クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

クマムシとは?

今回は、私が研究しているクマムシについて軽く紹介したいと思います。

クマムシとは0.1〜1mmくらいの大きさの動物です。ムシという名前が付いていますが、昆虫ではありません。海底から標高5000mくらいの山にも住んでいて、今までにだいたい1000種類以上が記載されています。

クマムシは、そのへんの道端の乾燥したコケからもよく見つかります。私が研究の材料にしているヨコヅナクマムシという種類も、私自身が路上のコケから見つけたものです。

陸に棲むクマムシは、乾燥にさらされると脱水して干からび、仮死状態になります。この状態をアンハイドロバイオシス(無水生命状態)といいます。クマムシはこの仮死状態では、ほとんど代謝がみられませんが、水が与えられると復活します。

また、この仮死状態で9年ほど生存することができます。ちなみに、クマムシの寿命は(種類によって違いますが)だいたい1ヶ月から1年ほどです。

ですので、クマムシのアンハイドロバイオシスのメカニズムを解明することは、他の生物や食品・臓器の乾燥保存の応用につながるのでは、という期待があり、主に日本やドイツでクマムシのアンハイドロバイオシスに関する研究が盛んに行われています。

また、クマムシはアンハイドロバイオシスの状態で宇宙空間の真空に10日間さらされても生き延びることが確認されました(記事)。この実験でクマムシは紫外線には弱いということが分かったのですが、もし紫外線がある程度遮蔽されるような環境—岩石の中など—に閉じ込められたクマムシが宇宙空間を生存したまま遊泳して他惑星に辿り着けるかも...なんていう可能性も無きにしも非ず、かもしれません。

いずれにせよ、このようなクマムシの強さは、地球外生命体の存在可能性を探るのに良いモノサシとなるわけです。現在、私はこのテーマに近い内容の研究をしています。いわゆるアストロバイオロジーというジャンルです。



とまあ、クマムシという生き物はこのようなユニークな研究をする材料としてとても魅力的なのです。

もっとクマムシについて知りたいという方は、以下の書籍をご一読されることをおすすめします。クマムシに対する知識が書かれてるだけでなく、生物学の本質的な面白さが感じられる超良書です。


クマムシ博士の「最強生物」学講座ー私が愛した生きものたちー


クマムシ?!―小さな怪物 (岩波 科学ライブラリー)



また、東大の片山俊明助教のクマムシゲノムプロジェクトは旬なクマムシ情報が満載です。


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