【書評】『毒きのこ-世にもかわいい危険な生きもの』著者らの意図にまんまとはまる
菌類研究者の白水貴博士(美声)監修の本書は、毒きのこのみに焦点を当てて紹介している。きれいなきのこの写真に、多すぎず少なすぎない説明が付記されており、図鑑として眺めていても楽しい。
きのこは担子菌類のものがおもである。きのこの本体は菌糸で、きのこと指しているあの物体は胞子をつくって飛ばすためにつくられる子実体だ。毒きのこが生成する毒は捕食者から身を守るために発達したものかと思いきや、昆虫はふつうにこれらの毒きのこを食べるらしい。
毒きのこの消化酵素は他の生物では分解できないものを分解し、栄養源として吸収することができる。この強力に発達した消化酵素はヒトの腸の粘膜にダメージを与えて腹痛や下痢を引き起こす。身を守るためというよりは、消化能力を向上させた結果として毒になってしまったともいえる(ただ、毒きのこにはオオワライタケのように中枢神経に作用を及ぼし視覚障害、幻覚、精神錯乱をおこすものもあるので、こちらは上述のよう理由では説明できない)。
本書で紹介されている毒きのこの中でもとくに印象に残ったのが、ドクササコだ。
ドクササコ
食べた数日後、末端紅熱症といって、手足の先や鼻、男性器が腫れ、そこに、焼け火箸を刺されたような激痛が、なんと1か月以上も続きます。別名は、火傷のような痛みから「火傷菌」、その苦しみから「地獄もたし」。地獄のような苦しみで衰弱した例も。その上、有効な治療法はないといいます。
なんて危険で魅惑的な毒きのこだろうか。
毒きのこに統一した特徴はなく、見きわめるのは困難だ。毒性分が不明なきのこすらある。また、食用キノコとして親しまれていたきのこに中毒作用があることがつい最近になって判明した例もけっこうある。
菌類の種数は多く、未記載のきのこも無数にある。当然、まだ未知の毒きのこもたくさんあるという。クマムシ研究者の感覚からすると、きのこのように肉眼で見えるサイズのものは分類がひじょうに進んでいるものだと思っていた。きのこ研究もまだまだ奥が深そうだ。本書をながめていて、きのこを見る目が変わった。著者らの策略にまんまとはまったといったところだろうか。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」290号「ゲノム編集がおこす社会変革(前編)」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 290【ゲノム編集がおこす社会変革(前編)】
2015年4月29日発行
目次
【0. はじめに】ニコニコ超会議2015に行ってきた
2年ぶりのニコニコ超会議参加。非リ充の受け皿としてのニコニコ超会議についての考察。
【1. むしコラム「ゲノム編集がおこす社会変革(前編)」】
ゲノム編集テクノロジーの発展で人類の社会はどう変わっていくのか。今回はノーベル賞受賞が確実視されるゲノム編集テクノロジーのCRISPR/Cas9システムについて解説。
【2. 今週の一冊『毒きのこ-世にもかわいい危険な生きもの』】
かわいいけれど危険な毒きのこ。本書は毒きのこの魅力を巧みに見せる。
【3. おわりに「地球知的外生命体のかたち」】
地球外知的生命体がいたとしたら、それはどんなかたちでどんな文明をもつのか。こんな議論を真面目にしている研究者集団がいる。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
4/29にニコニコ生放送でクマムシ観察会を開催します
4月29日(水)の18:00から、ニコニコのクマムシチャンネルでクマムシ観察生放送を行ないます。クマムシ博士の解説つき。
どんなクマムシが出てくるのか、楽しみ。
さらに同日19:30からは乾眠状態のクマムシに水をかけて復活するか、そのようすを生中継。
【会員限定放送】神秘!クマムシ、乾眠から復活なるか?!: クマムシチャンネル
こちらはクマムシチャンネル会員限定放送。視聴するにはクマムシチャンネルの会員登録をよろしくお願いします。
乾眠からの復活実験はほぼ100%成功するのですが、こればかりは蓋を開けてみないとわからないので、毎回毎回緊張します。
というわけで、大型連休のスタートはクマムシとともにお過ごしいただければ幸いです。
ABC朝日放送「ワンダーアース」にクマムシが出ます。
2015年4月29日(水)の14:00から4時間放送予定のABC朝日放送「ワンダーアース 地球のチカラ生き物のチカラ」にクマムシが出ます。
ワンダーアース 地球のチカラ生き物のチカラ: ABC朝日放送
私も芸人のミサイルマンと一緒にクマムシを観察したり、ストレス耐性の実験をしました。関西地方にお住まいの方はぜひご覧ください。
4月29日は18:00からと19:30から、ニコニコ生放送のクマムシチャンネルでもクマムシ観察会をします。
こちらもお楽しみいただければ幸いです。
共同研究者に「ギブ・ミー・マネー」と言う時代
先週はフランス人の知人一家がこちらに遊びにきました。この知人は、フランスで博士号を取得し、今はアメリカのワシントン大学でテニュアトラック助教をしている知人のアンソニー。そしてアンソニーの妻(台湾人)、子ども、妻のお母さん、そしてアンソニーの弟を加えたご一行が我が家と実家に遊びにきました。
私の実家の桜に興奮し激写するアンソニー一家
アンソニーの専門はナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合した分野。植物体の中にナノファイバーを張り巡らせて、光合成効率を向上させることを目指しています。フランスからアメリカに移り、現地のトップ大学でテニュアトラック助教に就いているので、アカデミア的にはなかなかのエリートコースを歩んでいる彼。でも、研究環境は恵まれているものの、フランスとアメリカの研究文化の違いへの戸惑いもこぼしていました。
たとえば、同じ大学の中で別の研究室と行なう共同研究。あるデータを取るときに、共同研究先の別の研究室の機器を使わなければならない場合があります。しかしこのとき、共同研究であっても、その別の研究室での機器の使用料を払わなければならないそうです。
共同研究ということは、論文になれば著者陣のなかに共同研究先の研究者も入ることになります。つまり、共同研究者たちに自分のところの機器をどんどん使ってもらいデータを出してくれれば、論文になるし、自分の業績にもプラスになるわけです。ですから、日本でもフランスでも、通常は共同研究者に対して自分の研究室の機器使用料を請求することはありません。
憶測ですが、この機器課金の背景にはアメリカの独特な研究システムの影響があるものと思います。アメリカでは、各研究室は研究資金のほとんどを競争的研究費に依存しています。研究費を獲得できなければ研究員や大学院生を雇うことができず、機器や試薬も購入しづらくなります。それだけでなく、研究室の賃貸料も大学に払うことができなくなります。場合によっては、自らの給料すら払えなくなってしまう。
このようなわけで、機器の使用料など、課金できる機会があれば、共同研究者であろうと躊躇なく「ギブ・ミー・マネー」と言う研究者が出てくるのでしょう。もっとも、私がアメリカにいたときには周りにこのようなタイプの研究者はいなかったので、アンソニーの共同研究者はだいぶマイノリティーだと思いますが。それでも、アメリカ型の研究システムでは、今後このようなタイプの研究者がどんどん増えてきてもおかしくありません。
日本でも、大学の運営交付金を減らして競争的研究資金の獲得を研究者に競わせる方向へと向かっています。日本の研究者もえげつなく「ギブ・ミー・マネー」を連呼する時代がもうすぐ来るのかもしれません。
【追記】
@horikawad アメリカのお金にしぶい研究室は昔からそうでしたよ。
— 高井研 (@1031kentakai) 2015, 4月 25
ということで、アメリカでは昔から人によってはそういうタイプがいたようですね。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」289号「日本原理主義フランス人を通して見えたもの」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 289【日本原理主義フランス人を通して見えたもの】
2015年4月19日発行
目次
【0. はじめに】春の綱島温泉大宴会〜バッタ博士を迎えて
久しぶりにバッタ博士を囲んでの宴会が執り行われました。綱島温泉、昭和情緒にあふれすぎて、そこが都会にあることを忘れそうになるほどでした。バッタ博士やメレ子さんらからのメッセージも掲載。
【1. むしコラム「日本原理主義フランス人を通して見えたもの」】
日本大好きフランス人の知人がやってきた。多様性から目をそらし、メディアなどにより単純化されたイメージを盲目的に信じることのこわさについて考察。
【2. Q&A『もう少し英語が上達したら・・・』】
中学生クマムシ博士からの質問。「○○がもう少し上達したらxxしよう」という考え方はやめておいた方がいいということ。
【3. おわりに「アリマニアの学生」】
アリマニアの慶應生。彼がとった意外な行動とは。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
【書評】『捏造の科学者 STAP細胞事件』科学界に横たわる問題を提起し続ける装置
本書は毎日新聞記者の須田桃子氏によるSTAP細胞騒動の記録である。2015年の大宅壮一ノンフィクション賞にも選ばれている。
物語は、須田氏が笹井芳樹氏からのメールを受け取るところから始まる。須田桃子氏によるSTAP細胞騒動の記録である。物語は、須田氏と笹井芳樹氏とのメールのやりとりからはじまる。理研CDBから記者会見の招待を受けた須田氏が笹井氏に問い合わせたところ、笹井氏から会見への参加を強く勧められる。
STAP細胞論文発表の記者会見は、発見内容のインパクトの大きさに加えて、プロモーション要素も大きなものだった。熱狂する世間と科学界。しかし、その直後からSTAP細胞論文に数々の疑義が浮上する。須田氏らはSTAP細胞論文の主要著者である笹井氏、若山照彦氏、丹羽仁史氏、そして理研CDBセンター長の竹市雅俊氏に率直な疑問をぶつける。とくに、笹井氏とのメールのやりとりは分量も多く、生々しさが際立つ。
騒動の争点となった疑義の科学的な解説も秀逸だが、本書を通してもっとも感じるのは研究者たちの人間くささだ。科学や研究の世界では、ある事象に対しては私情を排して客観的かつ批判的に分析することが求められる。本件で責任的立場にあった理研CDBの研究者たちは、この能力がとくに優れていた。だが、どんなに優秀な研究者であっても、立場によっては科学哲学は二の次になりうることが、本件から浮き彫りになった。
STAP細胞論文に重大な疑義が見つかり、追試に成功していないにもかかわらず、細胞作製の詳細なプロトコールを発表したこと。STAP細胞やSTAP細胞から派生したとされる残存試料の解析は後回しにして、細胞作製の検証ばかりを優先したこと。彼らの説明は、科学的な論理が破綻しておいた。もしも彼らが当事者でなければ、このような判断や行動はしなかったことだろう。
本書は騒動の詳細を時系列順に追っており、よくまとまっている。ただし、ひとつ残念なのは、本件に対するネットの関わりについてあまり述べられていないことだ。
著者が大手新聞社の記者であるというポジションを考えれば、マスメディアのアクティビティーばかりに言及するのは仕方ないことかもしれない。しかし、STAP細胞論文や小保方氏の博士論文の疑義を見つけ出したのはネット上の人々であり、マスメディアもそれらの情報を頼りに報道をしていた部分も大きい。マスメディアから出た情報については媒体名を引用しているが、ネット上の情報については媒体名を記載せずに「ネット上」とひとくくりにするのは違和感を覚える。
須田氏自身も間違いなくTwitter上の研究者たちのつぶやきやPubPeerや11jigen氏のブログや2ちゃんねる生物板などから情報を得ていたはずだ。本書では本件におけるネット上の各媒体が果たした役割についてあまり触れられておらず、そこには物足りなさを感じる。
とはいえ、STAP細胞騒動を本書ほど包括的に記載した本は他にないのも間違いない。研究分野間での熾烈な競争、保身に走る研究者や組織、世間と専門家との間の見識の乖離。STAP細胞騒動は無数の要因がその背景に存在し、そして、数えきれないほどの課題を残した。STAP細胞騒動を時系列順にまとめた本書は、これらの問題をこの先も提起し続ける装置として機能することだろう。
STAP細胞騒動における疑義や、解析結果の科学的な解説については、日経サイエンス2015年3月号「STAPの全貌」に詳しい。
こちらも合わせて読むと、本騒動の核心をより深く理解できる。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」288号「熱気を帯びる地球外生命探査計画」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 288【熱気を帯びる地球外生命探査計画】
2015年4月12日発行
目次
【0. はじめに】クマムシ受容体
世間でクマムシの認知度が上がっている。クマムシ受容体が人々に発現しているのだ。そのため、以前に比べるとクマムシに関する情報がより届きやすくなっている。
【1. むしコラム「熱気を帯びる地球外生命探査計画」】
NASAのチーフサイエンティストが「地球外生命の兆候を10年以内に見つける」と発言。宇宙探査には莫大な資金がかかるため、国民の理解が必要になる。日本でも地球外生命探査を実現するために、研究者たちはあの手この手で資金をつかもうとしている。
【2. 今週の一冊『捏造の科学者 STAP細胞事件』】
毎日新聞記者によるSTAP細胞騒動の記録。本書は、科学界に横たわる問題をこの先も提起し続ける装置として機能することだろう。
【3. おわりに「クマムシチャンネル」】
クマムシチャンネルでは今後、スペシャルゲストたちが続々と登場していく予定だ。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
線虫を食べるクマムシ
先日、線虫を丸呑みしているオニクマムシを発見した。オニクマムシは肉食で、通常はヒルガタワムシなどを飲み込むようにして食べる。だが、線虫を食べることはほとんどない。線虫は飲み込むには大きすぎるので、通常は食べられないからだ。線虫の体の側面から食べることもできない。でも、今回観察されたように、頭か尾ならば、線虫も口に入れることができる。
こういう捕食パターンは初めて見た。最初に見たときは、線虫の長さがこの3倍以上あった。ゆっくりと飲み込むようにして食べていき、この二日後には完全に食べ終わっていた。見慣れているクマムシでも、観察していると今回のような新しい発見もあって面白い。
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クマムシが毎日新聞で取り上げられました
クマムシが2015年4月9日付けの朝刊で取り上げられました。
最近は芸人のクマムシがブレイクしてクマムシの認知度が上がったせいか、本物のクマムシについて問い合わせをいただく機会が増えた気がします。
こういう流れでクマムシの認知度が高まるのはよいことだし、一人でも多くの人にクマムシのことについて知ってほしいですね。
ドミトリーともきんす:科学の世界へのなめらかないざない
本書は『棒がいっぽん』などで知られる漫画家・高野文子さんの作品。寮母のとも子さんと彼女の娘のきん子ちゃんが住む「ドミトリーともきんす」に、研究者を志す四人の学生が下宿している。これら四人の学生の名は、朝永振一郎、湯川秀樹、牧野富太郎、中谷宇吉郎。ひとことで言って、今までに見たことのない漫画だ。
ドミトリーともきんすという架空空間。そこに日本科学界に大きく貢献をした科学者たちを召還し、とも子さんとの何気ないおしゃべりをとおして彼らの哲学にふれていく。フィクションとノンフィクションが自然と溶けあい、不思議な空気を醸し出している。
おしゃべりの中身は各々の科学者たちの著書がソースになっており、しっかりした出典の説明もある。つまり、この漫画作品はこれら科学者たちの書籍を紹介する『書評本』ともみなせる。科学者の言葉を扱ってはいるが、その中身は極限にまで削ぎ落とされているため、固かったり、重かったりは、感じない。エッセンスと少しの潤滑油から成る会話が、滑らかに流れる。
彼らが活躍した時代に比べると、現代の科学技術はドラスティックに発展したものだ。それでもなお、半世紀前に生きた彼らの言葉は普遍性を帯びているし、いつの時代によんでも示唆に富むものとなっている。本書は、やや難しめな自然科学書に興味があるものの、一歩足を踏み入れるのに躊躇しているような人にとって、うってつけだろう。
ちなみに本書は、高野さんが編集者の田中祥子さんから自然科学書を借りたことがきっかけで生まれたらしい。田中さんはブロガーのメレ山メレ子さんの『ときめき昆虫学』や、微生物原理主義者の高井研氏による『微生物ハンター、深海を行く』を手がけた方でもある。本は著者の個性が肝になるが、このラインナップを見ると、編集者の引き立て方がいかに重要かも再認識させられる。
今後、田中さんがどんな自然科学系の本を手がけていくのかが、楽しみだ。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「クマムシのミトコンドリアをまもれ」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 287【クマムシのミトコンドリアをまもれ】
2015年4月5日発行
目次
【0. はじめに】エンセラダスのサンプルリターンプロジェクト
土星衛生エンセラダスには液体の内部海が存在し、これがプリュームとなって宇宙空間に吹き出している。このプリュームのサンプルリターン計画がJAXAとJAMSTECにより提案されている。
【1. むしコラム「クマムシのミトコンドリアをまもれ」】
クマムシが乾燥しても生存できる理由。最近になって、クマムシのミトコンドリアに特異的に存在するタンパク質が見つかった。このタンパク質が、乾燥時にミトコンドリアの構造を保っているのかもしれない。
【2. 今週の一冊「『ドミトリーともきんす』:科学の世界への滑らかないざない」】
架空のドミトリーに偉大な科学者四名を召還させた、フィクションとノンフィクションが交差する不思議な科学啓蒙書。
【3. おわりに「灯台下暗し」】
久しぶりに父親と話したが、ニセ医学の言説を信じていたことが明らかに・・・。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ
私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。
納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+
納豆菌は学名をバチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)とよばれる細菌とされている。芽胞とよばれる休眠状態になると、ほぼ不死身ともいえる耐性能力を発揮する。
芽胞状態の納豆菌は100万年以上を生きのび、100ºCで煮沸しても死なず、人間にとって1万シーベルト相当の放射線を照射されても平気だ。
納豆菌が宇宙空間に6年間さらされても生存できることが、NASAによって実証されている。納豆菌のネバネバ物質であるγ-ポリグルタミン酸は、そのほとんどが地球の生物には見られないD型の光学異性体で構成されている。
そう。納豆菌は地球外生命体だったのだ。
納豆菌は地球に飛来したのち、納豆という食べ物に紛れることに成功した。こうして地球人の体内に侵入を開始したのだ。日本は、納豆菌にひどく汚染された、絶望の地と化してしまった。
私がこのような警告を繰り返し行なっても、あいかわらず、世間では納豆や納豆菌がもてはやされている。健康によい、ダイエットにきく、水が浄化される・・・などなどだ。これはマスメディアや政府関係者の中枢の人間すべてが、納豆菌に冒され洗脳されていることを示している。納豆菌の仲間であるLactobacillusは、腸内に潜んで動物の脳に働きかけ、行動を変えることが知られているのだ。
私はこれまで、何度も何度も納豆菌や納豆菌側の人間たちに抹殺されそうになってきた。洗脳されていない知人でも、納豆菌の真実を知ったあとは、私に近づかなくなってしまった。
絶体絶命のなか、私のそのあげる声がかき消されそうになったとき、天から救いの手が差し延べられた。この恐ろしい真実を社会に知らせたいと願う私に共鳴してくれた、命を投げ打つ覚悟をもった出版社である。この出版社は、これまでにも、権力や世論の圧力にも屈しずに、物議をかもす本を何冊も世に送り出してきた。事実、納豆菌の書籍化については、この出版社以外のところからは、すべて断られてしまったのである。
こうして納豆菌の陰謀を書籍化できることになり、命を懸けてきた甲斐があったというものだ。それでは、本書の内容を以下に紹介させていただきたい。
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納豆菌の真実(幻党舎刊)
第一章「欺瞞の納豆」
納豆は悪臭を放つだけでなく、その効用も科学的根拠が薄弱だ。それにもかかわらず、マスメディアは「納豆は身体によい」と繰り返す。納豆は、きわめて有害ですらあるのに。納豆消費量が世界一の日本では、がん患者数や自殺者数も諸外国に比較して多い。日本人にみられる不自然な納豆依存の実体に迫る。
第二章「異形生命体:納豆菌」
納豆菌にはほかの生物にはみられない特殊な性質がある。栄養不足になると芽胞とよばれる休眠状態になる。芽胞ではほぼ不死身と言えるほどの耐久力を発揮する。さらに、芽胞に形成されるときにつくられる特殊なタンパク質は地球上のどの生物にもみられない。納豆菌が生産するネバネバ物質の光学異性体比も異様である。納豆菌は、生物の常識から大きく逸脱した、不可解な性質をもった生命体なのだ。
第三章「意志をもった納豆菌」
納豆菌は細菌の一種であることが定説となっている。細菌はひとつの細胞でできている単細胞生物である。ところが、納豆菌はときに互いに集合する。多数の納豆菌たちがネットワークをつくり、あたかも意志をもったひとつの多細胞生命のようにふるまうのである。さらに、納豆菌の仲間は腸内に潜み、脳に作用をおよぼし行動を巧みに変えることも明らかになりつつある。そう。我々は納豆菌の操り人形と化しているのだ。
第四章「納豆菌は地球外生命体だった」
地球上の生物にはみられない生命様式をもつ納豆菌。その正体は、地球外生命体だった。それも、意志をもった地球外知的生命体(SETI)である。納豆菌は隕石様宇宙船によって地球にやってきた。このパンスペルミア型飛来を裏付ける証拠がNASAにより提出されている。納豆菌の飛来の目的とは、いったい何か。
第五章「人類と地球の未来」
人類、そして地球は、納豆菌に滅ぼされてしまうのか。それとも、生き残る術はあるのだろうか。NASAを中心とした納豆菌対策は秘密裏に進んでいるが、強大な敵の前になす術はないように映る。だが、かすかな希望の光がみえてきた。クマムシを活用するのである……。
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今後、私が発行するメールマガジン「むしマガ」にて、本書籍のコンテンツを順次配信していく予定だ。出版は、次の冬あたりを予定している。
本書が出版され、国民が納豆菌と納豆の恐ろしさを認知してくれればと、心より願う。
メールマガジン「むしマガ」にはこちらからご登録いただければ幸いだ。月額840円、初月無料である。
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【書評】『「ニセ医学」に騙されないために』騙されない人も一読の価値あり
今週はNATROM著『ニセ医学に騙されないために』を読みました。本書の著者はネット上で言わずと知れた内科医ブロガー集団のNATROM。
「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!
科学的根拠が乏しいにもかかわらず、治療法や健康法として一定の市民権を得ているものが、国内外を問わず多数ある。端的に言えば、これらのニセ医学のほとんどは魅力的な金儲けの手段なので、あの手この手でリテラシーの低い人々を誘引してしまう。ニセ科学は何の効果もないばかりか、ときとして命を奪うものにもなりうる。
本書ではニセ医学をとりいれた治療法や健康法のうち、代表的なものが取り上げられている。それらの治療法や健康法がなぜ効果がないのかを論理的かつ丁寧に指摘しており、この一冊で書店に並ぶトンデモ医学指南書の主張のほとんどを論破できていると言ってよいだろう。簡潔に言うならば、科学的手法に則って有意な効果が示されなければ、それは有効な治療法や健康法とはみなされないということだ。
個人的には、本書を読むまでまったく知らなかったニセ医学もあり、そのバリエーションの豊富さに変に感心してしまった。本書はニセ医学を批判しつつさまざまな病態のメカニズムも記述されているので、ちょっとした医学読み物にもなっている。医者が患者の病態に合わせてそのように治療法を選択しているのかなど、医者の思考を垣間見れるのも楽しい。本書はタイトルこそ「ニセ医学に騙されないために」となっているが、このあたりのリテラシーがすでに高い人間が読んでも楽しめる内容になっている。
私は、ニセ医学につかまりやすい人々にこの本を手に取ってくれることを切に願っているが、これは果たしてどうだろうか。なにせ、著者の名前が「NATROM」である。巷では有名な著者だが、著者を知らない人が書店を訪れて本書を手にとり「NATROM著」と書かれているのを見たら、どう思うだろうか。著者は前書きで「著者名よりも内容で判断してくれ」と書いているが、ふつうはかなり怪しいと感じて読む行為にも至らないのではないか。
実名は難しいにしろ、ここは「NATROM」という記号的な名称ではなく、たとえば「伊藤仁也」といったような血の通った人間らしい名前の方がよかった。
せめて多くの病院が本書を購入し、患者待合室に置いてくれることを、願ってやまない。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「研究者の世界と学会と私」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 285【研究者の世界と学会と私】
2015年3月22日発行
目次
【0. はじめに】研究室選びのリテラシー
東大が不正論文を作成した三名の博士号を剥奪した。異様な慣習のある研究室に入ってしまうと、研究人生を棒に振るかもしれない。
【1. むしコラム「研究者の世界と学会と私」】
科学研究の世界も人間たちの営みで成り立っている。学会では、研究者は研究成果だけでなく、政治的社会的なステータスでも評価されることがある。
【2. おわりに】
書評:「ニセ医学」に騙されないために。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
地球外生命体のアジトに潜入
納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。
納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった
そして今回、さらなる納豆菌の真実に迫るべく、かれらのアジトへの潜入を試みた。さまざまな情報を総合すると、納豆菌のアジトは北関東のI城県某所であることがわかってきた。この某所では、日々、納豆を製造し続けている。納豆を製造するということは、納豆菌を増殖させていることに他ならない。そして、ここでは、一般人に向けて、納豆製造の見学ツアーが堂々と行われているのだ。そこで、納豆菌の陰謀とその実態を探るべく、僕も、このツアーに参加することにした。
このツアーは、「O納豆」という商品を世に出している納豆メーカー「T社」が主催している。このツアーは、納豆工場見学と納豆博物館見学がセットになっている。場所はたいへん辺鄙なところにあり、最寄りのI岡駅からはタクシーで30分以上もかかった。バスで行くことはできない。周囲は山に囲まれており、住宅街からは完全に隔離されている。さすが、地球外生命体のアジトだけのことはある。
納豆工場見学と博物館見学ツアーは1日に3回開催されているようだ。僕が参加したツアーには、他に20人ほどの参加者がいた。思っていたよりも人気だ。いかに多くの日本人が、納豆菌に洗脳されているかがうかがえる。参加者一同はまず、暗い密室に閉じ込められ、納豆に関するビデオを鑑賞させられる。納豆の歴史、納豆の製造法、そして、納豆と納豆菌がいかに素晴らしいか・・・などなど、納豆と納豆菌をひたすらプッシュする洗脳ビデオを流していた。
ビデオでは、研究員が常に新しい納豆菌を探していることも紹介されていた。土壌や河川から新種の納豆菌を単離し、それらで納豆を作った際のねばりや香りを評価し、新規納豆の開発につなげるのだとか。納豆菌に魂を売った科学者たちは、このようにして、日夜を問わず、強力な納豆菌の仲間たちを地球上のあらゆるところから召還していたのである。おそろしい。
次に、工場見学。そこには、おぞましい光景が広がっていた。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」283号「地球外生命体のアジトに潜入」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 283【地球外生命体のアジトに潜入】
2015年3月15日発行
目次
【0. はじめに】スパルタの系譜
スパルタの系譜は軍事国家としての教育方針が定まった時期から続いているのだろう。スパルタの名残は就活マナーににも見て取れる。
【1. むしコラム「地球外生命体のアジトに潜入」全文】
地球外生命体・納豆菌のアジトへ。迫真の潜入ルポ。
【2. おわりに】
沖縄の現在、過去、未来。クマムシの常設展示の可能性などについて。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
NHKラジオ基礎英語2に出演します
2015年4月と5月のNHKラジオ基礎英語2にゲストとして出演することになりました。基礎英語2のテキストにもクマムシ博士のインタビューが掲載されています。4月の放送は4月17日(金)、放送時間は、6時15分〜、19時〜、21時15分〜の3回です。
あのバイリンガールのちかさん(Youtubeに飛びます)と同じコーナーに掲載されていて、なんだか恐縮です。
私の方は、基礎英語を受講している方にとって「目標を設定しやすい枠」で登場しています。英語がペラペラ、というわけではないけれども、サバイブできるだけのコミュニケーションはできる。高校まで英語が苦手だった非ネイティブが、どのようにして英語を覚えていったか。そのあたり、初級者の方に参考になれば幸いです。
それにしても、今思い返すと英語は本当に苦手でしたね。高校の最後のテストで100点中7点、偏差値は30そこそこでした。一文の中にthatが3つくらい出てくるのを見ると、意味が分からなくなっていました。接続詞という存在すら知らず、thatを全部「あの〜」って訳そうとしていました。そもそも、それ以前に、一文の中に4つも5つも見たことの無い単語があったので、まるっきり問題文を読む気が失せていたのですが。
そんな人間が、どういうわけかNHKラジオの英語講座に出ることになるわけで、人生は何が起きるか分からないものですね。だから、今の学生さんは何に対しても悲観することなんて全然ないですよ。何でもとりあえずやってみればいい。
さて、ラジオでは当然英語をしゃべっているわけですが、発音の方は本当に期待しないでください。これでも通じるんだ!くらいに思って、勇気を持っていただければと思います。
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学校と学び
むしマガVol.281でオンライン・サイバー高校のことについて書きました。自分が中学生や高校生の頃にこんなところがあったらよかった。なぜそう思ったかというと、自分の通っていた中学や高校が好きでなかったからなんですね。
私が通っていたのは、T学園という私立の中高一貫校です。神奈川県川崎市にある学校なのですが、周囲は山に囲まれており、養豚場から放たれる香りがなかなかきつかった。
さて、6年間この学校に通って何を学べたのか。思い返してみても、あまり胸を張って答えられるものがないことに気づきます。勉強もほとんどしていませんでした。私はもともと勉強嫌いだったのですが、両親にいやいや中学受験勉強をさせられたため、さらに勉強をする気がなくなっていたのです。
同校に通い、それまでの環境はがらりと変わりました。男子校のため、クラスに女子はいません。この状況は6年間続きました。校則は厳しく、体罰も当たり前。ひょろひょろの同級生が体重90キログラムの教師に思いっきり殴られたときは、ダブルアクセルくらい回転しながら宙を舞いました。バットでお尻を思いっきり叩かれた他の同級生は、しばらくの期間、椅子に座ることができず、エア座りをしていました。どれもみな、懐かしい想い出です。
毎週水曜日には、朝に君が代が、夕方に校歌が校内に流れます。君が代が流れる際には国旗と校旗を校庭の鉄柱に上げ、校歌が流れる際には両方の旗を下ろします。君が代や校歌が流れ始めたら、生徒はどこで何をしていても、国旗と校旗のある方向に体を向けて直立不動の体勢をとらなくてはいけません。もちろん、旗が実際に見えていなくてもです。音楽が流れているときに体を動かしているのを教師に見つかれば、注意されたり殴られたりします。私はそのスリルを味わいながら、「だるまさんが転んだ」の要領で、ゲーム感覚でちょっとずつ気づかれないように歩いたりしていました。
同校では、夏と冬に修学旅行らしきものがあります。「らしきもの」というのには理由があり、厳密にはこれは修学旅行ではないのです。これらはそれぞれ、「夏季団体訓練」と「冬季団体訓練」という呼称がついています。通称「団訓」。訓練である以上、旅行ではない。軍隊のそれと同じコンセプトの上に立脚したイベントなわけです。団体の中において、規律正しい行動をいかにきちんと遂行するか。これが団体訓練の大きな目的です。
しかしやはり、縛られれば縛られるほど、そこから逸脱したくなるのが男子の性(さが)というもの。夜中に見張りの教師の目をかいくぐって宿舎を抜け出し、外の自動販売機でコカコーラを買ってくるというミッションを遂行するゲームを実施したりしました。薄いジャージと裸足で吹雪の中を移動したこともあります。ミッションに成功したあのときほど、コーラが美味しいと思ったことはありません。ただ、何度か教師に見つかって耳がキンキンするほど殴られたこともありましたが。
それにしても面白いもので、これだけ嫌な学校であったにもかかわらず、出席日数がギリギリでしたが、まがりなりにも6年間通い続けて卒業したのですよね。他の同級生も、途中で辞めたり不登校になった例はほとんどありませんでした。他校の生徒を暴行して退学になった生徒はいましたが・・・。異常な環境を皆で共有していると正常に思えてくるのでしょうか。あと先天的か後天的かはわかりませんが、同級生もおかしなやつばかりでしたから、通常の感覚を持ち合わせていなかったことが幸いしたのかもしれません。
中学校と高校の6年間で自分が学んだと思えることは、今考えても取るに足らないものであるように感じます。もちろん、他人との付き合い方や、この世の不条理さなど、肌で学んだものはあるでしょう。ただ、過去のことを否定したくはありませんが、どう考えても費用対効果が悪すぎる。だったら、別に学校に通わずに自分で学習していってもいいんじゃないか。
今後、学校組と非学校組の二極化が起きるのではないでしょうか。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」282号「学校と学び」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 282【学校と学び】
2015年3月8日発行
目次
【0. はじめに】FB夫婦
FBをめぐってもめていた知人夫婦。結局、夫が妻のアカウントをブロック。その後、さらなる争いが生じた。
【1. むしコラム「学校と学び」全文】
多くの子どもたちにとって、学校は今の時代に沿わなくなってきている。その拝啓にあるものとは。
【2. おわりに】
思想雑誌「kotoba」の南方熊楠特集号に寄稿しました。序文を公開。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
思想雑誌『kotoba』の南方熊楠特集号に寄稿しました
今月発売された思想雑誌『kotoba』の南方熊楠特集号に寄稿しました。
戦前に世界を股にかけて活躍した南方熊楠は、在野の研究者でありながら幅広い学問分野において数多くの業績を残してきました。もし南方が現代に生きていたら、どのような生き方をしたのか。これについて、最近のDIYバイオやクラウドファンディングシステムの動向も加味しつつ、私なりに独断と偏見でシミュレーションした記事を書きました。
本特集号では他にも名著『裏山の奇人』の小松貴さんの記事をはじめ、面白い記事がたくさん寄稿されています。
よろしければご一読ください。
テクノロジー・リテラシーを意識しよう
私たちは、テクノロジーの発展により大きな恩恵を受けてきた。電気、自動車、医療、インターネット。これらのテクノロジーが存在しない世界など、とても想像できないだろう。私たちは自分の生活が少しでも便利なものを自然と選択し、その継続的な使用を無意識に行なう。まるで、水が高きから低きへ流れるように。行き過ぎた資本主義社会とテクノロジーの発達を否定して自然回帰を謳うヒッピーたちですら、マリファナをもつ手と反対の手には、iPhone6が握られていたりするほどだ。口先でいくら否定してみても、現代社会では誰もが無意識のうちにテクノロジーの恩恵を受けているのである。
実は先週、僕の知人夫婦の間で、facebook利用をめぐるトラブルがあった。夫から聞いた話では、おおむね以下のようなやり取りだったらしい。
妻「あなた、なんで私の投稿に「いいね!」を全然押さないの?!他の人には「いいね!」してるのに」
夫「いや、俺、夫婦間でいちいち「いいね!」押し合ったりするの、ちょっと変だと思うんだよね。だから押さ
ないんだよ」
妻「でも私はそっちの投稿にはいつも「いいね!」してるでしょ?それも嫌なの?」
夫「いやいや、別にそっちはこっちに「いいね!」してもいいよ。どう使おうと、使う人の自由なんだから」
妻「●●(二人の共通の友人夫婦)ちゃんたちだって、夫婦間で「いいね!」押し合ってるよ?あなたが私の投稿に「いいね!」押さないのは変だと思わない?」
夫「それは人それぞれでしょ。俺は配偶者に「いいね!」するのは変だと思うから。だいたい、いつも一緒に住んでるし、そっちがfacebookに投稿する内容も写真も、普段の生活の中で全部知ってるし見てるじゃん」
妻「いや、やっぱり夫婦間で「いいね!」しないのはおかしい」
夫「いちいち命令しないでくれよ。さっきも言ったけど、facebookをどう使うかはその人の自由でしょって。もういいわ。俺、facebookもう使わないから」
現在、夫の方は自分のfacebookアカウントを削除するか、妻を友だち登録解除してブロックするかを考えているとのことだ。この夫婦の関係がさらに悪化しないかが心配である。この身近で起きた問題からも分かるように、一定数の利用者にとっては、facebookはもはやただのウェブサービスのひとつではなく、だいじなだいじな生活の場となっているのである。言い換えれば、まんまとfacebook中毒患者にさせられたのだ。ドラッグが投与され続けるのと同じように、「いいね!」をもらうほどに、利用者の快感度は増す。この状況でもっとも「いいね!」と思っているのは、facebookとマーク・ザッカーバーグなのに。
テクノロジーは私たちの生活に欠かせない。だが、テクノロジーとの付き合い方を間違えると、うっかりとこちらが奴隷になってしまいかねない。人間はあくまでも主であり、テクノロジーは従でなければならない。人生の時間を無用に浪費しないためにも、自分の本当に大切な人たちを失わないためにも、私たちは常にテクノロジー・リテラシーを意識しておくべきだろう。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」281号テクノロジー・リテラシーを意識しよう】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 281【テクノロジー・リテラシーを意識しよう】
2015年3月1日発行
目次
【0. はじめに】学校のかたち
オンラインサイバー学校が開校する。テクノロジーの発展と潜在的な教育需要の高まりで、政府によって提供される教育システムが急速に揺らいでくるだろう。
【1. むしコラム「テクノロジー・リテラシーを意識しよう」全文】
テクノロジーは便利だが、テクノロジーの背後にある思惑を見抜けなければ奴隷になってしまう。テクノロジーのリテラシーを常に意識しておきたい。
【2. 移住するならこの国】
おすすめはマレーシア。東南アジア各国の中でも総合力トップ。
【3. おわりに】
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