クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

科学・研究

再現性の無い研究論文を減らすにはどうすべきか

自然科学、とりわけ医学生物学系の多くの論文で再現性の無いことが問題になっている。製薬会社が行った追試では、実験結果が再現できなかった論文は70〜90%にまでのぼっているらしい。 NIH mulls rules for validating key results: NATURE | NEWS この問題…

博士のゆくえ:学振に振られても生きる

今年も、日本学術振興会特別研究員、通称学振の採用結果発表の季節がやってきた。twitterのタイムラインも、採択の合否で賑わっていた。 念のため、学振について少し説明しておく。学振は、博士課程の大学院生や、博士号を取得してから5年以内の博士が、生活…

昆虫研究界に新エースあらわる

昆虫は食材としてのポテンシャルが高く、昨今の昆虫食ムーブメントには目を見張るものがあることを以前書いた。 21世紀は昆虫食の世紀になるかもしれない 昆虫食が大衆化するためには、ディープではなくライトに攻めることが肝要だ。昆虫食というジャンル自…

やっぱり日本のアカデミアの将来は明るいかも

メルマガにもTwitterにも書いたのだけれど、ここでも少し書いておきます。 このブログでさんざんネタにさせてもらったバッタ博士が、京都大学の助教に就任されました。 少年の頃からの夢、叶いました。: 砂漠のリアルムシキング おめでとうございます。ネッ…

基礎研究における自由市場からの研究資金集めは経済の論理により捏造を生じやすくするか

研究者が独自に自由市場から研究資金を集めることについて書いた前回の記事には、予想以上に大きな反響があった。公的な資金に頼らずに研究者自らが動くとうこのアイディアについて、賛同するコメントが多く寄せられた。私の活動に触発されて下の科学ブログ…

堀江貴文氏に学ぶ研究者としての生き方

6月23日の日曜日、堀江貴文さんが私のいるフランス・パリ第5大学の研究室まで、クマムシを見に遊びにきてくれた(クマムシの説明についてはこちら)。 堀江さんとはニュースサイトのハフィントンポスト関係者の懇親会の時にお会いしたのがきっかけで、今回の…

遺伝子改変で鼻センされた蚊

吸血するネッタイシマカ image from Wikimedia commons 日本はこれから夏にかけて虫が元気いっぱいにあふれる季節である。虫好きにはたまらない季節が来るわけだが、虫好き人間でも嫌な虫はいる。蚊はそんな虫の代表だろう。 蚊の中には黄熱、デング熱などの…

クマムシの紫外線耐性能力が明らかに

Fig. 1 クマムシさん (イラスト: 阪本かも) 超低温、放射線、高圧、さらには宇宙空間の真空にも耐えられるタフなクマムシ。今回、私 (堀川) たちの研究グループにより、クマムシの紫外線耐性に関する研究報告がオンライン科学ジャーナルのPLoS Oneで発表され…

本日はむしの日!むしブロ+の虫記事ベストセレクション

本日6月4日はむしの日ですね。そこで今回はむしブロ+の記事の中からおすすめベスト5を紹介します。 5. パラサイト男子とその彼を体内に宿した女子の愛の物語 Image: Wikimedia 雌雄同体のワタフキカイガラムシのお話。この虫、メスの体内に宿っている精巣が…

森口氏がiPS細胞由来の心筋細胞を心筋症患者に移植したことを論文で発表

昨年の2012年、iPS細胞関連で話題となった森口尚史氏が論文を発表していた。論文内容は「iPS細胞由来の心筋細胞を心筋症患者に移植した」というもの。これは、昨年に森口氏が新聞社に語っていたのと同じ内容だ。 Moriguchi and Madson (2013) Autologous hum…

ニコニコ学会βのむしむし生放送に登壇しました

今さらのご報告ですが、さる2013年4月27日にニコニコ学会βの1セッション「むしむし生放送」でクマムシの研究について発表させていただきました。あれから1ヶ月経ってないのに、だいぶ前の出来事に感じられますね。 むしむし生放送: ニコニコ学会β (ニコニコ…

クマムシの育て方 (助手ガール編)

以前、このブログでクマムシの採集方法について書いた。今回は「クマムシを飼ってみたい」というマニアックな読者向けに、クマムシの飼育方法を伝授したい。 1000種類以上が知られているクマムシの中で、飼育できる種類はほんのわずかである。クマムシの生態…

21世紀は昆虫食の世紀になるかもしれない

2013年5月13日、国連食糧農業機関(FAO)は人類に昆虫を食すことを促す内容を記したレポートを発表した。 虫は未来の食糧源、国連FAOが報告書: AFPBB News 昆虫は栄養価が高い上に飼育による増殖効率がよく、食料として非常に高いポテンシャルを備えている。そ…

放射能をもつ細菌を投与した「体内被曝療法」で膵臓がんを治す

がんの撲滅は人類が直面しているあまりに大きすぎる課題だ。現代の日本では、がんは死因のトップとなっている。 数あるがんの種類の中でも、とりわけ膵臓がんはやっかいである。膵臓がんは全種類のがんの中で死亡原因が第4位となっている。膵臓がんは転移し…

地上最強の動物クマムシと人類

体長1ミリメートルにも満たない小さな体に4対の肢をもち、宇宙空間に放り出されても生存できる生きもの。それが私の研究対象、クマムシである。 ヨコヅナクマムシ (写真: 堀川大樹・行弘文子) クマムシは緩歩動物とよばれる分類体系上のグループに属しており…

パワーアップした遺伝子コレクター

私が発行する有料メルマガ「むしマガ」が、発行してちょうど1年が経過しました。有り難いことに、同業の研究者をはじめ、学生、出版関係者、主婦、作家、アルファブロガー、弁護士、アーティスト、経営者など、様々なバックグラウンドをもつ方に愛読いただい…

納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった

「納豆菌は、地球侵略のために宇宙から飛来したエイリアンである」 私はこれまで、自らの身を危険にさらしながらも、この重大事実について告発し続けてきた。 みんな納豆菌を甘く見ない方がいいもう一度言う。みんな納豆菌を甘く見ない方がいい。 納豆菌の陰…

むしむし生放送のクラウドファンディングが目標金額に達しました

ニコニコ学会の「むしむし生放送」で呼びかけていたクラウドファンディングが、目標金額に達成しました。 「むしむし生放送〜昆虫大学サテライト」登壇博士たちの旅費とかを集めます! 当初、「こんなに集まるのかしら?」とかなり不安に思っていたのですが…

ニコニコ学会「むしむし生放送」に出演します

4月27日(土)に幕張メッセで行われるニコニコ学会の「むしむし生放送」に出演します。日本の学会で発表するの、久しぶりだ。 ニコニコ学会シンポジウム「むしむし生放送~昆虫大学サテライト」 他の登壇者はおなじみバッタ博士の前野ウルド浩太郎氏、好蟻性生…

ダイヤモンドで精子は元気になる

精子の荒ぶる運動性無くして、人類や動物の繁栄はありえない。そんな精子を元気にする方法が、最新の研究成果により提唱された。 Sperm Performance Better on Diamond than on Polystyrene: MSR Proceedings 精子を体外で活き活きと保つことは、とりわけ体…

研究者が自立して研究活動を続ける方法

本日の朝日新聞朝刊で、私の活動が紹介されました。それも、尊敬してやまないバッタ博士と同じコーナーで。光栄な限りだ。 堀川大樹さん「最強」のクマムシを「ゆるキャラ」に仕立てた: 朝日新聞 研究者がキャラクターグッズの販売や有料メルマガの発行を行…

【書評】『孤独なバッタが群れるとき』バッタ博士の青春

孤独なバッタが群れるとき: 前野ウルド浩太郎 著 (東海大学出版会) 本書は、バッタ博士こと前野ウルド浩太郎氏の初の著書である。前野氏については本ブログでもたびたび取り上げてきたので、ご存知の方も多いだろう。 バッタに憑かれた男バッタに憑かれた男…

不老不死の生き物と幹細胞

人類の夢、不老不死は、まだ現実のものとなっていない。しかし、自然界には、不老不死を実現した動物が存在する。 ヒドラはクラゲやイソギンチャクなどと同じ刺胞動物に属する、不老不死の動物だ。淡水環境に生息し、体長はおよそ1センチメートルほどで、頭…

2012年のむしブロ+5大ニュース

あっという間に今年も終わりですね。今年もむしブロ+をご覧いただいた皆様、どうも有り難うございました。あまりブログを頻繁に更新できなかったのですが、こうして1年を振り返ると色々ありましたね。ということで、2012年のむしブロ+的5大ニュースを取り…

ゆるふわ極限環境アニマル・ヒルガタワムシ

クマムシを採集しようと路上の干涸びたコケを持ち帰って水に浸して観察すると、その中からおびただしい数のヒルガタワムシに出くわすことが、よくある。クマムシが見つからず、ヒルガタワムシだけわんさか出てくるようなこともあり、そんなときは「ちぇっ、…

超高校級とよばれたイケメンサイエンティストの野望

世の中には天才児とよばれる子どもが稀に存在する。ゲノム解析ツールG-languageの開発者、慶應大学特任講師の荒川和晴氏も、少年時代にきっとそうよばれていたに違いない。 4台のスクリーンで解析作業をする荒川氏 (慶應大学湘南藤沢キャンパスにて) 研究室…

パラサイト男子とその彼を体内に宿した女子の愛の物語

我々ヒトの世界では男女という2つの性が存在するのが当たり前だが、世の中にはメスだけで繁殖する動物や、ひとつの体に雄と雌の両方の生殖機能をもつ雌雄同体の動物もいる。 雌雄同体の動物は、卵子と精子をつくることのできる生殖器官、卵精巣をもっている…

バッタ博士によるバッタ本の目次がキてる件

写真: 前野ウルド浩太郎博士 このブログやメルマガでもたびたびフィーチャーし、コアなファンを獲得しつつあるバッタ博士・前野ウルド浩太郎氏が、11月20日にバッタの本を出版することになった。 孤独なバッタが群れるとき<サバクトビバッタの相変異と大発…

科学報道に大切なこと

ある若手記者によって書かれた、科学報道に関する産経ニュースの記事が叩かれている。 科学取材…専門用語飛び交い理解不能の世界、頭が真っ白に: 産経ニュース 内容は、文系出身の若手記者が記事作成のために研究者の取材をするものの、研究者が話す専門用語…

リルログおすすめ記事

2011年1月から、ブログコミュニティー・リルログにてシーズン1からシーズン5までブログを書かせてもらいました。リルログは主にアートや音楽の世界で活躍する数十名のブロガーが各シーズンごとに入れ替わりながら記事を投稿するというユニークなブログコミュ…