ドミトリーともきんす:科学の世界へのなめらかないざない
本書は『棒がいっぽん』などで知られる漫画家・高野文子さんの作品。寮母のとも子さんと彼女の娘のきん子ちゃんが住む「ドミトリーともきんす」に、研究者を志す四人の学生が下宿している。これら四人の学生の名は、朝永振一郎、湯川秀樹、牧野富太郎、中谷宇吉郎。ひとことで言って、今までに見たことのない漫画だ。
ドミトリーともきんすという架空空間。そこに日本科学界に大きく貢献をした科学者たちを召還し、とも子さんとの何気ないおしゃべりをとおして彼らの哲学にふれていく。フィクションとノンフィクションが自然と溶けあい、不思議な空気を醸し出している。
おしゃべりの中身は各々の科学者たちの著書がソースになっており、しっかりした出典の説明もある。つまり、この漫画作品はこれら科学者たちの書籍を紹介する『書評本』ともみなせる。科学者の言葉を扱ってはいるが、その中身は極限にまで削ぎ落とされているため、固かったり、重かったりは、感じない。エッセンスと少しの潤滑油から成る会話が、滑らかに流れる。
彼らが活躍した時代に比べると、現代の科学技術はドラスティックに発展したものだ。それでもなお、半世紀前に生きた彼らの言葉は普遍性を帯びているし、いつの時代によんでも示唆に富むものとなっている。本書は、やや難しめな自然科学書に興味があるものの、一歩足を踏み入れるのに躊躇しているような人にとって、うってつけだろう。
ちなみに本書は、高野さんが編集者の田中祥子さんから自然科学書を借りたことがきっかけで生まれたらしい。田中さんはブロガーのメレ山メレ子さんの『ときめき昆虫学』や、微生物原理主義者の高井研氏による『微生物ハンター、深海を行く』を手がけた方でもある。本は著者の個性が肝になるが、このラインナップを見ると、編集者の引き立て方がいかに重要かも再認識させられる。
今後、田中さんがどんな自然科学系の本を手がけていくのかが、楽しみだ。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「クマムシのミトコンドリアをまもれ」の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 287【クマムシのミトコンドリアをまもれ】
2015年4月5日発行
目次
【0. はじめに】エンセラダスのサンプルリターンプロジェクト
土星衛生エンセラダスには液体の内部海が存在し、これがプリュームとなって宇宙空間に吹き出している。このプリュームのサンプルリターン計画がJAXAとJAMSTECにより提案されている。
【1. むしコラム「クマムシのミトコンドリアをまもれ」】
クマムシが乾燥しても生存できる理由。最近になって、クマムシのミトコンドリアに特異的に存在するタンパク質が見つかった。このタンパク質が、乾燥時にミトコンドリアの構造を保っているのかもしれない。
【2. 今週の一冊「『ドミトリーともきんす』:科学の世界への滑らかないざない」】
架空のドミトリーに偉大な科学者四名を召還させた、フィクションとノンフィクションが交差する不思議な科学啓蒙書。
【3. おわりに「灯台下暗し」】
久しぶりに父親と話したが、ニセ医学の言説を信じていたことが明らかに・・・。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
『納豆菌の真実』書籍化のお知らせ
私はこれまで、恐ろしい納豆菌の陰謀を暴露し続けてきた。
納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった: むしブロ+
納豆菌は学名をバチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)とよばれる細菌とされている。芽胞とよばれる休眠状態になると、ほぼ不死身ともいえる耐性能力を発揮する。
芽胞状態の納豆菌は100万年以上を生きのび、100ºCで煮沸しても死なず、人間にとって1万シーベルト相当の放射線を照射されても平気だ。
納豆菌が宇宙空間に6年間さらされても生存できることが、NASAによって実証されている。納豆菌のネバネバ物質であるγ-ポリグルタミン酸は、そのほとんどが地球の生物には見られないD型の光学異性体で構成されている。
そう。納豆菌は地球外生命体だったのだ。
納豆菌は地球に飛来したのち、納豆という食べ物に紛れることに成功した。こうして地球人の体内に侵入を開始したのだ。日本は、納豆菌にひどく汚染された、絶望の地と化してしまった。
私がこのような警告を繰り返し行なっても、あいかわらず、世間では納豆や納豆菌がもてはやされている。健康によい、ダイエットにきく、水が浄化される・・・などなどだ。これはマスメディアや政府関係者の中枢の人間すべてが、納豆菌に冒され洗脳されていることを示している。納豆菌の仲間であるLactobacillusは、腸内に潜んで動物の脳に働きかけ、行動を変えることが知られているのだ。
私はこれまで、何度も何度も納豆菌や納豆菌側の人間たちに抹殺されそうになってきた。洗脳されていない知人でも、納豆菌の真実を知ったあとは、私に近づかなくなってしまった。
絶体絶命のなか、私のそのあげる声がかき消されそうになったとき、天から救いの手が差し延べられた。この恐ろしい真実を社会に知らせたいと願う私に共鳴してくれた、命を投げ打つ覚悟をもった出版社である。この出版社は、これまでにも、権力や世論の圧力にも屈しずに、物議をかもす本を何冊も世に送り出してきた。事実、納豆菌の書籍化については、この出版社以外のところからは、すべて断られてしまったのである。
こうして納豆菌の陰謀を書籍化できることになり、命を懸けてきた甲斐があったというものだ。それでは、本書の内容を以下に紹介させていただきたい。
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納豆菌の真実(幻党舎刊)
第一章「欺瞞の納豆」
納豆は悪臭を放つだけでなく、その効用も科学的根拠が薄弱だ。それにもかかわらず、マスメディアは「納豆は身体によい」と繰り返す。納豆は、きわめて有害ですらあるのに。納豆消費量が世界一の日本では、がん患者数や自殺者数も諸外国に比較して多い。日本人にみられる不自然な納豆依存の実体に迫る。
第二章「異形生命体:納豆菌」
納豆菌にはほかの生物にはみられない特殊な性質がある。栄養不足になると芽胞とよばれる休眠状態になる。芽胞ではほぼ不死身と言えるほどの耐久力を発揮する。さらに、芽胞に形成されるときにつくられる特殊なタンパク質は地球上のどの生物にもみられない。納豆菌が生産するネバネバ物質の光学異性体比も異様である。納豆菌は、生物の常識から大きく逸脱した、不可解な性質をもった生命体なのだ。
第三章「意志をもった納豆菌」
納豆菌は細菌の一種であることが定説となっている。細菌はひとつの細胞でできている単細胞生物である。ところが、納豆菌はときに互いに集合する。多数の納豆菌たちがネットワークをつくり、あたかも意志をもったひとつの多細胞生命のようにふるまうのである。さらに、納豆菌の仲間は腸内に潜み、脳に作用をおよぼし行動を巧みに変えることも明らかになりつつある。そう。我々は納豆菌の操り人形と化しているのだ。
第四章「納豆菌は地球外生命体だった」
地球上の生物にはみられない生命様式をもつ納豆菌。その正体は、地球外生命体だった。それも、意志をもった地球外知的生命体(SETI)である。納豆菌は隕石様宇宙船によって地球にやってきた。このパンスペルミア型飛来を裏付ける証拠がNASAにより提出されている。納豆菌の飛来の目的とは、いったい何か。
第五章「人類と地球の未来」
人類、そして地球は、納豆菌に滅ぼされてしまうのか。それとも、生き残る術はあるのだろうか。NASAを中心とした納豆菌対策は秘密裏に進んでいるが、強大な敵の前になす術はないように映る。だが、かすかな希望の光がみえてきた。クマムシを活用するのである……。
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今後、私が発行するメールマガジン「むしマガ」にて、本書籍のコンテンツを順次配信していく予定だ。出版は、次の冬あたりを予定している。
本書が出版され、国民が納豆菌と納豆の恐ろしさを認知してくれればと、心より願う。
メールマガジン「むしマガ」にはこちらからご登録いただければ幸いだ。月額840円、初月無料である。
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【書評】『「ニセ医学」に騙されないために』騙されない人も一読の価値あり
今週はNATROM著『ニセ医学に騙されないために』を読みました。本書の著者はネット上で言わずと知れた内科医ブロガー集団のNATROM。
「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!
科学的根拠が乏しいにもかかわらず、治療法や健康法として一定の市民権を得ているものが、国内外を問わず多数ある。端的に言えば、これらのニセ医学のほとんどは魅力的な金儲けの手段なので、あの手この手でリテラシーの低い人々を誘引してしまう。ニセ科学は何の効果もないばかりか、ときとして命を奪うものにもなりうる。
本書ではニセ医学をとりいれた治療法や健康法のうち、代表的なものが取り上げられている。それらの治療法や健康法がなぜ効果がないのかを論理的かつ丁寧に指摘しており、この一冊で書店に並ぶトンデモ医学指南書の主張のほとんどを論破できていると言ってよいだろう。簡潔に言うならば、科学的手法に則って有意な効果が示されなければ、それは有効な治療法や健康法とはみなされないということだ。
個人的には、本書を読むまでまったく知らなかったニセ医学もあり、そのバリエーションの豊富さに変に感心してしまった。本書はニセ医学を批判しつつさまざまな病態のメカニズムも記述されているので、ちょっとした医学読み物にもなっている。医者が患者の病態に合わせてそのように治療法を選択しているのかなど、医者の思考を垣間見れるのも楽しい。本書はタイトルこそ「ニセ医学に騙されないために」となっているが、このあたりのリテラシーがすでに高い人間が読んでも楽しめる内容になっている。
私は、ニセ医学につかまりやすい人々にこの本を手に取ってくれることを切に願っているが、これは果たしてどうだろうか。なにせ、著者の名前が「NATROM」である。巷では有名な著者だが、著者を知らない人が書店を訪れて本書を手にとり「NATROM著」と書かれているのを見たら、どう思うだろうか。著者は前書きで「著者名よりも内容で判断してくれ」と書いているが、ふつうはかなり怪しいと感じて読む行為にも至らないのではないか。
実名は難しいにしろ、ここは「NATROM」という記号的な名称ではなく、たとえば「伊藤仁也」といったような血の通った人間らしい名前の方がよかった。
せめて多くの病院が本書を購入し、患者待合室に置いてくれることを、願ってやまない。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」285号「研究者の世界と学会と私」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 285【研究者の世界と学会と私】
2015年3月22日発行
目次
【0. はじめに】研究室選びのリテラシー
東大が不正論文を作成した三名の博士号を剥奪した。異様な慣習のある研究室に入ってしまうと、研究人生を棒に振るかもしれない。
【1. むしコラム「研究者の世界と学会と私」】
科学研究の世界も人間たちの営みで成り立っている。学会では、研究者は研究成果だけでなく、政治的社会的なステータスでも評価されることがある。
【2. おわりに】
書評:「ニセ医学」に騙されないために。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
地球外生命体のアジトに潜入
納豆菌は、日本を侵略中の地球外生命体である。宇宙から飛来したかれらは、知らず知らずのうちに我々の体内に潜入し、体を乗っ取っている。僕はこれまで、幾度となくこの納豆菌の恐ろしい正体について、告発してきた。
納豆菌の無差別テロ攻撃により人類滅亡までのカウントダウンがはじまった
そして今回、さらなる納豆菌の真実に迫るべく、かれらのアジトへの潜入を試みた。さまざまな情報を総合すると、納豆菌のアジトは北関東のI城県某所であることがわかってきた。この某所では、日々、納豆を製造し続けている。納豆を製造するということは、納豆菌を増殖させていることに他ならない。そして、ここでは、一般人に向けて、納豆製造の見学ツアーが堂々と行われているのだ。そこで、納豆菌の陰謀とその実態を探るべく、僕も、このツアーに参加することにした。
このツアーは、「O納豆」という商品を世に出している納豆メーカー「T社」が主催している。このツアーは、納豆工場見学と納豆博物館見学がセットになっている。場所はたいへん辺鄙なところにあり、最寄りのI岡駅からはタクシーで30分以上もかかった。バスで行くことはできない。周囲は山に囲まれており、住宅街からは完全に隔離されている。さすが、地球外生命体のアジトだけのことはある。
納豆工場見学と博物館見学ツアーは1日に3回開催されているようだ。僕が参加したツアーには、他に20人ほどの参加者がいた。思っていたよりも人気だ。いかに多くの日本人が、納豆菌に洗脳されているかがうかがえる。参加者一同はまず、暗い密室に閉じ込められ、納豆に関するビデオを鑑賞させられる。納豆の歴史、納豆の製造法、そして、納豆と納豆菌がいかに素晴らしいか・・・などなど、納豆と納豆菌をひたすらプッシュする洗脳ビデオを流していた。
ビデオでは、研究員が常に新しい納豆菌を探していることも紹介されていた。土壌や河川から新種の納豆菌を単離し、それらで納豆を作った際のねばりや香りを評価し、新規納豆の開発につなげるのだとか。納豆菌に魂を売った科学者たちは、このようにして、日夜を問わず、強力な納豆菌の仲間たちを地球上のあらゆるところから召還していたのである。おそろしい。
次に、工場見学。そこには、おぞましい光景が広がっていた。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」283号「地球外生命体のアジトに潜入」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 283【地球外生命体のアジトに潜入】
2015年3月15日発行
目次
【0. はじめに】スパルタの系譜
スパルタの系譜は軍事国家としての教育方針が定まった時期から続いているのだろう。スパルタの名残は就活マナーににも見て取れる。
【1. むしコラム「地球外生命体のアジトに潜入」全文】
地球外生命体・納豆菌のアジトへ。迫真の潜入ルポ。
【2. おわりに】
沖縄の現在、過去、未来。クマムシの常設展示の可能性などについて。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
NHKラジオ基礎英語2に出演します
2015年4月と5月のNHKラジオ基礎英語2にゲストとして出演することになりました。基礎英語2のテキストにもクマムシ博士のインタビューが掲載されています。4月の放送は4月17日(金)、放送時間は、6時15分〜、19時〜、21時15分〜の3回です。
あのバイリンガールのちかさん(Youtubeに飛びます)と同じコーナーに掲載されていて、なんだか恐縮です。
私の方は、基礎英語を受講している方にとって「目標を設定しやすい枠」で登場しています。英語がペラペラ、というわけではないけれども、サバイブできるだけのコミュニケーションはできる。高校まで英語が苦手だった非ネイティブが、どのようにして英語を覚えていったか。そのあたり、初級者の方に参考になれば幸いです。
それにしても、今思い返すと英語は本当に苦手でしたね。高校の最後のテストで100点中7点、偏差値は30そこそこでした。一文の中にthatが3つくらい出てくるのを見ると、意味が分からなくなっていました。接続詞という存在すら知らず、thatを全部「あの〜」って訳そうとしていました。そもそも、それ以前に、一文の中に4つも5つも見たことの無い単語があったので、まるっきり問題文を読む気が失せていたのですが。
そんな人間が、どういうわけかNHKラジオの英語講座に出ることになるわけで、人生は何が起きるか分からないものですね。だから、今の学生さんは何に対しても悲観することなんて全然ないですよ。何でもとりあえずやってみればいい。
さて、ラジオでは当然英語をしゃべっているわけですが、発音の方は本当に期待しないでください。これでも通じるんだ!くらいに思って、勇気を持っていただければと思います。
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学校と学び
むしマガVol.281でオンライン・サイバー高校のことについて書きました。自分が中学生や高校生の頃にこんなところがあったらよかった。なぜそう思ったかというと、自分の通っていた中学や高校が好きでなかったからなんですね。
私が通っていたのは、T学園という私立の中高一貫校です。神奈川県川崎市にある学校なのですが、周囲は山に囲まれており、養豚場から放たれる香りがなかなかきつかった。
さて、6年間この学校に通って何を学べたのか。思い返してみても、あまり胸を張って答えられるものがないことに気づきます。勉強もほとんどしていませんでした。私はもともと勉強嫌いだったのですが、両親にいやいや中学受験勉強をさせられたため、さらに勉強をする気がなくなっていたのです。
同校に通い、それまでの環境はがらりと変わりました。男子校のため、クラスに女子はいません。この状況は6年間続きました。校則は厳しく、体罰も当たり前。ひょろひょろの同級生が体重90キログラムの教師に思いっきり殴られたときは、ダブルアクセルくらい回転しながら宙を舞いました。バットでお尻を思いっきり叩かれた他の同級生は、しばらくの期間、椅子に座ることができず、エア座りをしていました。どれもみな、懐かしい想い出です。
毎週水曜日には、朝に君が代が、夕方に校歌が校内に流れます。君が代が流れる際には国旗と校旗を校庭の鉄柱に上げ、校歌が流れる際には両方の旗を下ろします。君が代や校歌が流れ始めたら、生徒はどこで何をしていても、国旗と校旗のある方向に体を向けて直立不動の体勢をとらなくてはいけません。もちろん、旗が実際に見えていなくてもです。音楽が流れているときに体を動かしているのを教師に見つかれば、注意されたり殴られたりします。私はそのスリルを味わいながら、「だるまさんが転んだ」の要領で、ゲーム感覚でちょっとずつ気づかれないように歩いたりしていました。
同校では、夏と冬に修学旅行らしきものがあります。「らしきもの」というのには理由があり、厳密にはこれは修学旅行ではないのです。これらはそれぞれ、「夏季団体訓練」と「冬季団体訓練」という呼称がついています。通称「団訓」。訓練である以上、旅行ではない。軍隊のそれと同じコンセプトの上に立脚したイベントなわけです。団体の中において、規律正しい行動をいかにきちんと遂行するか。これが団体訓練の大きな目的です。
しかしやはり、縛られれば縛られるほど、そこから逸脱したくなるのが男子の性(さが)というもの。夜中に見張りの教師の目をかいくぐって宿舎を抜け出し、外の自動販売機でコカコーラを買ってくるというミッションを遂行するゲームを実施したりしました。薄いジャージと裸足で吹雪の中を移動したこともあります。ミッションに成功したあのときほど、コーラが美味しいと思ったことはありません。ただ、何度か教師に見つかって耳がキンキンするほど殴られたこともありましたが。
それにしても面白いもので、これだけ嫌な学校であったにもかかわらず、出席日数がギリギリでしたが、まがりなりにも6年間通い続けて卒業したのですよね。他の同級生も、途中で辞めたり不登校になった例はほとんどありませんでした。他校の生徒を暴行して退学になった生徒はいましたが・・・。異常な環境を皆で共有していると正常に思えてくるのでしょうか。あと先天的か後天的かはわかりませんが、同級生もおかしなやつばかりでしたから、通常の感覚を持ち合わせていなかったことが幸いしたのかもしれません。
中学校と高校の6年間で自分が学んだと思えることは、今考えても取るに足らないものであるように感じます。もちろん、他人との付き合い方や、この世の不条理さなど、肌で学んだものはあるでしょう。ただ、過去のことを否定したくはありませんが、どう考えても費用対効果が悪すぎる。だったら、別に学校に通わずに自分で学習していってもいいんじゃないか。
今後、学校組と非学校組の二極化が起きるのではないでしょうか。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」282号「学校と学び」】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 282【学校と学び】
2015年3月8日発行
目次
【0. はじめに】FB夫婦
FBをめぐってもめていた知人夫婦。結局、夫が妻のアカウントをブロック。その後、さらなる争いが生じた。
【1. むしコラム「学校と学び」全文】
多くの子どもたちにとって、学校は今の時代に沿わなくなってきている。その拝啓にあるものとは。
【2. おわりに】
思想雑誌「kotoba」の南方熊楠特集号に寄稿しました。序文を公開。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
思想雑誌『kotoba』の南方熊楠特集号に寄稿しました
今月発売された思想雑誌『kotoba』の南方熊楠特集号に寄稿しました。
戦前に世界を股にかけて活躍した南方熊楠は、在野の研究者でありながら幅広い学問分野において数多くの業績を残してきました。もし南方が現代に生きていたら、どのような生き方をしたのか。これについて、最近のDIYバイオやクラウドファンディングシステムの動向も加味しつつ、私なりに独断と偏見でシミュレーションした記事を書きました。
本特集号では他にも名著『裏山の奇人』の小松貴さんの記事をはじめ、面白い記事がたくさん寄稿されています。
よろしければご一読ください。
テクノロジー・リテラシーを意識しよう
私たちは、テクノロジーの発展により大きな恩恵を受けてきた。電気、自動車、医療、インターネット。これらのテクノロジーが存在しない世界など、とても想像できないだろう。私たちは自分の生活が少しでも便利なものを自然と選択し、その継続的な使用を無意識に行なう。まるで、水が高きから低きへ流れるように。行き過ぎた資本主義社会とテクノロジーの発達を否定して自然回帰を謳うヒッピーたちですら、マリファナをもつ手と反対の手には、iPhone6が握られていたりするほどだ。口先でいくら否定してみても、現代社会では誰もが無意識のうちにテクノロジーの恩恵を受けているのである。
実は先週、僕の知人夫婦の間で、facebook利用をめぐるトラブルがあった。夫から聞いた話では、おおむね以下のようなやり取りだったらしい。
妻「あなた、なんで私の投稿に「いいね!」を全然押さないの?!他の人には「いいね!」してるのに」
夫「いや、俺、夫婦間でいちいち「いいね!」押し合ったりするの、ちょっと変だと思うんだよね。だから押さ
ないんだよ」
妻「でも私はそっちの投稿にはいつも「いいね!」してるでしょ?それも嫌なの?」
夫「いやいや、別にそっちはこっちに「いいね!」してもいいよ。どう使おうと、使う人の自由なんだから」
妻「●●(二人の共通の友人夫婦)ちゃんたちだって、夫婦間で「いいね!」押し合ってるよ?あなたが私の投稿に「いいね!」押さないのは変だと思わない?」
夫「それは人それぞれでしょ。俺は配偶者に「いいね!」するのは変だと思うから。だいたい、いつも一緒に住んでるし、そっちがfacebookに投稿する内容も写真も、普段の生活の中で全部知ってるし見てるじゃん」
妻「いや、やっぱり夫婦間で「いいね!」しないのはおかしい」
夫「いちいち命令しないでくれよ。さっきも言ったけど、facebookをどう使うかはその人の自由でしょって。もういいわ。俺、facebookもう使わないから」
現在、夫の方は自分のfacebookアカウントを削除するか、妻を友だち登録解除してブロックするかを考えているとのことだ。この夫婦の関係がさらに悪化しないかが心配である。この身近で起きた問題からも分かるように、一定数の利用者にとっては、facebookはもはやただのウェブサービスのひとつではなく、だいじなだいじな生活の場となっているのである。言い換えれば、まんまとfacebook中毒患者にさせられたのだ。ドラッグが投与され続けるのと同じように、「いいね!」をもらうほどに、利用者の快感度は増す。この状況でもっとも「いいね!」と思っているのは、facebookとマーク・ザッカーバーグなのに。
テクノロジーは私たちの生活に欠かせない。だが、テクノロジーとの付き合い方を間違えると、うっかりとこちらが奴隷になってしまいかねない。人間はあくまでも主であり、テクノロジーは従でなければならない。人生の時間を無用に浪費しないためにも、自分の本当に大切な人たちを失わないためにも、私たちは常にテクノロジー・リテラシーを意識しておくべきだろう。
※本記事は有料メルマガ「むしマガ」281号テクノロジー・リテラシーを意識しよう】の一部です。
クマムシ博士のむしマガVol. 281【テクノロジー・リテラシーを意識しよう】
2015年3月1日発行
目次
【0. はじめに】学校のかたち
オンラインサイバー学校が開校する。テクノロジーの発展と潜在的な教育需要の高まりで、政府によって提供される教育システムが急速に揺らいでくるだろう。
【1. むしコラム「テクノロジー・リテラシーを意識しよう」全文】
テクノロジーは便利だが、テクノロジーの背後にある思惑を見抜けなければ奴隷になってしまう。テクノロジーのリテラシーを常に意識しておきたい。
【2. 移住するならこの国】
おすすめはマレーシア。東南アジア各国の中でも総合力トップ。
【3. おわりに】
LINE@はじめました。メルマガ読者限定でお友達になります。
【料金(税込)】 1ヵ月840円(初回購読時、1ヶ月間無料) 【 発行周期 】 毎週
クマムシの餌の恩人との対面
日経ヘルス2015年3月号にインタビュー記事が出ています。タイトルは「クマムシ研究を支えるクロレラ」。
この記事はヨコヅナクマムシが食べる生クロレラV12をつくっているクロレラ工業株式会社の広告記事。私が飼育系を確立したヨコヅナクマムシは、この生クロレラV12を与えないとうまく飼育できません。私が色んなところで「ヨコヅナクマムシは生クロレラV12しか食べない」と発言しているのをクロレラ工業の方に見ていただき、このような記事にしていただいたという流れです。
私自身、生クロレラV12に出会わなければクマムシの研究を継続することができなかったわけで、いわば、クロレラ工業は私の恩人。このクロレラ商品には単なるクマムシの餌を超えた愛着があります。実際に、これをモデルにぬいぐるみも作っていますし。
今回、クロレラ工業の方々とはじめてお会いしていろいろとお話ししたのですが、研究もビジネスも取り組み方がストイックにされているのが伝わってきました。これから、クマムシとクロレラでいろいろとコラボができればと思っています。
クマムシ24時間生中継を大晦日に実行します。
クマムシ博士が飼育している生きたクマムシ(ヨコヅナクマムシ)を24時間にわたって生中継するという、人類史上初となる試みを大晦日から元旦にかけて実行します。下のリンク先にあるニコニコのクマムシチャンネルからご覧ください。中継開始は2014年12月31日正午12:00からです。
【24時間】地上最強生物クマムシ生中継!『年越し・ウィズ・クマムシ』スペシャル: クマムシチャンネル
ニコニコ動画のアカウントお持ちでない方はアカウント作成をしてをログインをすると見ることができます。
皆様におかれましては、ぜひクマムシたちが歩き回ったりごはんのクロレラを食べたりする様子をながめながら、リラックスモードで年越しをしていただければ幸いです。運がよければ、クマムシの産卵シーンもに遭遇し、生命の神秘を感じることもできるかもしれません。
ということで、クマムシとともに希望に満ちた2015年を一緒に迎えましょう。どうぞよろしくお願いいたします。
ナショジオ『クマムシ観察絵日記』一話〜二十話
ナショジオで私が連載している『クマムシ観察絵日記』が二十話まで掲載されました。
クマムシ観察絵日記: ナショナルジオグラフィック日本版公式サイト
本連載はタイトル通りの内容なのですが、クマムシ研究者ならではの視点でとらえた細かい現象も多く紹介しています。若干マニアック過ぎる内容に加えて、自分の描いた絵を商業サイトに掲載できるのかどうかという不安が、当初はありました。が、twitterやfacebookでの読者の方のコメントを見るかぎり思いのほか好評で嬉しいです。イラストの色付けなどをしていただいているアシスタントの咲さん、そしてナショジオ担当編集の齋藤海仁さんにはこの場を借りて御礼申し上げます。
本連載は今後も隔週で連載は継続しますが、ここで二十話までをリストアップします。
つるつるした表面は苦手。
磨け、コケリテラシー。
地衣リテラシーも大事。
ミクロの世界からこんにちは。
一家に一台あれば安心。
初体験は特別な想い出。
相対的に可愛くないツワモノたち。
よく色白って言われます。
がさつなspecies。
一番人気のクマムシタイプ。
貴乃花をイメージして名付けました。
食べ物の見える化。
フィギュア化したい。
クマムシ研究者の必須技術ですね。
鈍感力を鍛える。
色々とつらくなる作業。
口と爪が名刺代わり。
クマムシパラダイス。
このキスはされたくない。
クマムシ博士が履歴書の特技欄に書くこと。
ということで、年末の暇つぶしにご覧いただければ幸いです。それから12月21日(日)までクマムシさんのレアグッズがあたるクリスマスキャンペーンも実施中なので、こちらもよろしければどうぞ。
激レア・アイテム大放出。12/19(金)〜12/21(日)は『メリークマムシ・ザ・キャンペーン』
激レア・アイテムが当たるクリスマス特別キャンペーン実施中だよ。
"激レア・アイテム大放出。12/19〜12/21は『メリークマムシ・ザ・キャンペーン』 - クマムシさん日記" http://t.co/qMUuxxjCpK … … pic.twitter.com/9Z15BrXcJ3
— クマムシさん【クリスマスキャンペーン中】 (@kumamushisan) 2014, 12月 19
それから、浅草橋で開催中の博物ふぇすてぃばるクリスマス企画にもクマムシさんが出展しています。
【博物クリスマス・会場風景その10】クマムシさん。
生き物界隈で知名度をメキメキと上昇中のクマムシさんが
博物クリスマスに登場です!
その愛らしさとさわり心地ちを体感してみて下さい! pic.twitter.com/hsVXUBYhHk
— 博物ふぇすてぃばる!公式@博物Xmas (@hakubutufes) 2014, 12月 19
こちらは12月23日(水)までです。こちらもよろしくどうぞ。
昆虫大学に出展します。
オープンアクセスサミット2014に登壇します
今週の10月20日から10月26日、オープンアクセスウィークが世界規模で開催されます。
日本でも関連イベントがあり、明日10月21日に行われる下記の「オープンアクセス・サミット2014」に私も登壇します。
オープンアクセス・サミット2014「オープン世代のScience」
研究の世界でいわれる「オープンアクセス」という用語はジャーナルのオープンアクセス化のみに使われることが多いですが、知の無料公開という観点でいえば、こういうブログとかSNSで知的な情報発信をすることにも当てはまります。明日はこのあたりも含めてお話しする予定です。
クマムシ博士は慶應大学に加入しました
本日より慶應大学で研究活動をすることになりました。こちらでも登場した荒川和晴さんのところで、一緒にクマムシの研究をさせていただきます。このような素晴らしい環境で研究できることになり、たいへん嬉しく思います。
こちらでは上席研究員という何となく偉そうな肩書きになりますが、慶應大学との雇用関係はないので無給です。
これからは、ここ慶應大学から世界最先端のクマムシ研究成果を発信していく所存でございます。今後とも、クマムシ博士をどうぞよろしくお願い致します。
9月22日(月)のNHKラジオ第1「すっぴん!」に出演します
表題の通り、9月22日(月)のNHKラジオ第1「すっぴん!」に出演します。出演時間は午前10:05から10:55の予定。
番組の名の通り、出演者はすべてメイクなしの面々。
当日の番組内では俳優の松田悟志さんとクマムシについて語ります。渋谷でのクマムシ捕獲ロケの模様もあわせて放送。
お勤めの方はリスニングの難しい時間帯ですが、どうかこっそり聞いていただけますと幸いです。