の子どもたちにクリスマスプレゼントを届けにいきます)。


だから、本気で何かをやりたい人は、こういうチャンスをどんどん利用して、貪欲に突き進んでほしいと思う。このシステムの発展を心より願っている。