クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

クマムシール付き『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』を出版します。

クマムシ本新刊『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』を2月下旬に出版します。最強生物クマムシの本なので、本書の帯には「死なない!」がやたら目立っていますが、もちろんクマムシも死にます。それも、意外なくらいにあっけなく。本書ではクマムシの強さよりも、むしろそういう弱い部分を取り上げています。


クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説

  • 作者: 堀川大樹,ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る


前作『クマムシ研究日誌』や前々作『クマムシ博士の「最強生物」学講座』とは異なり、本書『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』では、クマムシのちょっとした仕草やへんな習性、そして、研究をする上で重要であるものの語られることのないクマムシtipsなどをイラストともに描きました。


クマムシにしても他の生きものにしても、研究論文では書かれないけれど面白い習性がたくさんあるものです。今回、クマムシに日々向き合い、実際に目にしたことを書けるのは、とても楽しいことでした。クマムシ研究者にとってみれば「あるある!」と首肯してしまうようなものばかり。マニアックなネタばかりだけれど、二次情報からは知ることのできない「へんてこ」なクマムシのナマ生態を少しでも多くの人に知ってもらえれば嬉しいです。


ところで、本書はWebナショジオで連載していた『クマムシ観察絵日記』に大幅な加筆をし、コラムを加えたものです。『クマムシ観察絵日記』のWeb連載で掲載していたクマムシイラストはカラーでしたが、書籍化にあたり事情あってイラストは白黒になっています。その代わり、本書の巻頭には付録として11点のフルカラー・クマムシイラストのシールがついています。おとくまむし。


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一見ゆるい感じの本書ですが、中身は割とマニアックな本格派です。クマムシ好きな大人にはもちろん、小さなお子さんがいる家庭で親子一緒に読むのもマル。


本書の目次は以下のとおり。

クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説


目次


ここが最強!クマムシの愛すべきエクストリーム・ポイント



第1章 クマムシとは何者か


 “最強生物”クマムシとは

第2章 クマムシ観察絵日記


 1日目「クマムシ、すべる」
 2日目「クマムシのすみか」
 3日目「屏風のトラ、コケのクマムシ」
 4日目「初対面の感動」
 5日目「マイ実体顕微鏡購入のすすめ」
 6日目「コケの中の乾燥生物フレンズ」
 7日目「一網打尽!クマムシ大量捕獲マシーン」
 8日目「美白のシロクマムシ」
 9日目「クマムシ界の猛獣、オニクマムシ」
 10日目「最高にクールなヨロイトゲクマムシ」
 11日目「クマムシ界の横綱、ヨコヅナクマムシ」
 12日目「ビッグ・クマムシ」 
 13日目「「弱さが武器」のクマムシ」
 14日目「食べたものも丸わかり、すけすけボディー」
 15日目「卵のアート」
 16日目「クマムシをあやつる」
 17日目「息苦しい世の中は死んだふりでやり過ごせ」
 18日目「残酷非道な標本作り」
 19日目「クマムシの種類を決める苦行」
 20日目「肉食クマムシの強力キス」
 21日目「生きたままのミイラをつくる」
 22日目「クマムシ界の猛獣を手なずける」
 23日目「クマムシのすべらない話」
 24日目「モグモグ・ベアーズ」
 25日目「おちょぼ口のミニハンター」
 26日目「クマムシ vs センチュウ」
 27日目「全米が泣いた?!『クマムシの恋人』」
 28日目「母さんが残したシェルター」
 29日目「シェルター・ベイビーズ」
 30日目「クマムシの餌を引きはがす」
 31日目「死を招く天敵「モヤモヤ」」
 32日目「悪夢」
 33日目「クロレラとクマムシ」
 34日目「浪費家の恋人に貢げ」
 35日目「手放せない緑の絨毯」
 36日目「さよなら絨毯」
 37日目「女子会好きなヨコヅナ」
 38日目「目に焼きつける、クマムシの色」
 39日目「天空からのインベーダー」
 40日目「ヨコヅナの強さ」
 41日目「透明ドレスのひみつ」
 42日目「寒がりの道産子」
 43日目「橋本聖子仮説」
 最終日「グッバイ人類」

第3章 もっとクマムシ


 クマムシはいかに最強なのか
 鳥羽水族館で生体展示
 クマムシを食べてみた


あとがき


すでにアマゾンで本書の予約注文が始まっています。初版の部数はあまり多くないので、万一の品切れに備えて今のうちに予約しておくと確実に入手できると思われます。


最後に、この本ができた経緯について少し。


ことの始まりは、『Webナショジオ』の人気シリーズ『研究室に行ってみた』でした。2011年、作家の川端裕人さんがこのシリーズの取材のために、私が当時いたフランスの研究室まで来ていただき、記事にしていただきました。


natgeo.nikkeibp.co.jp


翌年の2012年、この記事を担当していたWebナショジオ編集者の齋藤海仁さんから、「クマムシを題材に何か連載ができないか」という打診をいただきました。「クマムシ4コマ漫画」や「クマムシかるた」などの企画案が出たのだけれど、いろいろあってボツに。


齋藤さんがアイディアを練った末、私がクマムシを観察していて面白いと感じたところなどを絵日記風にして紹介する『クマムシ観察絵日記』の連載が決まり、2014年にWebナショジオで始まりました。斎藤さんから最初に連載の企画をいただいてから、実に2年が経過していました。


natgeo.nikkeibp.co.jp


『クマムシ観察絵日記』の連載は2016年に終了。その後、ナショジオからの書籍化が決定。こうして、本書『クマムシ博士のクマムシへんてこ最強伝説』の出版に至りました。書籍化にあたって、ナショジオの葛西陽子さんと尾崎憲和さんにはたいへんお世話になりました。


ナショジオの皆さん、イラストを手伝っていただいたsakiさん、クマムシ研究仲間、クマムシたち、そしてクマムシファンのみなさまがいたからこそ、本書が世にでることになりました。少しでも多くの人が本書を手にとってくれますように。


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クマムシでも分かる。生殖医療・遺伝子治療技術「ミトコンドリア置換法」

2016年と2017年、遺伝子改変を含む生殖医療技術「ミトコンドリア置換法」が施された子どもが相次いで誕生した。今後の生殖医療動向に大きな影響を与える出来事だといえよう。


ゲノム編集による遺伝子治療の臨床試験も本格化し、今後はヒトへの遺伝子改変実施が急速に行われるようになる可能性がある。ここでは、世界で物議を醸しているミトコンドリア置換法について解説する。


ミトコンドリアとは


私たちの細胞には、ミトコンドリアという細胞小器官が多数存在する。ミトコンドリアには、生命活動に必要なエネルギーを作る役割がある。


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図1. クマムシと細胞とミトコンドリア


細胞に存在するDNAの大部分は核の中に収められているが、ミトコンドリアにも独自のDNAがある(ヒトでは37の遺伝子がある)。細胞と同様に、ミトコンドリアもDNA複製を伴いながら分裂、増殖する。


ミトコンドリアはもともとは別個の細菌であり、それが細胞内に入り込んで共生したと考えられている(細胞内共生説)。ミトコンドリアはSF小説『パラサイト・イヴ』のネタにもなっているので、知っている人も多いかもしれない。


ミトコンドリア病


ミトコンドリアDNAは、核DNAに比べて変異しやすい。ミトコンドリアDNAに起きた有害な変異が修復されないと、正常に機能しない異常ミトコンドリアが生じる。


ミトコンドリアに異常があると、エネルギーを生産する機能が低下する。ミトコンドリア病患者は、脳や筋肉など、とくにエネルギーを要する部位で障害が出やすくなる。ミトコンドリア病の15%ほどはミトコンドリアDNAの変異が原因である(残りは核DNAの変異が原因)。*1


生まれてくる子どものうち5000~10000人に1人が、ミトコンドリアDNAの異常に起因したミトコンドリア病に疾患しているとされる。ミトコンドリア病の重篤さの程度は細胞内の異常ミトコンドリアの割合や変異したミトコンドリア遺伝子の種類によるが、多くは成人する前に死亡してしまう。


すべてのミトコンドリアは母親の卵からのみ引き継がれる。よって、母親のミトコンドリアDNAに異常がある場合、その母親の子どもには異常ミトコンドリアが引き継がれることになる。ミトコンドリア病の有効な治療法は、限られているのが現状だ。


ミトコンドリア置換法


ミトコンドリア置換法は、生まれてくる子どものミトコンドリア病を予防する方法として考案された。この方法では、卵の中の異常ミトコンドリアを、第三者の女性の卵に由来する正常ミトコンドリアで置き換える。


ミトコンドリア置換を施された受精卵には、卵由来の核DNA、精子由来の核DNA、そして第三者に由来するミトコンドリアDNAを含む。つまり、この受精卵から発生した子どもは三人の親に由来するDNAをもつことになる。ミトコンドリア置換法は別名「3人体外受精法(three-person in vitro fertilization (IVF))」ともよばれる。


ミトコンドリア置換法には前核移植法(pro-nuclear transfer (PNT))と卵子紡錘体移植法(maternal spindle transfer (MST))がある。


前核移植法


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図2. 前核移植法


1. 体外受精により、異常ミトコンドリアをもつ母親の卵(母親の核DNAを含む)と、父親の精子(父親の核DNAを含む)を受精させる。

2. 受精卵から核DNA(前核DNA、母親と父親の核DNAを含む)を取り出す。

3. 正常ミトコンドリアをもつ第三者女性の卵(第三者女性の核DNAを含む)と、父親の精子を受精させた受精卵を用意する。この核DNA(第三者女性と父親の核DNA)を除いた受精卵に、2の前核DNA(母親と父親の核DNA)を注入する

4. 正常なミトコンドリアをもつ受精卵ができる。細胞分裂がしばらく進んだ後に、母親の子宮にいれる。


卵子紡錘体移植法


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図3. 卵子紡錘体移植法


1. 変異ミトコンドリアをもつ母親の卵から核DNA(紡錘体-染色体複合体)を取り出す。

2. 正常ミトコンドリアをもつ第三者女性の卵から核DNA(紡錘体-染色体複合体)を移植する。

3. 体外受精により、2の卵に父親の精子(父親の核DNAを含む)を受精させる。

4. 正常なミトコンドリアをもつ受精卵ができる。細胞分裂がしばらく進んだ後に母親の子宮にいれる。


ミトコンドリア置換法の実施


2015年、イギリス議会下院は、ミトコンドリア置換法の臨床試験実施の開始について賛成多数で承認された。だが、生殖医療技術の臨床試験実施の可否について実行力をもつイギリスのヒト受精・胚機構(Human Fertilisation and Embryology Authority (HFEA))は慎重な姿勢をとっており、当国での臨床試験は2016年まで実施されていなかった。


2016年、アメリカのNew Hope Fertility CenterのJohn Zhangらは、ミトコンドリア置換法をメキシコで実施したと発表した。母親のヨルダン人女性は、ミトコンドリアDNA変異に起因したリー症候群というミトコンドリア病を患っており、すでに4人の子どもを流産で失い、さらに2人の子どもも出生後に亡くしていた。


メキシコでは、ミトコンドリア置換法の臨床試験の実施についての法的規制は設けられていない。今回は卵子紡錘体移植法により、母親の核DNAを取り出したのち、正常ミトコンドリアをもつ第三者女性の卵に移植した。その後、父親の精子を受精させ、受精卵を母親の子宮に戻した。


この臨床試験により、男の子が誕生。子どもにはとくに目立った異常は観察されていないという。メキシコの他に、ウクライナや中国など、ミトコンドリア置換法について法整備がされていない国ではすでにこの技術の臨床試験が実施されたとする報告がある。


ミトコンドリア置換法のデメリット


一見すると、ほとんど問題のない治療に見えるミトコンドリア置換法だが、懸念材料は多い。まず第一に問題なのが、卵から卵に核DNAを移植する際に、母親由来の異常ミトコンドリアを少なからず持ち込んでしまうことだ。


技術的な限界で、母親の卵から核DNAを取り出す際に、どうしても異常ミトコンドリアも一緒に取り出してしまう。今回メキシコで行われた臨床試験でも、生まれた子どもの細胞には少なからず異常ミトコンドリアが含まれていた。


持ち運ばれた患者由来の異常ミトコンドリアの割合がたとえわずかだとしても、細胞分裂を重ねるごとにこの異常ミトコンドリアの割合が著しく増加する場合があることが、生体外で行われた実験で確認されている。もしそのようなことが今回の男の子に起これば、成長とともにミトコンドリア病を発症してもおかしくない。


また、核DNAとミトコンドリアDNAは進化の過程で協調関係を築いてきたことを示唆するデータも報告されている。異なる系統のマウス間で正常ミトコンドリアを交換した場合、生体リズムが変化したりストレス耐性が低下するなどの生理的影響が見られた。*2


ミトコンドリアはエネルギー生産だけではなく、幅広い細胞機能にも関わっている。ミトコンドリアにはまだ生物学的に未知の部分が多いため、ミトコンドリア置換法には大きな潜在リスクがある。生まれた子どもが異常をもつようになる可能性は高いかもしれない。ヒトへの実施を本格化する前に、ミトコンドリア置換法により出生したマウスやサルなどの実験動物を長期観察する必要があるだろう。


また、これはミトコンドリア置換法に限らないが、遺伝子が改変された子どもの人権も考慮しなければならない。今回のミトコンドリア置換法の実施により誕生したのは男の子なので、この子のミトコンドリアが子孫に受け継がれることはないが、女の子の場合には子どもにも第三者のミトコンドリアを受け渡すことになる。


今後の展望


現時点では、ミトコンドリア置換法を実際に採用するのは時期尚早に思える。ミトコンドリア置換法の実施には、患者由来の異常ミトコンドリアの持ち込みをできるかぎりゼロに近づけること、そして、出生した子どもの長期的な安全性が保証されることが重要だろう。


だが、すでに臨床試験が始まったあとでは、法規制のゆるい国ではミトコンドリア置換法による治療が次々と行われていきそうだ。これは生殖系列への遺伝子改変に対する意識ハードルが下がることにもつながる。ゲノム編集による生殖系列への遺伝子改変も次第に行われる可能性が高まったと言える。


最初は治療目的で、そして徐々に、より優れた特徴をもつ子どもを誕生させる目的で「デザイナーベイビー」を作ろうとする親と医者が出てくる日も、そう遠くないのかもしれない。ただ、今の段階でミトコンドリア置換法を取り入れるのは、上記の理由から、思いとどまったほうがよいだろう。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」366号「クマムシでもわかる。生殖医療・遺伝子治療技術「ミトコンドリア置換法」」に掲載されたコンテンツの一部です。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料)

「クマムシ博士のむしマガ」は、まぐまぐnoteで購読登録できます。

【参考資料】

生殖医療の衝撃: 石原 理 著

ミトコンドリア・ミステリー: 林 純一 著

ヒト生殖細胞系におけるミトコンドリア置換の開始がグローバルポリシーーに与える潜在的影響

ミトコンドリア遺伝病の生殖系列細胞の遺伝子治療へむけた紡錘体置換法

UK moves closer to allowing ‘three-parent’ babies

Reproductive medicine: The power of three

‘Three-parent baby’ claim raises hopes - and ethical concerns

Three-person embryos may fail to vanquish mutant mitochondria

World hails UK vote on three-person embryos

The hidden risks for ‘three-person’ babies

New Herbert lab Nature paper reinforces mitochondrial replacement Achilles heel

Open letter to UK Parliament: avoid historic mistake on rushing human genetic modification

Mitochondrial replacement, evolution, and the clinic

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*1:核DNAにもミトコンドリアの機能を制御するタンパク質がコードされている。このうちの76の遺伝子によってコードされるタンパク質は、ミトコンドリア由来のペプチドと相互作用する。

*2:これとは逆に、異なる系統マウスのミトコンドリアを置換することで長寿になったとする報告もある。

小飼弾さんのニコニコチャンネル『404ch Not Found』の番組にゲスト生出演します

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2017年1月23日(月)20時から小飼弾さんのニコニコチャンネル『404ch Not Found』の番組にゲスト生出演します。


live.nicovideo.jp


私はだいぶ前から小飼弾さんのブログ『404 Blog Not Found』で書評などの記事をよく読んでいたので、今回、ニコニコ生放送でゲストとして呼んでいただきとても嬉しい。


当日はクマムシの話を中心にする予定だが、何しろあの博学な小飼さんなので、どんな方向に話が飛んでいくかわからない。地蔵にならないように、話すネタのストックを用意しておこう。


あ、ニコニコといえばクマムシチャンネルもよろしくどうぞ。


ch.nicovideo.jp


今年は一、二週間に一度くらいのペースで生放送をする予定。1月14日(土)も一人語りをする。


live.nicovideo.jp

2016年にクマムシ博士が掲載された雑誌や書籍など

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ジュニアエラ2016年9月号より


2016年もさまざまな出版物などでクマムシ博士を紹介していただいた。ここでは、主なものを紹介させていただく。


DVD付 水の生き物 (学研の図鑑LIVE)

DVD付 水の生き物 (学研の図鑑LIVE)


まずは水の生物をフィーチャーした図鑑。クマムシのパートへの資料提供および監修を、荒川和晴さんと藤本心太さんと一緒に担当した。


この図鑑はクマムシもさることながら、他にもあまりスポットライトが当たらない生物も含め、かなりの水生生物の分類群をカバーしている。掲載種数は1300種。系統樹も入っていたりと、なかなか本格的な作りになっているので、大人も興奮できる。


これをながめておけば、海辺や川辺に出かけたときも、楽しさはひとしおだろう。付録のBBC制作DVDも楽しい。年月を経ても読まれ続けるであろう、力の入った図鑑だ。


本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)

本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)


こちらは言わずと知れた堀江貴文さんの著書。ベストセラーになっているようだ。本書では「言い訳しないで行動する」例として、クマムシ博士の活動を取り上げていただいた。他には、カンボジア国籍を取得しオリンピックに出場した猫ひろしさんも紹介されている。


フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。

フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。


こちらは、以前クマムシ一日バーを開催させていただいたバー「月に吠える」のオーナーのコエヌマカズユキさんの著書。ウェブマガジンでもインタビューしてもらった。


magazine.moonbark.net


昨今、フリーライターやウェブライターがジャンクページを量産する駒として扱われている報道をよく目にするが、本書ではそうならずにライターとしてやっていくための指南が示されている。 


フリーライターとして強みをもつ方法はいろいろあるが、そのひとつが誰にも負けない専門知識を身につけることだ。その例として、本書はクマムシ博士を紹介している。


本書はライター志望者に向けて書かれているが、どんな仕事にも参考になるTipsも多い。とりあえず、物書きをする人は読んでおいて損はない。


ジュニアエラ 2016年 09 月号 [雑誌]

ジュニアエラ 2016年 09 月号 [雑誌]


子ども向けジャーナル『ジュニアエラ』9月号には「“最強”生物「クマムシ」のナゾ」と題したインタビュー記事を掲載いただいた。最近はクマムシを知っている子どもが増えて嬉しい限り。


www.aquarium.co.jp


鳥羽水族館の機関紙『TOBA SUPER AQUARIUM』2016年夏号(No.69)には「クマムシ生体展示への道」と題した記事を寄稿させていただいた。鳥羽水族館では、不定期でヨコヅナクマムシの生体展示が行われている。


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Educo No.40/2016年初夏号 - 教育出版


こちらも教育雑誌。Educo No.40/2016年初夏号で、クマムシ研究についての取り組みについて書かせてもらった。


あとはテレビや新聞などにもいろいろと取り上げてもらったが、ここでは割愛する。2017年はクマムシ博士の単著新刊も出る予定なので、またしかるべき時期に告知させていただきたい。


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クマムシしか研究したくない教員と、アリしか研究したくない学生。

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勇ましい姿の岩井くん


私が北海道大学大学院に進学した2002年、研究室の指導教員の東正剛教授の専門はアリの生態学でした。通常であれば、研究室の指導教員は自分の専門に関連したテーマを学生に与えるもの。でも、私はどうしてもクマムシしか研究したくありませんでした。


東教授は何も言わずに、こちらの好きなようにクマムシの研究をさせてくれました。このあたりの経緯は『クマムシ研究日誌』にも書いた通りです。


horikawad.hatenadiary.com


そして時は流れて2014年。私は慶應義塾大学で学生を指導する立場になっていました。そのときに一人の学部1年生を指導することになりました。


彼の名は岩井碩慶くん。小さいときから昆虫が好きで、大学に入る前からアリやハチといった社会性昆虫の研究をしていたといいます。高校時代には、学生向けのコンペティションでも賞をもらったりと、なかなかガチ度の高い学生です。


「アリの研究しかしたくない」。岩井くんは、そう主張していました。私はアリについては素人です。研究室の他の教員にも、アリについて明るい人はいません。


私は、岩井くんの指導をすることにしました。12年前に「クマムシしかやりたくない」といってアリの専門家に指導してもらった因果で、今度は「アリしかやりたくない」という学生の指導をすることになったわけです。


岩井くんは、トゲアリという種類のアリの研究をスタートさせました。トゲアリは、他種のアリの巣を乗っ取り、その巣にいる働きアリを奴隷として使う変わった生態をもちます(社会寄生という)。


ある日、山梨県の山中で友人らとトゲアリの調査をしていた岩井くんは、偶然、トゲアリの巣から、青みがかった珍しいアリスアブの幼虫を発見しました。


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発見したアリスアブの幼虫。Iwai et al. (2016) Biodiversity Data Journalより。(CC BY 4.0)


これはおそらく、ケンランアリスアブとよばれる、アリの巣で生活する好蟻性のアブの種類だと推測されました。成虫のケンランアリスアブはその名の通り、メタリックで絢爛な輝きを放つ、美しいアブです。


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ケンランアリスアブの成虫。Iwai et al. (2016) Biodiversity Data Journalより。(CC BY 4.0)


これまでに、ケンランアリスアブの成虫がトゲアリの巣の近くを飛び回るのは目撃されていましたが、本種の幼虫がトゲアリの巣の中から発見されたことはありませんでした。


岩井くんは、見つけたアリスアブの幼虫を持ち帰って飼育し、成虫まで育てることに成功しました。成虫は確かにケンランアリスアブのように見えました。しかし、岩井くん、そして私も、確信をもってアリスアブの種同定をすることはできません。


しかし、我々はラッキーでした。ケンランアリスアブの記載者で、この生物の第一人者が日本にいたのです。『昆虫はすごい』や『アリの巣をめぐる冒険』の著者で、ドキュメンタリーTV番組『情熱大陸』にも上陸経験をお持ちの、九州大学総合博物館の丸山宗利さんです。また、丸山さんの研究室にいる「裏山の奇人」こと小松貴さんもアリスアブに明るい。


岩井くんは以前から丸山さんと小松さんにコンタクトを取っていましたし、私も2013年のニコニコ学会β「昆虫大学サテライト:むしむし生放送」という一般向けのイベントでお二人と一緒に登壇したことがあり、個人的なつながりがありました。


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さっそくお二人にメールでうかがうと、岩井くんが見つけたアリスアブはやはりケンランアリスアブで間違いなさそうとのこと。さらに研究の新規性もあるので、論文にもなりそうだ、とおっしゃっていただきました。


そこで丸山さんと小松さんに共同研究をお願いし、論文に必要なデータを取っていただいたり、アドバイスをいただいたりしながら、投稿論文の執筆を進めました。


そして2016年末、まだ学部生の岩井くんが筆頭で、オンライン科学ジャーナル『Biodiversity Data Journal』にケンランアリスアブの論文が無事に掲載されました。


goo.gl


これまでは学生限定のコンペなどでの入賞しか経験がなかった岩井くんにとって、国際科学ジャーナルへの論文投稿の経験はハードで堪えた部分もあったようでした。でも、学部生でこのような経験ができたのは非常にラッキーなこと。ぜひとも、この経験を今後につなげてほしいところです。


私としても、今回はクマムシ以外のトピックで初めて責任著者を担当(丸山さんと共同責任著者)し、なかなか勉強になりました。それにしても、もともとは一般向けのイベントでご縁ができた丸山さんや小松さんと、こうして共著で論文を出すことになろうとは、愉快な成り行きですね。


「アリしかやりたくない」と言う学生のお手伝いが、できたこと。「クマムシしかやりたくない」と言う私の指導をしてくれたアリ専門家の恩師に、14年の時を経て、ちょっとだけ恩返しができたような気がした2016年でした。


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※本記事は有料メルマガ「むしマガ」365号「2016年、クマムシ博士的5大ニュースを振り返る」に掲載されたコンテンツの一部です。

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クリスマスにクマムシを24時間生中継します

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今年のクリスマスはクマムシチャンネルでクマムシを24時間生放送します。クマムシチャンネルはこちら


live.nicovideo.jp


中継場所は、渋谷FabCafe MTRLのオープンバイオスペース・BioClub。


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Photo credit: BioClub


www.bioclub.org


放送は2016年12月24日(土)正午12:00から翌日12月25日(日)正午12:00まで。


当日の中継内容はこちら。

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クマムシ博士が飼育しているクマムシをクリスマスイブからクリスマスにかけて24時間生中継します。

ヨコヅナクマムシを乾燥した仮死状態(乾眠)にして、耐久実験の生中継も。クマムシが復活するかをみんなで一緒に見守りましょう。

クマムシ博士主催のクマムシ研究所の仲間とのクマムシトークもあります。

synapse.am


ニコニコ動画のアカウントお持ちでない方はアカウント作成をしてをログインをすると見ることができます。


www.nicovideo.jp


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今年のクリスマスはリア充も非リア充もクマムシとともに聖なる夜を過ごしましょう。

NAVERまとめでキュレーションしました

先日の記事をNAVERまとめでキュレーションし、キュレーションデビューをしました。

matome.naver.jp


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クマムシ博士はLINE株式会社に抗議します

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苦労して撮った  クマムシの写真

 

気づいたらNAVER  無断転載ん

 

ひとつだけじゃない  いっぱい確認

 

その写真  おまえのじゃなくmine

 

すかさず抗議の  メールを送信

 

なのに削除  しないんだLINE

 

厚顔無恥さ  転載の天才ん

 

著作権語る  ドヤ顔役員

 

もうけっして  ゆるさないん

 

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BLOGOSへの本ブログ記事転載終了のお知らせ

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本ブログ『むしブロ』は、キュレーションサイト『ハフィントンポスト』に続き、同じくキュレーションサイト『BLOGOS』への記事転載を本日をもって停止することになりました。


『BLOGOS』の運営母体であるLINE株式会社が運営する他サービスによる不適切行為が改まるようすがなく、本ブログがそのような企業と連携するのは、全国一億クマムシ&クマムシ博士ファンに対し不誠実だと判断した次第です。


これで『むしブロ』は外部サイトへの配信がなくなることになります。『むしブロ』の記事が読めるのは『むしブロ』だけ。読者の皆様には、今後も変わらぬご厚誼とご指導のほどをよろしくお願い致します。


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個人はマイメディアをもとう

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ハフポの編集長はじめご担当者から、連絡とお詫びをいただいた。


メールでは「過去に転載した記事を順次削除する」とおっしゃってくれた。


また、「記事毎に確認を取る約束を両者でしていたのに、その周知が担当者間に不徹底だったために迷惑をかけた」とも書かれていた。


以前メールで削除要請をしたとき、ハフポからのお返事メールには「一度公開した記事については削除をしないのでご理解ください」としか書かれていなかった。このときは、こちらからの転載記事の削除要請には、まったく取り合ってくれなかった。今回は、対応が180度かわった。


でも、そんな食い違いは、もうどうでもいい。


晴れて、ハフポに掲載された記事はすべて非公開となった。このブログで削除のお願いをしてから丸一日足らずでの迅速な対応をしていただいたことに、感謝したい。


今回の社会実験でわかったことは、個人はマイメディアをもったほうが良いということ。


個人が組織に対してクローズドな環境でお願いをするのは、クマムシがゾウに歩んでいくようなものだ。相手にされずに潰されてしまうのがオチ。とくにハフポには1000人以上の寄稿者がいると思われるので、そのうちの1人の存在感なんてゼロに近い。


今回みたいにブログ=メディアを使えば、その関係性は1メディア対1メディア。クマムシでもゾウと対等になれる。同じ内容のお願いでも、無視せずに対応してくれる。公開ラブレターはつよい。


だからコンクルージョンとしては、やっぱり、弱者ほどマイメディアをもつべきなんだということ。


あと、みんな、これくらいでハフポのことを嫌いにならないでね!


References

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わけ

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※追記:お願いを聞いてもらえました


お願いのわけ。


1. 自分のブログの記事からハフポに寄稿しても良いものをハフポ担当者に送って掲載してもらう、という双方の約束を取り交わす。

2.いつの間にか、自分のブログに投稿した記事が、断りなくハフポに転載されるようになる。

3.こちらが転載を許可していないハフポの記事の削除を求めたら、ハフポ側から「それはできん」、私「アーレー」。

4.なんかハフポの規約がヤバいことに気づく。

コンテンツを本サイトに投稿することで、お客様は当社(中略)において当該コンテンツを発表し、また改変、修正または保存する権利、ならびに本サイトのプロモーションおよびマーケティング目的で当該コンテンツを配布および利用する権利を与えることになります(中略)お客様は、お客様による本利用規約違反または表明・保証違反の結果、当社が被る損害について責任を負います

ハフィントンポスト利用規約


6.でも私が「サイトに投稿」したわけじゃないし・・・と再びワケを説明して削除を求めるもハフポ側に拒否される。

5. ブログでよびかけて事態が改善するかの社会実験をしてみる ←今ココ


以上。


ハフポさん、これ見てたらよろしくまむし。


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願い

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※追記:お願いを聞いてもらえました


おお、記事たちよ。


私の記事たち。


こんなところに落とすのではなかった。すまなかった。


だがもう拾えぬ。


強大な強者の前には、クマムシ博士はあまりにも非力だ。


神はいつも、強者の方を愛でる


私が生みの親なのに。


著作権など、何の役にも立たぬ。


お願いはした。でも強者は強い。強いから強者なのだ。


いっこうに首を縦に振ってくれない。とても頑固だ。


でも、もう一度だけ、お願いだ。非力な社会的弱者のぼくからの、さいごのお願い。


ハフィントンポストさん。


ぼくが著作権をもつ記事たちを、消してください。


全部・・・。


お願いです。


お願いです。


お願いです。


ハフポさん、これ見てたらよろしくまむし。


※追記

わけはこちら

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ハチミツ嫌いのマルクス

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マルクスは「ニガイー族」の末裔として生まれた女の子。一族の他の者と同様に、小さい頃より外の世界から隔絶されて過ごしていた。


ここでいう外の世界とは、「アマイー」族の社会のこと。ニガイー族はアマイー族から差別を受け、虐げてられていた。


アマイー族の世界は、怪獣のすみかの地下に広がっている。ここの怪獣たちは、朝食には決まってハニートーストを食べる。怪獣はハチミツをてんこもりに塗りたくったトーストを食い散らかす。このハチミツつきトーストのかけらは、アマイー族の聖食となる。


この日はアマイー族が感謝祭を開いていた。アマイー族は、怪獣からの恵みであるハチミツを皆で大いに楽しんでいた。


ニガイー族のマルクスは、生まれてから一度もハチミツを口にしたことがなかった。


ニガイー族の家庭では、魚の骨や腐ったキャベツなど、粗末な食べ物しか食卓に上らない。これまでずっと、マルクスは、アマイー族がハチミツを美味しそうにほおばるのを、遠くから見ていることしかできなかった。


しかしこの日、マルクスは己の欲望をどうしても抑えることができなかった。ついにニガイー族侵入防止用バリケードを突破し、アマイー族の居住区域に侵入。


すると、大通りでハチミツをふるまっていた優しそうなおじさんと目が合った。


「お、可愛いお嬢ちゃんだね。おや、まだハチミツ食べてないのかい?ほら、どうぞ」


マルクスは安堵した。自分がニガイー族とはバレていない。おじさんからもらったハチミツを口にした。夢にまで見た、黄金色に輝くごちそうだ。


だが、どうしたことだろう。ハチミツを口に含んだとたん、この世のものとは思えない苦味がマルクスの脳天を直撃した。


「げええええええええええ」


それはまるで、この世に溢れる怨念と憎悪のすべてを凝縮したかのような苦しさだった。吐いても吐いても、苦味がとれない。涙も止まらない。


「こ、こいつ!ニガイー族だ!!」


さっきまで笑顔だったおじさんが、平成13年夏場所千秋楽の貴乃花のように、鬼の形相になって叫んだ。


それを聞きつけた他のアマイー族たちが、いっせいに集まってきた。アマイー族の一味は、マルクスに容赦ない暴行を加えた。そして、マルクスは再びニガイー族の居住域に連行された。


マルクスは、ニガイー族が差別されている理由を理解した。


アマイー族の聖食であるハチミツを食べることができないニガイー族は、呪われた一族というレッテルを貼られていたのだ。だから多数派のアマイー族は、ニガイー族を隔離する政策をとっていたわけだ。


生まれながらにしてハチミツを受けつけない、自らのニガイー族の血を呪うマルクス。やがて部屋から一歩も出ないまま、大人になった。


そんなある日、天から、これまでに見たことのない紫色の物体が、アマイー族のエリアの方で無数に降っているのを目にした。どうやら、怪獣が落としたようだ。


久しぶりに家の外に出てその光景を眺めていると、ハチミツと同じ、苦々しい臭気を発していた。たまらず、家の中に引き返した。他のニガイー族も皆、おびえて家の中に引きこもった。


それからしばらくすると、遠くから声が幾重にもなって響いてきた。アマイー族の、断末魔の叫びだった。


ただならぬ事態に、ニガイー族はおそるおそるアマイー族のエリアまで様子を見に出かけた。そこで見たものは、アマイー族の屍の数々だった。アマイー族の脇には、あの紫色の物体が転がっていた。


この物体の正体は、食毒剤だった。グルコースに毒を混ぜたものだ。グルコースはアマイー族の好物なので、アマイー族は皆この物体を食べた。


ニガイー族はグルコースを食べない。苦いからだ。ハチミツが嫌いなのも、グルコースが多量に含まれているためだ。しかしこの習性のおかげで、ニガイー族は生き残ることができた。


その後、マルクスとニガイー族は子孫を繁栄させ、自分たちの新しい世界を作った。もう、アマイー族からも誰からも迫害されることはない。ようやく訪れた平和を、皆が謳歌した。


(おわり)


【参考文献】

Wada-Katsumata et al. (2013) Changes in taste neurons support the emergence of an adaptive behavior in cockroaches. Science, 340: 972-975.


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」155号「ハチミツ嫌いのローラ」に掲載された記事を一部修正したものです。

【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料)

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【書評】『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格書

衛生害虫ゴキブリの研究 (SCIENCE WATCH)

衛生害虫ゴキブリの研究 (SCIENCE WATCH)


「黒塗りの家庭内ランナー」としてお馴染みの生きもの、ゴキブリ。


たったの一匹が加工食品に混入しただけで、ひとつの企業を存続の危機に追いやるほど、この生物は忌み嫌われている。だがはたして、この同居人の実際の姿を知る日本人は、いったいどれくらいいるだろうか。


何のてらいもないタイトルの通り、本書は、屋内で遭遇する衛生害虫ゴキブリの研究書である。著者は、民間の研究所などで50年以上にわたってゴキブリ研究に従事してきており、ちなみに昭和7年生まれ。そして本書には、著者らによる圧巻の研究成果の数々が、これでもかと言わんばかりに詰め込まれている。表紙に描かれたイラストこそゆるふわの脱力系だが、けっして生半可な気分では読了できない本格的なハードコア・ゴキブリ書に仕上がっているのだ。


本書のページを開くとまず目に飛び込んでくるのが、巻頭カラーグラビアを飾っているゴキブリたちだ。これらはいずれも日本の屋内に出没するゴキブリ種ばかりだが、この巻頭グラビアで真っ先に紹介されているのがヤマトゴキブリであるところに注目したい。外来種も多くいるゴキブリたちの中から、あえて日本産のヤマトゴキブリをトップに推してきた著者の心意気がうかがえよう。


この巻頭カラーグラビアはただ鑑賞するだけのものではなく、それ以上の意味をもつ。このグラビアこそが本書内のゴキブリ簡易区別表と密接に連動しており、ゴキブリの種類を調べるのにたいへん便利な仕様となっているのである。本書を利用し、ゴキブリホイホイなどにトラップされたゴキブリの種を同定するのも楽しいだろう。もちろん、子どもの自由研究にも最適だ。


よく知られているように、ゴキブリは三億年前から地球上に存在している。私たちの大先輩である。この生物は世界に3500〜4000種ほどおり、日本では50種強が確認されてきた。しかもこれだけの種数を誇りながら、屋内に出没するのはこのうち1%にも満たない。ほとんどの種類は、森などに生息する屋外性である。


日本でみられる主な屋内性のゴキブリはヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、クロゴキブリ、トビイロゴキブリ、チャバネゴキブリなど。ワモンゴキブリやチャバネゴキブリはアフリカ地域などに由来する外来種である。近年は人類の生活環境が都市化し、冬でも温暖な家屋や施設が増えた。これに伴い、亜熱帯・熱帯性ゴキブリが本州にも進出している。


ゴキブリは増殖力が高いイメージがあるが、著者らによる実際の研究成果から、それが具体的な数字となって証明されている。たとえば、亜熱帯性のチャバネゴキブリ10匹の集団に3グラムの餌を1週間に一度のペースで与え続けると、40〜50日後にはなんと1500匹ほどにまで増える。ゴキブリの餌となる食べかすを、家の中で1週間にたったの3グラム(1日あたり0.4グラム)落としていたら、それだけでゴキブリが大増殖する可能性があるわけだ。


これが1週間に10グラム、いや、20グラムだったら・・・・・・。考えるだけで恐ろしい。仮にゴキブリの99%を駆逐したとしても、ちょっと掃除をしないだけですぐにゴキブリが爆発的に増えることがわかるだろう。ゴキブリを増やさないために肝心なのは、こまめな掃除ということに尽きるのだ。


不死身なイメージのあるゴキブリだが、意外な一面もある。暴れるゴキブリの脚をつかむと簡単にちぎれてしまったり、そのやわらかなボディも強く挟めば死んでしまう。実験作業のときは、ゴキブリをうっかり殺めてしまわぬように炭酸ガスで麻酔するなどして、つまんで移してやる。実は、か弱い生物なのである。ちなみに実験用のゴキブリは調製された餌と水で飼育されているため、とくに不潔ということはなく、素手でつかんでも特に問題ない。


本書には他にもゴキブリの生態や駆除のコツが目白押しだ。とりわけ圧巻なのは、ゴキブリの冬眠についての研究成果の数々である。ゴキブリの休眠をさまざまな温度や日照条件で検証した著者らのデータが紹介されているのだが、クロゴキブリなどは寿命が長いため、ひとつの実験に丸一年以上かかることもある。


このような実験を行うためには、日々のゴキブリ個体のチェックが欠かせない。温度管理も、実験の肝となる。もしも、ゴキブリを飼育している恒温器や飼育室の温度管理システムが実験期間中に故障し、実際の飼育温度が乱れようものなら、実験データはそこで水の泡になってしまう。これは憶測だが、不慮の事故などで、パーになってしまったデータも少なくなかったのではないだろうか。


そんなリスクを経て、長期にわたって得た実験データが、本書にはいくつも掲載されている。まさに、著者の研究の結晶たちだ。このようなデータの一つ一つを見ると、なんだか図表に向かって拝みたくなってくるほどである。


決して、これは万人向けの生やさしい本ではない。むしろ、読み手を選ぶ本だ。ひとつ言えるのは、本書が、半世紀以上にわたってひとつの研究対象に向き合ってきた研究者本人の手によって、記されているということだ。世の中に科学書は数あれど、こんな本は、そうそうお目にかかれない。


年代物のブランデーをじっくりと味わうような読書体験をしたい本読みにこそ、本書はおすすめしたい。


【関連書籍】

ゴキブリだもん?美しきゴキブリの世界? (一般書籍)

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※本記事は書評サイトHONZに寄稿したものです


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人工肉と人工肉が変える道徳

みんな大好きなお肉。人工肉開発の現場と、人工肉が未来の道徳や倫理観を変えうると考察したコラムをウェブ・ジャーナル『ハーバー・ビジネス・オンライン』に寄稿しました。

今、この記事を読んでいる時点でも、10億頭のブタ、15億頭のウシ、そして190億羽ものニワトリが、人類の胃袋を満たすために、この地上で待機させられている。


人工培養肉は、環境にフレンドリーなだけではない。家畜を殺さずに済むので、動物フレンドリーでもある。人工肉は、その製造コストが十分に下がれば、マーケットには人工肉が一気に広がるだろう。


人工肉は、人類の宇宙進出にも一役買うはず。地球外惑星への移住には、現地での食料の確保が必要だ。タンパク源として家畜を連れて行くよりも、タンクと培養液で作れる人工肉を摂取するほうが現実的だろう。


人工肉が普及した未来では、「本物の肉を食べるのは野蛮な行為」という倫理観が人類に定着するかもしれない。その一方で、特定の性癖をもつ層から、ヒトの細胞から作られる「人工ヒト肉」への需要が芽生えてくるかもしれない。


技術の革新はいつだって、人の倫理観を劇的に変える。人工肉は人類を救うのと同時に、新たな道徳をも生み出すことだろう。

hbol.jp

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